(東京都/清瀬市)
“レバニラ炒め専門店”と銘打ち、20種の定食メニューのうち、主食材がレバーの商品が12品を占める個性的なお店が「レバニラ定食 KEI楽」です。看板商品のレバニラ炒めは豚、牛、鶏を揃え、鮮度の高いレバーを厳選して気前のいい大きさにカット。それを計算された火入れでプリっとした食感と濃厚な旨みを引き出し、近隣住民だけでなく遠方からの目的客も訪れる人気店です。
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クローズアップメニュー
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レバニラ炒め 豚レバー(山形庄内産) 1,090円(税込)
※定食はごはん、スープ、漬け物、ジャスミン茶つきで1,290円(税込)
看板商品のレバニラ炒めは、専門店ならではのラインアップで山形庄内産、茨城県産、国内産と仕入先別に3種類を揃える豚レバーに、国内産牛レバーと国内産鶏レバーが加わった5品を取り揃えています。売れ筋1位は山形庄内産の豚レバーを使ったもので「子どもたちに食べ比べてもらってみると必ず山形産の方を選ぶ」と店主の秋元さん。高品質なレバーを求めて各地のと畜場を訪れて探した結果、取り扱う畜産農家の数が少ないため品質が安定していることから庄内産を使うことを決めたそうです。絶妙な火入れにより新鮮なレバーならではのプリっとした食感と濃厚な旨みを引き出しています。気前のいいボリュームで盛りつけますが、見た目とはうらはらに味つけはあっさりとしていて食べやすく、やわらかくジューシーなレバーを最後まで美味しく味わえます。またたっぷりの汁で炒め煮風に仕上げるため、余分な油が落ちてさっぱり食べられます。一緒に提供される「自家製辛味噌」は豆板醤、柚子コショウ、ニンニク、砂糖などを合わせて熟成させたものですが、パンチのある辛さとあとを引く旨みでますます食が進みます。
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丁寧な下処理をするから、臭み取りせずに調理できます
仕入からこだわった新鮮なレバーはスジを包丁で削ぎ落とし、中に通っている血管は途中でちぎれないように注意しながら指で引っ張って取り除きます。その後は、1〜2センチほどの厚さに削ぎ切りしていきますが、包丁を使わずに丁寧に血管を取り除いたため、まな板に血の汚れがとても少ないのが印象的でした。レバーの品質を見るポイントは、ほどよく赤みのあるものであること。白っぽいものは、脂肪がたっぷりついたいわゆる「白レバー」で、一部の焼き鳥店などでは重宝されていますが、レバー本来の味を大事にすることとさっぱりとした食べやすさをめざしているKEI楽では通常メニューでは使用せず、白レバーが入荷してしまった時に別メニューとして扱います。また通常でしたらレバーを牛乳に漬けるなどして臭みとりをしますが、それをしないのは「せっかくの栄養分が流れ出てしまうから」と秋元さん。新鮮なレバーを仕入れ、手で血管を取り除くなどの丁寧な下処理だから、臭みとりをせずにレバー本来の風味を引き出すことができるのです。
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自家製香味醤油などを合わせた調味ダレに漬け込みます
カットしたレバーは料理酒、紹興酒、ホワイトペッパー、ショウガのすりおろし、自家製の香味醤油に片栗粉を合わせた調味ダレに漬けこみます。香味醤油は醤油にたっぷりのニンニク、ショウガと長ネギの青い部分を加え、ひと煮立ちさせたあと1時間程度弱火で煮込んでつくったもので、KEI楽の味の柱となっているものです。
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技のポイント3(揚げる)

レバーの中心が生の状態を残すよう低温、短時間で揚げます
注文が入ったらレバーに片栗粉をまぶしてから鍋で揚げますが、油温は160℃前後の低温で揚げ時間も30秒ほどと短時間。レバーの中心はまだ生に近い状態ですが、仕上げに炒めた時に最適な火入れになる状態から逆算して揚げ加減を調整しているのです。また低温、短時間で揚げることで調味液の醤油が焦げて風味を損ねてしまうのを避ける狙いもあります。揚げ油には白絞油を使っており、サクッとした軽い食感にするために片栗粉をつけて揚げています。
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技のポイント4(炒める、味つける)
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調味料は上段左からニンニク、ガラスープ、紹興酒、料理酒。中段左から醤油、香味醤油、香辛料(コショウ等)。下段左からうま味調味料、扇味醤、オイスターソース、ごま油。

野菜を炒めたあとの残り汁にレバーを絡めるように炒めて仕上げます
中華鍋にラードを入れ、おろしニンニクで香りづけしたところでモヤシ、ニンジン、タケノコ、ザーサイ、キクラゲ、マッシュルームを投入して軽く炒めてからニラを入れます。もうひとつの主役でもあるニラは、エグみが少なくレバーの味を引き立てて、甘さも感じられる北海道函館産の「北の華」をメインにレバーとの相性を考えて厳選しています。全体に火が入ったところで、やや多めのガラスープ、料理酒、紹興酒、うま味調味料、醤油、香味醤油、扇味醤(サンウェイジャン)、オイスターソース、香辛料(コショウ等)で味つけして最後に香りづけにごま油を加え皿にあけます。そして揚げ置きしていたレバーを再び鍋に投入して、残った炒め汁に絡めながら火を通したら皿に盛りつけて完成です。レバーに炒め汁をしっかり絡めることで、味を入れつつ余分な油を落とし、さっぱりと旨みが濃厚なレバーに仕上がります。
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オススメメニュー1
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レバー唐揚げ 豚レバー(山形庄内産) 910円(税込)
※定食はごはん、スープ、漬け物、ジャスミン茶つきで1,110円(税込)
