【洋食】洋食キムラ 野毛店

  1. (神奈川県/横浜市)

欧米の食文化をベースにしながらも日本独自の進化を遂げてきた、いわゆる洋食。その代表的メニューは、ハンバーグ、コロッケ、シチュー、グラタンなどですが、それぞれのお店の味を決めるのは、デミグラスソースやホワイトソースなどのソース類ともいわれます。こうしたソースづくりに並々ならぬ情熱と労力を注ぐ「洋食キムラ 野毛店」は、創業78年。洋食の老舗が数多く存在する港町横浜で、変わらぬ人気を誇っています。
クローズアップメニュー

ハンバーグステーキ 1,130円(税込)

刻み野菜やスパイスの風味が肉によくなじみ、フワフワとやわらかく、時間をかけてつくりあげる自家製デミグラスソースがたっぷりとからまった一品。貝殻型の熱々の鉄板に、生卵と一緒に乗せるという盛りつけも個性的。白いご飯または特注のパンと、自家製ドレッシングで和えたプチサラダのつく「ハンバーグセット」は、2008年にオープンした新横浜店(キュービックプラザ新横浜内)と合わせて1日約300食、週末などはそれ以上出ることもあるという不動の看板メニューだ。

<デミグラスソース>
技のポイント1
 
 

牛肉と香味野菜を長時間煮込んでブイヨンをつくる

直径24cmの寸胴鍋で牛肉(バラまたはタン)、牛スジ、タマネギ、パセリ、セロリ、ニンジン、ローリエ、ガーリックを煮込む(左写真)。あくをていねいにすくいながら最低でも6時間。こうしてつくったブイヨンがデミグラスソースのベースになる(右写真)。茹で上がった牛バラや牛タンはこのあとシチューに使う。
技のポイント2

素材の状態を考慮し水分や調味料を調節

弱火にかけたブイヨンに赤ワイン、比較的薄めのオーガニックのウスターソース、梅酒、上白糖、ビーフコンソメ、コリアンダー、塩(伯方の塩)、コショウ、トマトペースト、トマトピューレ、トマトケチャップ、生クリーム、牛乳を次々に投入し、そのつどよく混ぜる。計量はせず、素材の状態や気候を考慮し、シェフの感覚で配合のバランスを調節する。
技のポイント3

 

半生のブールマニエと16時間炒めたブラックルーを3:2で使用

材料を入れ終わったら、自家製のブールマニエとブラックルーを3:2くらいの割合でたっぷり加える。水を加えて温度を下げたブイヨンでこれらをあらかじめ溶き(左写真)、それを漉し器で漉しながら入れることで(右写真)ダマになるのを防ぐ。ブールマニエはソースにコシをつける目的で用いる。ブイヨンの浮き油と、バター、小麦粉を合わせたもので、弱火にかけ、油とバターが溶けて小麦粉がなじんだら炒らずに火から上げるのがコシを保つコツ。一方、ブラックルーはブールマニエの材料プラス、トマトペースト、トマトピューレ、ガーリック、チリパウダー、パプリカを入れて、焦がさないように弱火で約16時間炒めてつくる。ブラックルーを用いることでソースの色とコクが深まる。
技のポイント4

 

隠し味は3年熟成の自家製梅酒

デミグラスソースの仕上げに用いるのは3年間熟成させた自家製梅酒。本来はザクロ酒を用いていたが、戦後、材料が手に入りづらい時代に梅酒で代用して以来、梅酒一筋。ソースを煮込む段階でも業務用梅酒を大量に使い、甘味とコク、照りを出すが、さらに最後に自家製梅酒をプラスすることで、より深い味わいを生み出している。
技のポイント5

丸2日煮込んではじめて使える

材料を混ぜ終わったソースはさらに長時間煮込んでから使う。厨房には2日ほど煮込んで使える段階になったソース、1日程度煮込んだ2番目のソース、仕込んでいる最中のソース、ブイヨン、の4つの寸胴鍋が並んでいる。出来上がったソースが減ってきたら、2番目のソースを継ぎ足す。こうした一連の作業を毎日繰り返すことで安定した味のソースを提供できる。

<ハンバーグ>
技のポイント1
 

やわらかく仕上げるためタマネギとパン粉を多めに使う

洋食キムラのハンバーグの特徴であるやわらかさを出すため、タマネギやパン粉の比率を高く設定している。牛7:豚3の合挽き肉7kgに対し、タマネギは皮をむいた段階の重さで10kg、パン粉はミミ入り、ミミなしをそれぞれ1kg使う。これがハンバーグ100個分。つなぎは卵14個、赤ワイン、生クリーム、サラダ油。ほかに、細かく刻んだパセリ、セロリ、マッシュルームが適量入る。スパイスはナツメグ、コリアンダー、チリパウダー、バジル、カレー粉など。塩・コショウなどを含めると調味料だけで13種が使われている。
技のポイント2

 

