【パン】~ブーランジェリー セイジアサクラ~

(東京都/港区)

お店の前を学校帰りの小学生が駆け抜け、ベビーカーを押したお母さんやお年寄りが明日の朝食用のパンを買いにドアをくぐる。どこの街にもあるような、地元で愛されるパン屋さんの風景。しかし、ここ「ブーランジェリーセイジアサクラ」が特別なのは、今一番東京で美味しいと話題の「焼きカレーパン」を生み出した人気店ということ。カレーパンだけでなく、食事パンのクオリティでも高い評価を得る、この店のパン作りの秘訣を、オーナーシェフの朝倉誠二さんにうかがった。

クローズアップ ~パン作り~
高校時代からパン作りにかかわってきたという朝倉シェフ。21 歳でシェフになったが、パン作りをもっと深く学びたいと、2001 年単身渡仏。ベルナール・ガナショーとエリック・カイザーという、フランスパンの世界的名職人とともに働く機会を得た。「パンの生地を作る過程で水分を含ませますが、ただの水ではなく、うま味のある水分を加えれば、生地自体に風味がつく。その水分を生むための手法が、ガナショーの店はポーリッシュ製法(小麦粉に少量のイーストを入れ、アルコール発酵させる方法)で、カイザーは天然酵母を使う乳酸発酵。うちでは、その両者を融合した製法を取り入れています」。
現在のお店を開店してからしばらくして、ある展示会で偶然出会った、MCフードスペシャリティーズ(以下MCFS)の乳酸発酵液「サワード」の存在も大きい。「試作を重ねるうちに、これは使えると。端的に言うと、タネの認識が変わりました。同じバゲットやカンパーニュでも、いろんなタネの掛け合せによって粉の甘みや特長を引き出し、オリジナリティや商品の付加価値作りにもつながる。もともと自然にやっていたことではあるんですが、MCFS と一緒にやるうちに、そのことをはっきり意識するようになりました」。 今では朝倉シェフのパン作りにとって、ぶどうやゆず、ホップの天然酵母と並んで、サワードも欠かせない材料となっている。
おすすめメニュー
チーズカレー 329 円(税込)
雑誌のカレーパン特集で「東京で一番おいしいカレーパン」に選出され、テレビでも紹介されるなど、油で揚げない"焼きカレーパン"を一躍世に知らしめた。「カレーパンは、日本の惣菜パン文化のシンボル的存在。でも自分が作るなら、油で揚げたものではないと、最初から決めていました」。それだけにハードルも高く、フィリングやチーズを変えたりとさまざまな試行錯誤を重ね、商品化できたのは開店から1年ほども経ってから。カレーパンとしては高めの値段設定だが、スパイシーなカレールーに、数種類の野菜がゴロゴロ入って、食べごたえは十分。今や毎日300~400 個も売れる人気ナンバーワン商品だ。

技のポイント ~ゴロゴロ野菜をたっぷりと~

  • カレーフィリングを独自にアレンジして、たっぷりと大きなダイス状にカットした野菜を加える。スパイシーなカレールーと、生地の表面を覆うチーズの香ばしさがベストマッチする。
  • 揚げたカレーパンと違い、カレーがパン生地との間に空洞なくみっちりと具材が詰まっており、冷めてもおいしく食べられるのが特長だ。

