【洋菓子】Pâtisserie Yu Sasage(パティスリー ユウ ササゲ)

東京都/世田谷区

美しい見た目に高まる期待、その予想を超えて五感を刺激されるフランス菓子を作り出す「Pâtisserie Yu Sasage」。今回はオーナーシェフの捧 雄介さんが手がける、代表的なフランス菓子「シャルロット」を取り上げます。円柱状に土台と周りを生地で囲み、ババロアやムース、フルーツなどを詰めた可愛らしいケーキ。硬くなったパンに、フルーツなどを詰めて焼いた温かいものが起源とされています。現在ではパンを使う店もありますが、ビスキュイをはじめスポンジやクッキーなど、さまざまな生地で作られる冷たいケーキが主流です。
 
クローズアップメニュー


シャルロット マングー 2,315円(税抜)
その名の通り、マングー(マンゴー)が主役のシャルロット。ビスキュイで土台と壁を作り、中にムースマングー、ジュレパッションマングー、ムースマングーの順で重ねています。フレッシュなアルフォンソマンゴーとクレームシャンティーで飾り付け、フランボワーズをトッピングした色鮮やかなケーキ。マンゴーの香りが甘く広がり、まったりと濃厚な味わいを存分に感じられます。パッションフルーツのキリッと目の覚めるような酸味が、マンゴーの風味を引き立て、輪郭のはっきりした立体感のある味わいをもたらしています。口どけが良くミルクの風味あふれるクレームシャンティーやジューシーなフレッシュマンゴーなど、食べ進める組み合わせによってマンゴーの味わいに変化が生まれるのも楽しい。マンゴーのほか、中身は季節に合わせて変わります。
 
技のポイント1

ビスキュイ作りのポイントは卵白と卵黄を別々に泡立てること

卵黄と卵白を別立てするのが、ビスキュイ作りの大きな特徴です。全卵を泡立てる共立てより気泡がしっかり入り、ふんわりと軽い食感に焼き上がります。卵黄(6個分)と卵白(6個分)に分けて、それぞれ別のミキサーボウルに投入。卵黄のボウルにグラニュー糖195gのうち1割を加え、卵白より先にミキサーのスイッチをオン。それから卵白を比較的遅めの速度でミキサーにかけ、残りのグラニュー糖を4~5回に分けて入れてメレンゲを作ります。ゆっくり立てるのは、気泡を均一に入れるため。高速だと気泡の質が悪くなり、焼き上がりが硬くなってしまいます。また、グラニュー糖を一気に入れると、きれいに空気が入らず、ベタッとしてしまうそうです。分けて入れれば、糖分がたんぱく質の膜を均等に覆って、角がしっかりしたきめの細かいメレンゲができます。
 

写真左のようにしっかり角が立つくらいのメレンゲに仕上がったら、立てた卵黄と合わせていきますが、ここでも一気に入れるのはNG。卵黄とメレンゲを一気に混ぜると分離してしまうので、まずは卵黄に少量のメレンゲを加え、ゴムベラで和えます。

それをメレンゲのボウルにすべて入れ、さっくり合わせたところに、薄力粉(195g)を加えてメレンゲが少し残る程度に軽く混ぜ合わせます。
 

対角線に折り目を付けたオーブンシートを天板に敷きます。この時、天板の四隅や中央などに少し生地をつけ、その上から貼り付けるようにシートを敷けば固定されて作業が楽です。先が丸口金の絞り袋に生地を詰め、シートに付けた折り目に沿って絞り出します。折り目に沿っていけば、真っすぐ絞れてきれいな仕上がりに。対角線に絞り出した生地に沿って、隙間を開けず生地の絞り出しを繰り返します。
 

オーブンにかける直前、生地一面にココナッツフレーク、粉糖を順にたっぷりふりかけておきます。粉糖で表面を覆うことで、焼く時に水分が飛ばずにすみ、サックリとした食感になって、見た目にも表情が出るのだそうです。
 