タマネギの水分を絞り、合わせた2種のパン粉にスパイスをなじませる

肉以外の素材は、肉と合わせる前の作業が重要な意味を持つ。タマネギはみじん切りにした後、ザルに入れて体重をかけ水分を十分切る(このとき絞ったタマネギの汁はブイヨンに使用)(左写真)。卵、赤ワイン、サラダ油もあらかじめボウルで混ぜておく。パン粉はミミ入りとミミなしをミックスし(ミミ入りを使うのは味わいを深めるため)、スパイス類を振り入れ、十分なじませる。こうしてから肉と合わせることで、肉全体にスパイスをいきわたらせることができる(右写真)。
技のポイント3

 

仮焼きをして一晩寝かせ味をなじませる

ハンバーグのタネは180gずつ手でまるめる。それに小麦粉をまぶし、あらかじめフライパンで仮焼きをする。このとき全体を均一に焼くため、複数のフライパンを同時に火にかけ、片面ずつ別のフライパンで焼いていく(左写真)。これを冷まして冷蔵庫で一晩保管。こうして寝かせることで素材が落ち着きスパイスの風味が一層なじむ(右写真)。
技のポイント4

  

本焼きをしてデミグラスソースに30分程度浸す

本焼きの際も最初にまんべんなく小麦粉をまぶす。これをこんがり焼くことでハンバーグの表面に皮膜のような部分をつくり、型くずれを防ぐ(左・中央写真)。本焼きしたハンバーグはデミグラスソースに30分程度浸してソースの味をなじませる(右写真)。
おすすめメニュー1

ポークソテー 1,980円(税込)

分厚く切った肩ロースを、オーブンは使わず、フライパンで焼き具合を確認しながら調理する。鉄皿に卵を落とし、ソテーしたポークを乗せ、炒めたスライスタマネギ、マッシュルームを加えたデミグラスソースをかければ出来上がり。シンプルだがじっくり焼くため少々時間がかかる。
おすすめメニュー2

ビーフシチュー 英国風 2,400円(税込)

あらかじめボイルした牛バラ肉を、油を使わずに焼き、塩、ブラックペッパーで味つけ、赤ワインでフランベ。これを塩・コショウして炒めたジャガイモ、ニンジン、タマネギ、マッシュルームと合わせて、デミグラスソースを加えて煮る。ポーチドエッグとグリンピースを乗せ、仕上げに粉チーズを振る。注文が入るごとに肉を焼くところからていねいにつくっている。
おすすめメニュー3

カニクリームコロッケ 1,790円(税込)

生クリーム、牛乳、ブールマニエ、白ワインで滑らかなルーをつくり、ブイヨンを少量加えてコクを出す。次にタマネギ、ベーコン、ズワイガニ、隠し味のカニミソを炒め、ブランデーで軽くフランベして臭みを取ったらルーと合わせ、塩・コショウで調味しながら混ぜる。こうしてつくったタネを一つひとつ丁寧に丸め、パン粉をまぶしてラードで揚げる。コロッケの周りに細かい泡が立ち、シュワーッという音が聞こえたら揚げ上がりの目安。ソース代わりにトマトケチャップとマヨネーズを添えるが、何もつけずに食べる人も多い。
  • お店紹介

    「そろそろ引退かな」と笑いながら厨房に立ち続ける2代目の貴邑悟さん


     「動物だって夏バテする。だから夏の肉は水分が多い。タマネギと一言で言っても、新タマネギはやっぱり水分が多いから、水切りがよけいに必要だし、その分、かさは少なくなる。そういうことを全部考えながら、素材や調味料のバランスを調整します。そんなわけで何を何gなんてレシピはありません。いい加減につくっているようですべてを計算している。それでこそ洋食キムラの味が維持できるのです」
     1938年に洋食屋を開業した創業者の三男として手伝いを始めて50余年。69年から2代目店主を名乗り、81年に正式にお店を継いだ。これまで独自の研究を重ねつつ厨房に立ち続け、現在の「洋食キムラ」をつくりあげた貴邑悟さんが、料理と向き合う姿勢を語る。
     「一緒になりたいなら店を継げ」——。戦前、東京・銀座で修行をし、戦後、米軍の厨房でハンバーガーに出会い、料理関係の友人知人から情報を得ながらハンバーグの基礎を築いた初代の一言が決め手だった。電気メーカーの内定を蹴ってシェフになり、当時、洋食キムラの従業員だった和代さんと結婚したのが1971年。現在も2人は厨房で一緒。さらに息子で3代目の智さんや、子飼いのアルバイトなども加わり、日々黙々と、おいしさの追求を続けている。
     2008年にオープンした新横浜店が繁盛し、野毛店はそのセントラルキッチンの役目も果たしている。「洋食は甘い、辛い、塩っぱい、はっきりした個性がないと生き残っていけない。ウチの洋食は総じてやわらかく甘め。それがいいと言って通ってくれる常連さんの存在がありがたいです」と言う貴邑さんは今年73歳。引退の時機を計りながら、後進の成長を見守っている。
  • 基本情報

    店名 洋食キムラ 野毛店
    住所 神奈川県横浜市中区野毛町1-3
    電話 045-231-8706
    営業時間

    ランチ11:30~14:30(L.O14:00) 
    ディナー17:00〜21:30(L.O21:00/日・祝L.O20:00)

    定休日

    月曜日(祝日の場合は火曜日)

    席数

    80席

    主な客層

    家族連れ、高齢者

    予算の目安 ランチ1,500円 
    ディナー3,000円
    開業 1938年
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。

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