(東京都/渋谷区)
開業以来10年以上にわたって連日満席のトラットリアの名店「ドンチッチョ」。その姉妹店として2016年9月にオープンした「ラ・コッポラ」は、アラカルトスタイルを採用したオステリアとして、より気軽に利用できるイタリア料理店。食事メインのドンチッチョとは趣を変え、食事メインでもお酒メインでも利用できる使い勝手のよい店をめざしており、メニューはボリューム満点のフィレンツェ風Tボーンステーキ400gもあれば、500円均一の軽いおつまみも揃えるといったバラエティの豊かさが特徴。厨房で腕を奮うのはイタリア料理歴30年を超える筒井力丸さん。イタリア郷土料理を巧みに表現した本格的な料理を、その日の気分に合わせた使い方で楽しめる店として足繁く通うファンが増えてきている。
-
クローズアップメニュー
-
-
黒豚肩ロース肉のスカロッピーネ マルサラソース 2,600円(税別)
スカロッピーネとはスライスした肉に小麦粉をまぶしてソテーしたイタリアでも各地で食されているポピュラーな料理のひとつ。仔牛肉を用いることが一般的といわれるが、豚肉や鶏肉など多様な肉で調理されている。合わせるソースもトマトソースやワインソース、ポルチーニなどのキノコソース等、組み合わせが多彩なことからお店の個性を出しやすい一品である。ラ・コッポラでは食べ応えのあるボリュームをリーズナブルに提供したいという考えから黒豚の肩ロース肉を使用。その一方でシチリア島特産の酒精強化ワインであるマルサラワインで作ったソースと合わせることでイタリア料理の郷土色を演出している。付け合わせには季節ごとに旬の野菜料理を添えて季節感を表現する役割を担う。取材時(1月15日)はダイコンをプロシュートの原木からとった端材やスジとともに煮込んだもの。
-
技のポイント1
-
-
焼成前に豚肉の繊維を断って型崩れを防ぐ
3ミリ前後の薄さにスライスした黒豚肩ロース肉は、肉質が柔らかく、ほどよく脂がのっていることからソテーしてもジューシーな肉の味わいを楽しめる。小麦粉の衣を付ける前に、豚肉を包丁で軽く叩いて肉の線維に切れ目を入れ、フライパンで加熱したときに身が縮むのを防ぐ。
-
技のポイント2
-
-
マルサラワインでフランベして風味を肉に移す
オリーブオイルをしいたフライパンを強火で十分に熱して豚肉を入れる。肉の表面に軽く焼き色がついたらひっくり返してすぐにマルサラワイン100ccをかけてフランベ。マルサラワインの風味を肉に移しながらアルコールを飛ばす。アルコールが飛んで火が消えたところでフライパンをストーブからおろし、ソースのみを別の鍋に移して煮詰めていく。
技のポイント3
-
-
マルサラソースを煮詰める
フライパンから移したマルサラワインソースはとろみがでるまでしっかり煮詰めてからフォンドヴォー100ccを加える。煮詰め方が中途半端な状態でフォンドヴォーを加えてしまうと味がぼやけてしまうので注意が必要だ。さらにソースを煮詰めて半量くらいになったところで、ストーブからおろしていた豚肉と合わせて軽く煮込む。仕上げに無塩バターを少量和えてコクを増している。
-
オススメメニュー1
-
-
白菜とゴルゴンゾーラのグラタン 1,400円(税別)
白菜とゴルゴンゾーラの持ち味だけで仕上げた、筒井シェフの食材に向き合う姿勢を感じさせる一品。白菜はあらかじめアルミホイルで包みオーブンで加熱して余分な水分を除き、ベシャメルと生クリームでのばしたゴルゴンゾーラで和えて200℃のオーブンで焼き上げる。白菜の甘みとゴルゴンゾーラの塩気の調和が商品の生命線となるため、適した塩分濃度のゴルゴンゾーラを仕入れた時のみメニューに載る隠れた逸品である。
-
オススメメニュー2
-
-
ワタリガニとトマトソースのパスタ 1,700円(税別)
ワタリガニをニンニクとオリーブオイルでじっくりとソテーして旨みを引き出し、そこにトマトソースを加えて煮込むことでカニの濃厚なダシを含ませる。イタリア料理では隠し味にワインを加えることが多いが、このメニューでは、そうした調味をあえてせずに仕上げるのが素材の旨みを引き出すことに全力を傾ける筒井シェフのスタイルだ。
-
-
お店紹介
-
-
「しっかり食事をしたいお客様にも、食前食後のちょっと1杯というお客様にも愛される懐の深い店をめざしています」と語るシェフの筒井力丸さんはイタリア料理歴30年を超えるベテラン。
日本ではイタリア料理がまだ“地中海料理”のひとつ程度にしか認知されていなかった1980年代にイタリア料理の可能性を感じて渡伊。イタリア各地のレストランで修業するが、とりわけミラノにある老舗イタリア料理店「スカレッタ」での経験が筒井シェフのイタリア料理人生を決定づける。同店のシーズン限定スペシャリテである「イチゴのリゾット」は、スカレッタの精神を受け継いだ料理として帰国以来提供し続けている。
筒井シェフは料理に季節感を表現させるために野菜を重用するが、食材の持ち味を引き出すことに注力しているところが特筆すべきポイントだ。「野菜は季節感を表現できる、大きなファクターだと思って使っています。最近は女性のお客様は野菜料理から食べるお客様が増えてきました。野菜料理は付け合わせ的な役割から、肉・魚・野菜といった具合にひとつのカテゴリになったと思いますね」と筒井シェフ。「メニューによっては、素材の味を引き出そうとしたときにワインの酸味が食材の繊細な味わいを隠してしまうこともあるのです」と筒井シェフの食材に対する姿勢が現れている。
2016年9月にオープンした「オステリア ヴィネリア ラ・コッポラ」はお客の使い勝手を高めるため、アラカルトスタイルを採用。アンティパスト(前菜)、プリモピアット(パスタ)、セコンドピアット(メイン料理)に加えて軽いおつまみを意味するスタズィティーニ(付き出し)6品を500円の均一価格で用意して、バーのようにワインと軽食を楽しむことも可能にしている。加えて前菜、パスタについてはハーフポーションの注文にも対応する。
ワインはグラスワインで600〜1800円と幅広いレンジで用意し、またグラッパなどのリキュールも20種前後と品揃えを充実させている。こうしたメニュースタイルが多様な客層や利用動機の吸収に貢献。1人当たりの支払い額が3000〜1万5,000円という実績もリッチなディナーから気軽なバー使いまで幅広く利用されている証といえよう。
-
-
基本情報
-
店名 |
Osteria-Vineria La Coppola (オステリア ヴィネリア ラ・コッポラ)
|
住所 |
東京都渋谷区渋谷2-2-2 青山ルカビル 2F |
電話 |
03-6805-1551 |
営業時間 |
18:00〜26:00(L.O. 25:00) |
定休日 |
日曜・祝日の月曜
|
席数 |
27席
|
主な客層 |
近隣に勤務するビジネスマンや住民、カップルや女性グループなど
|
開業 |
2016年9月 |
-
※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。