レバニラ炒めと並ぶ主力商品がレバー唐揚げです。レバニラ炒め用に下味をつけたレバーを使い、160℃の低温で揚げます。揚げ時間は1分弱で、お客様に提供したタイミングで中心部まで熱が入っており、パサつかずにジューシーな食べ頃になるイメージです。仕上げにまんべんなく塩コショウを振りかけて完成。シンプルな調味ゆえにレバーの味がいっそう際立ちます。
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オススメメニュー2
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鶏焼き(塩) 810円(税込)
※定食はごはん、スープ、漬け物、ジャスミン茶つきで1,010円(税込)
「郊外地域の店ですからメニューを絞り込み過ぎても支持されません」(秋元店主)という理由から、数少ないレバー以外の肉を使ったメニュー。とはいえ、希少部位の鶏せせり肉を使用しているところに個性が光ります。鶏せせり肉は宮崎県産のものを使用し、170℃前後の油で1分程度素揚げして熱を通してから、中華鍋で焼き色をつけるように炒めて塩コショウをふります。表面は香ばしく、中はプリッとした弾力ある食感です。
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オススメメニュー3
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国産豚レバーとピーマンのうま煮 890円(税込)
※定食はごはん、スープ、漬け物、ジャスミン茶つきで1,090円(税込)
レバニラと同様に下味をつけた豚レバーを160℃の揚げ油で30秒前後揚げし、ピーマン、ニンジン、タケノコ、長ネギ、キクラゲは油通しします。ガラスープ、香味醤油、オイスターソース、料理酒、豆板醤、おろしショウガ、砂糖、コショウで調味しながら炒め煮し、片栗粉でとろみをつけたあとにごま油で香りをつけて仕上げます。
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お店紹介
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「人との縁が新しい縁へと広がりながら、それが店の個性になっています」と店主の秋元 修さん。
店主の秋元 修さんの実家は埼玉県朝霞市で大衆中華料理店「慶楽」を営業していました。秋元さんは「どうせ店を継ぐなら、高級中華の世界を経験してから」と考え、学費を貯めるために運送会社に勤め始めました。が、そこでは料理修業のことを忘れたかのように仕事に邁進。結局、両親が高齢になったことで店を手伝うことになって、ようやく料理修業が始まりました。
やがて店を任されるようになりましたが、生まれて間もない双子の娘を遺して奥様が急逝。秋元さんは料理に向き合えなくなってしまい、店は閉店になってしまいます。
その後、友人たちの支えもあって、再起をかけてオープンしたのが「レバニラ定食 KEI楽」でした。看板商品にレバニラ炒めを据えた理由について秋元さんは「前の店でもレバニラ定食は人気メニューだったんです。冷凍もののレバーを使っているのに『この店のレバニラはおいしいね』と言ってくださるお客様が多くて。だったら、もっといいレバーを使って作れば他店と差別化できると考えたんです」と語る。そうして全国でも珍しいレバニラ定食専門店としてオープンしたのでした。するとコアなレバニラファンも遠方から訪れたり、雑誌やテレビ番組にも取材されるようになり、連日客足の絶えない人気店となったのです。
「この店を始めたことで人の縁の有り難さをしみじみ感じています。応援してくれた友人たちはもちろん、珍しいレバーが集まってきたり、近隣のお店とも交流するようになったり。そうやって知り合った人たちから紹介されていらっしゃったお客様もたくさんいらっしゃいます。そんな縁に支えられて、店を続けられていることにとても感謝しています」と秋元さん。
蝦夷鹿生産者や馬肉生産者、ダチョウ生産者とも知り合うようになったことで、予約限定などで蝦夷鹿レバー、馬レバー、ダチョウレバーの料理も提供しています。
そして地元の店と連携してSNS集客の勉強会を開いたり、お客様の回遊を促すポイントカードを作成するなど、積極的に交友関係を広げて地域を盛り上げています。地元のベーカリー「パンのみせ アンヌアンネ」とは、KEI楽が作る麻婆豆腐を使った「火を吹く麻婆豆腐パン」を開発するなどのコラボレーションも行っています。
さらにはパティシエ経験がないとは思えないほどの腕前でバースデーチャーハンやクリスマス限定ブッシュドノエルチャーハンを予約限定でつくってしまうなど、創作性豊な一面も。そうしたユニークな取り組みに、秋元さんの気さくな人柄もあって多くのファンがお店を訪れます。
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基本情報
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店名 |
レバニラ定食 KEI楽 |
住所 |
東京都清瀬市松山1-20-3-1F |
電話 |
042-497-9208 |
営業時間 |
11:30〜14:00、17:30〜22:00 |
定休日 |
日曜日
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席数 |
10席
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主な客層 |
近隣住民、土曜日は遠方からの目的客も
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予算の目安 |
昼1,200円、夜2,500円 |
1日の客数 |
昼30人、夜20人 |
開業 |
2009年8月 |
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※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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