【中華料理】の弥七

(東京都/新宿区)

昭和30年代を思わせる温かくレトロな街並み、花街だった頃の面影など、一帯に漂う独特の雰囲気が多くの人を惹きつけてやまない東京・荒木町。食通の街としても名高いこの地に2014年夏、まったく新しい中華料理店が誕生しました。食材、調理法、盛りつけ、内外装まで、和のテイストをふんだんに盛り込み、落ち着いた空間で、シンプルな料理を、ゆっくりと味わうことのできる場を提供。季節感や見た目の楽しさも大切にしながら丁寧につくり上げるメニューには、若き店主のオリジナリティが溢れています。
クローズアップメニュー

どじょうの黒酢あんかけ(コースの一部)

高温で揚げたどじょうを自家製黒酢あんで和えたシンプルな一品。一般的な佃煮ほど柔らかくはなく、かといってカリカリでもない、ほど良い硬さを特徴とし、ぬめりや臭みを払拭しつつも独特の苦みを活かしている。黒酢あんは比較的甘めで紹興酒が効いているのが持ち味。あんの材料とその配合量は、黒酢(鎮江香酢)200cc・水200cc・紹興酒200cc・上白糖100g・中国たまり醤油150cc・塩少々。上白糖でコクを深め、塩で味をしめて、直輸入の中国たまり醤油で黒光りするような照りを出す。盛りつけはどじょうを立たせて立体的に、季節の食材で彩りを添える。写真はザクロの実で鮮やかに仕上げた秋バージョン。
技のポイント1
 
分をしっかり切ったどじょうを高温・強火で揚げる
食感良く仕上げる第一のポイントは材料であるどじょうの水をしっかり切ること。そのため生きたどじょうをザルに入れてしばらく放置、どじょうを踊らせて自然に水分が落ちるのを待つ。中華鍋に大豆白絞油を入れて230℃まで熱し、どじょうを一気に入れ、よく交ぜながら強火で揚げる。
技のポイント2

 

“しっとり”と“カリカリ”の中間を狙った揚げ具合

「どじょうを揚げる目的は、ぬめりや泥臭さなど敬遠されがちなクセをなくすことであって、カリカリにすることではない」という考えのもと、揚げ具合を自分の口で確かめながら、ちょうど良い瞬間を捉えて火から下ろして、十分に油を切る。
技のポイント3
 

にかけた黒酢の気泡が小さくなった瞬間にどじょうを投入

酢を使う料理は鉄鍋を使うと鉄臭くなるためチタン製を使用。温めたチタン鍋に太白ごま油大さじ1杯ほどをなじませ、あらかじめ混ぜておいた黒酢あんの材料を一気に入れて強火で煮詰める。この際、あんがこげないように常にかき混ぜ続ける。沸騰したあんは大きな気泡を次々に生むが、やがてこの気泡が小さくなる瞬間が訪れる。この瞬間がどじょう投入のポイントで、数秒ずれるだけで風味が変わってしまう。その後は鍋を火から浮かせて全体をよくからませ、網に上げて余分なあんを切ってあら熱をとる。
おすすめメニュー1 
 
稚鮎の唐炒り(コースの一部)
琵琶湖産の生の稚鮎を使用。水を切った稚鮎は、コーンスターチ9:強力粉0.7:カスタードパウダー0.3くらいの配分で水溶きした衣をごく薄く均一にまとわせ、160℃程度の中温の油で10分ほど、かき混ぜながらじっくり揚げる。これにより衣は白っぽい色を残したまま高密度にしっかり揚がり、骨や内臓が気にならないくらいに火が通る。揚がった稚鮎はすくい網に取り、繰り返し大きく振ってしっかりと油を切る。鍋をいったんきれいにし、粒サンショウとトウガラシをから煎り。煙が上がって香りが立ってきたら、タデの葉と長ネギのみじん切りを加え、さらに香りを重ねていく。ほど良く炒れたら、さきほど揚げた稚鮎を入れて交ぜ、サンショウ塩を振って調味する。
おなじみの中華料理、辣子鶏(ラーズーチー)を応用しているが、ラー油で辛味を効かせるラーズーチーに対し、油を使用せず香りを立たせるのがこのメニューの最大の特徴。稚鮎を使った中華料理はきわめて稀だが、迫力満点の見た目や薬味の効いた味は中華ならでは。「鮎とタデ」という和食では定番の出会いものを活かしたことで季節感を出し、成魚の鮎でなく稚鮎を使うことで食べやすく仕上げている。
 
