(東京都/千代田区)
神保町の駅近にある「揚子江菜館」は、1906年(明治39年)開業の老舗中華料理店。オープン当初から素材の味を活かした手作りにこだわり、池波正太郎氏をはじめ、文豪や有名人など多くの方達から長年愛され続けています。 1933年(昭和8年)から提供している五色涼拌麺は「元祖冷やし中華」としても有名。その素材へのこだわりと、プロの技を紹介します。
クローズアップメニュー
五色涼拌麺(ごしょくりゃんばんめん・冷やし中華) 1,580円(税込)
開発当初の昭和初期に店から見えていた富士山の四季を表現しています。全国に冷やし中華が広まってから「元祖冷やし中華」と呼ばれるようになりましたが、中国ではもともと冷たい麺を食べる習慣はないので常温で提供しています。ポイントは、さっぱりと食べられるように計算された麺とタレ。当初から変わらないレシピで提供している人気ナンバーワンメニューです。
技のポイント1
10種の具で贅沢に富士山の四季を表現
日本では色々入っているものを「五目」と呼びますが、中国にはパーフェクトという意味の「十全十美」という言葉があります。色合いや栄養のバランスの良いものを目指して、富裕層のお客様も満足できるように、10種の食材を使用して富士山の四季を表現することにしました。うま味調味料や冷凍食材は使わず、生のエビをゆでて殻をむくなど、全て店内で下ごしらえをしています。
技のポイント2
水分をしっかり切ると味が入りやすくなる
使用しているのはストレートのたまご細麺。沸騰したお湯でゆでること2分弱。芯がなくなるタイミングを見計らって流水にさらし、麺同士をゴシゴシと擦り合わせて表面のぬめりを取ります。ザルの上でギュッギュッと力を入れて絞り、しっかり水気を切るのがポイントです。 喉越しが良いストレート麺は、中国では高級店ほど使用します。ちぢれ麺と違ってタレと絡みにくいため、ぬめりを取って水分をしっかり切ることで、味が入りやすくなります。弱い麺だと切れたり潰れたりしてしまうので、製麺所にオーダーしたオリジナル麺を使用。
技のポイント3
最後までさっぱりと食べられるタレが決め手
お皿に麺を山盛りにして、うずらの卵と肉団子を中央に乗せ、周囲にキュウリ、チャーシュー、タケノコ、糸寒天を並べます。さらに絹さや、ゆでエビ、椎茸を乗せてタレを掛け、山頂部分に錦糸卵を乗せて完成です。 一番苦労したのはタレ。配分を変えて200回以上試作し、やっと完成したそうです。口に入れた瞬間は甘く感じるものの、食べ進めると、さっぱりとして最後まで食べられます。
オススメメニュー1
上海炒麺(上海式肉焼きそば) 1,380円(税込)
池波正太郎氏のお気に入りの一皿。五色涼拌麺と同じストレート細麺を使用し、白菜、玉ねぎ、もやし、肉の細切り、キクラゲを入れ、塩と醤油でシンプルに仕上げています。 麺はゆでた後にぬめりを取って水気を切ってから、最低でも2時間以上寝かします。その後下味をつけて焼き、注文が入ったらもう一度焼く二度焼きをしています。シンプルなメニューだけに、二度焼きの手間と厳選した素材が欠かせません。このこだわりが多くの人に愛される理由です。
オススメメニュー2
古老肉(すぶた) 2,500円(税込)
「すぶた」は本来切り落としや余って熟成が進んだ肉に、濃い味を付けて出したのが始まりのため「古老肉」と書きます。しかし、「揚子江菜館」では良質の肉を使って、より柔らかい食感になるように切り方を工夫。キュウリ、さつまいも、長ネギ、筍も大きめにカットして、素材の良さを活かしています。さつまいもを入れるのは、他店にないオリジナル。常連のお客様からは、「さつまいもを多めに入れてください」とリクエストがあるそうです。ありそうでないものを作る「揚子江菜館」ならではの一皿です。
オススメメニュー3
カニ玉 2,980円(税込)
明治30年代から変わらず出しているレシピ。卵の中に少量の筍と椎茸を入れて、薄く下味を付けています。カニ玉は炒めすぎても、炒めが足りなくてもダメ。熟練の職人の技で、絶妙な柔らかさに仕上げます。甘酢ダレの固さや掛け方にもこだわった伝統の味です。
お店紹介
出版社などが多い神保町界隈では「『この店で後輩にご馳走できたら一人前』と言われているそうです」と語る四代目オーナーの沈松偉さん。
看板メニューの五色涼拌麺(冷やし中華)は、昭和初期に二代目が「日本人はざるそばが好きなので、冷たい麺を出せば好まれるのでは」と思い付き、2年の歳月をかけて作り上げました。もともと中国では冷たい麺の料理はないので、まかないなどで食べていたものをアレンジして考えたそう。
ざるに麺を盛って出すのでは味気ないので、麺を山盛りにして、店舗の3階から当時見えていた富士山の四季を表現することに。糸寒天で雪を表現し、夏らしい緑色を使いたくてキュウリを入れました。春の大地を表現するチャーシュー、筍を煮込んで秋の落ち葉に見立て、上に乗っている錦糸卵は、富士山にかかる雲を表現しています。うずらの卵と肉団子は、雲の下に隠して、食べ進めていくとお宝が出てくるという喜びを演出。どのように食べても良いそうですが、キュウリから食べると口の中が潤うのでお勧めとのこと。麺が見えたらほぐし、タレと混ぜて食べてください。
「揚子江菜館」のメニューは、昔ながらのシンプルな「華はないけど味がある」中華。派手さはありませんが一度食べたら忘れられない味です。ありそうでなかった新しいメニューを作ることも多く、サンラータンに麺を入れてサンラータン麺にしたり、辛いスープに麺を入れて麻辣麺にしたりしたのも、「揚子江菜館」が最初だそうです。 店内の装飾は華美にせず、食材に費用と手間をかけて、できるだけ身体に良いものを提供するようにしています。60年以上通っているというお客様からは、「ここで食べると他の店で食べられない」と言われることも。1~3階は通常の席で、4、5階は4名~36名までの宴会席になっています。冷やし中華だけでなくコース料理でも楽しみたい名店です。
基本情報
店名 | 揚子江菜館 |
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所在地 | 東京都千代田区神田神保町1-11-3 |
電話番号 | 03-3291-0218 |
営業時間 | 11:30~22:00(L.O.21:30) |
定休日 | 年末年始 |
席数 | 170席 |
主な客層 | 企業オーナー、40歳以上のビジネスマン、ビジネスウーマン 土日はファミリー層 |
予算の目安 | ランチ:1,000~1,999円 ディナー:3,000円~ |
創業 | 1906年(明治39年) |
HP | http://www.yosuko.com/index.html |
https://www.instagram.com/yosukosaikan/ |
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