人気のパン

  • パン・ド・カンパーニュ 1/4 486円(税込) しっかりとした塩気と、ほんのりライ麦の酸味が感じられるカンパーニュは、密度の高い生地で食べごたえ十分。
  • バゲット 324円(税込) 噛みしめると、香ばしさとともに小麦の甘さとうま味が広がる。また、「バゲットは、焼き立てをバターだけで食べるのが一番おいしい。シンプルだからこそ、生地作りの基本が問われます。そのお店の"実力"がわかるパンとして、注目してほしい」と朝倉シェフ。
  • クロワッサン 214円(税込) ふんわりとした軽い食感だが、濃厚なバターの風味が圧倒的。フランス流に、発酵バターを贅沢に使って焼き上げている。「おいしいものを作るには、おいしい材料を使うこと。だから発酵バターを使っているということです」(朝倉シェフ)。オーブントースターで軽く温めると、いっそうおいしくいただける。
  • フォカッチャ 387円(税込) これも代表的な食事パン。プロヴァンス地方のオリーブオイルの名産地、ヴァレ・デ・ボー(デ・ボーの谷)のオリーブオイルを使用。小麦粉の甘さが感じられる、もちもちとした生地の中から、オリーブオイル独特の爽やかな香気が立ち上り、ついもう一切れと手を伸ばしたくなる。
  • ベイクドチーズケーキ 308円(税込) MCFS 子会社のオーランドフーズのチーズケーキ用フィリングとの出会いから生まれた商品。「ケーキ用のチーズペーストは、でんぷんボディのものが多いのですが、これは小麦ベース。その発想がおもしろくて使ってみたところ、おいしいし、使い勝手がいい。商品デビューは昨年夏ですが、今ではすっかり定番です」(朝倉シェフ)
  • お店紹介
    オーナーシェフ 朝倉誠二さん
    フランスでの修業中、「言葉もできないから黙々とパンを焼く中で、自分は一生を賭けて何ができるんだろうと考えるうち、やっぱり自分にはパンしかない。パンに一切身を捧げ、パン職人として腹をくくっていこうと決めました」という朝倉シェフ。といっても、本場フランスの伝統をかたくなに守るのではなく、目指すはあくまでも「日本のパン文化のレベルアップ」。バゲットやカンパーニュは大切だが、日本独自のあんパンやクリームパンも同じくらい大事。「日本で、日本人が食べるパンだから、当然のこと」。もちろん、食事に合わせて、食卓にバゲットやフォカッチャがふつうに並ぶようになれば、もっとうれしいけれど。「パンというのは生活、生きることに近いもの。パン作りは大変な仕事ですが、やりがいだけはたっぷりあります」と笑う。
    さらに、現在のパン作りの技術があるのは、多くの名もなき職人が積み重ねてきた歴史があればこそ。職人の世界では、言語化できない経験や勘が頼りと思われがちだが、より的確に次世代に伝承することも大切。そこで「自分はパイプ役」として、わかりやすく数値化・見える化する研究開発にも取り組んでいる。それは帰国後から開店までの間の一時期、大手メーカーで商品開発や研究に取り組んだ経験も大きい。「フランスにいたころから、パン屋が抱える長時間労働や生産効率の低さといった問題を、どうすれば解決できるか考えていましたが、ライ
    ン設計まで考えなくてはいけない工場でのパン作りを知り、パンといってもいろんな業態があり、まだまだ知らないことがあると気づかされました」。
    こうしたさまざまな知見をベースに、自分の中で思い描いたスキームを現実化したのが、現在のお店。現在も、MCFS と組んで、さまざまな商材の開発に取り組んでいる朝倉シェフ。「お店を広げるのが目標だったら、『知識は自分だけ』でもいいかもしれません。でも自分のアイデアから生まれた商材が、大手メーカーの商品として世に出る喜びは、何ものにも代えがたいし、面白い。それが自分の店のパン作りにフィードバックされることもあるし、自分自身も成長できますから」。
    日本でも、昨今はおいしいパンを求め、わざわざ遠くの評判店を訪れる人も珍しくなくなった。「この変革期に、パイプ役である自分にも、何か後世に残せることができれば」。朝倉シェフの取り組みはまだまだ続く。
  • 基本情報

    店名 ブーランジェリー セイジアサクラ
    住所 東京都港区高輪2-6-20 朝日高輪マンション104 号
    電話 03-3446-4619
    営業時間

    9:00~ 売切れ次第終了

    (早い時は16 時頃終わることも)

    定休日 木曜日
    パンの種類

    常時45~50 種(食事パン4:調理パン6くらいの割合)

    開業 2008 年9月1日

    ※チーズカレーは毎日300~400 個も売れる人気商品。
     
    ※焼き立てが欲しいときは電話を。焼き上がり時間を教えてくれる。
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。