おすすめメニュー2 

鯛の福来蒸し(コースの一部)

大きなどんぶりの中を鯛が泳いでいるかのように立体的に盛りつけた、豪快ながらも美しく、見た目にも楽しい一尾蒸し。鯛は背を開き、大きな骨を丁寧に取り除く。水気を切って炒った木綿豆腐、長芋、魚のすり身をすり鉢ですり、そこに銀杏、ユリ根、ニンジン、ゴボウなど季節の野菜を入れて和え、味がつくかつかない程度に薄口醤油を加えてけんちんをつくり、鯛の背中に詰めて串で押さえる。これを大きめのどんぶりの中央に置き、魚汁(醤油とナンプラーをベースにしたソース)をかけ、長ネギを乗せて蒸す。蒸し上がったらネギを取り除き、刻んだ九条ネギとショウガ、赤玉トウガラシを煮立ったピーナツ油で和えたものをトッピング。焼き卵、白髪ネギ、パクチーを添える。好みで魚汁をつけて食べても良い。
  • お店紹介
    山本眞也店主(左)とスタッフの松下僚さん

    「おいしい中華料理店の特徴の1つは、常にきれいな油を使っていること。妥協して2番、3番の油を使うようなことはありません。また、食材の水や揚げ油をしっかり、1滴も残さないような気持ちで切ることも大切です。私もこうしたことを忘れずに実行し、お客さまに納得していただける風味や食感を目指しています」
     約15年間にわたる国内外での修行を経て、小規模の中華料理店「の弥七」を開業し、1年余りになる店主の山本眞也さんが自らの姿勢をこう語る。開業場所に選んだのは老舗や通好みの飲食店が集まる東京・荒木町。「舌の肥えた方々においしいと言っていただくため、料理と一緒にお酒をおいしく召し上がっていただくためには、お客様や先輩料理人の方々の言葉をよく聞き、応用していくしかありません」と、日々精進を重ねている。
     「の弥七」の特徴は、中華と和の融合。メニューはもちろん、九谷焼を中心とした食器、数寄屋造りを応用した内装などは和そのもの。大理石の床は足に快適で、高級感を演出するのにも役立っている。
     「の弥七」の店名の由来を聞くと、「親孝行のようなものです」と山本さん。故郷の高知県でご両親が中華料理店「風車」を営んでいることから、「水戸黄門」でおなじみの「風車の弥七」をイメージ。「弥七」という名の飲食店はすでに数多くあるので「の」も生かした。「“の”がついていることで“何それ?”となって、かえって覚えていただけるので良かったです」と笑顔を見せる。
     今後については、「毎日の仕事をしっかりこなしていくだけです」と一言。妻の真紀さんとともに、荒木町に根づく店づくりを目指している。
  • 基本情報

    店名 の弥七
    住所 東京都新宿区荒木町8 木村ビル1F
    電話 03-3226-7055
    営業時間

    昼 11:30~13:30(L.O) 
    夜 17:30〜21:00(L.O) 

    定休日

    日曜、祝日と重なった月曜

    席数

    13席

    主な客層 40代以上の男性
    1日の客数 昼  20人 夜 15人
    予算の目安 昼 1,200円〜 
    夜 6,500円、9,000円、12,000円のコースのみ
    開業 2014年7月
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。