 
前述がシャルロットの側面にあたる生地で、次が土台の生地。先程と同様、天板に糊代わりの生地を付けてオーブンシートを敷き、直径12cmのセルクルを置いて生地を絞り出していきます。中央から隙間なく渦を描くように絞るのがコツです。側面の生地と土台の生地を180℃に設定したコンベクションオーブンで、8~10分焼きます。途中、3分の2程度の時間が経ったら、天板の前後を返すのがポイント。使用するオーブンによってクセが違いますが、そうすることで焼きムラを防げます。ただし、膨張して焼き固まっていないタイミングで開けてしまうと、蒸気が出てしぼんでしまうので、焼き時間の3分の2まで待つのが大切です。焼き上がったら、網に乗せて休ませておきます。

技のポイント2
 

ゼラチンを溶かした温かいピューレに、残りのピューレを入れてダマを防ぎます

続いてジュレパッションマングー作り。パッションピューレ(726g)とマンゴーピューレ(180g)を混ぜ合わせておきます。そこから1~2割分を耐熱ボウルに取りわけ、氷水でふやかしておいた板ゼラチン(17.3g)とグラニュー糖(82g)を加えて、ラップをかけて電子レンジで1分から1分半温めます。仕上がり温度は40~50℃が目安。ピューレを温めてしまうとフレッシュ感がなくなるので、あえて少量でゼラチンとグラニュー糖を溶かすのがポイントです。ゼラチンなどを温め溶かしたピューレに、残りのピューレを加えます。8割程度あるピューレに、温めた少量のピューレを入れたくなりますが、そうしない理由は温度と濃度の差。冷たいピューレに温かいピューレを投入すると、入れた箇所が急激に冷え固まり、ダマになってしまうからです。また、ゼラチンの濃度が高い方を、ピューレに入れるのもダマの原因になります。

直径10cmの型に100gずつ流し込み、冷凍庫で冷やしておきます。
 
ジュレを冷やし固めている間に、ビスキュイを成型します。側面部分のビスキュイを、長さ36cm、幅4cmの帯状にカット。直径12cmのセルクルの内側面に、ビスキュイの波型の面が外に向くようはめ込みます。土台のビスキュイは、直径8.5cmに型を抜き、写真右のように底に沈めます。
 
技のポイント3

 
 

きめ細かいイタリアンメレンゲでふんわり口どけのいいムースに仕上げます

ムースマングー作りの要は、イタリアンメレンゲ。卵白に砂糖を数回に分けて加え泡立てるフレンチメレンゲに対し、イタリアンメレンゲは泡立てた卵白に熱いシロップを加えます。熱いシロップを入れることでメレンゲが膨張して空気がたくさん入り、よりキメの細かいメレンゲができるそうです。また、煮詰めて糖分の含有量が増えるので、固くしっかりした仕上がりになります。ムースで使用するグラニュー糖(138g)の9割に水(40g)を加えて火にかけ、116℃まで煮詰めていきます。卵白にグラニュー糖の残り1割を加え、ミキサーで攪拌します。メレンゲの目がだんだん詰まってきたところで、煮詰めたシロップを投入。煮詰めたシロップには、離水を防ぐ効果もあるそうです。熱いシロップでメレンゲの温度が上がっているので、下げるためにも時間をかけてしっかり攪拌します。

 
  
ミキサーでイタリアンメレンゲが出来上がるまでの合間に、マンゴーピューレにゼラチンを加える作業を行います。まず、マンゴーピューレ(548g)にパッションピューレ(137g)を混ぜ合わせます。パッションフルーツの爽やかな酸味により、味わいに輪郭が生まれ、マンゴーの風味に奥行きができるそうです。ジュレ作りのように、1割程度のピューレを耐熱ボウルに入れ、氷水でふやかしておいた板ゼラチン(26g)を加えてラップをかけ、電子レンジで1分から1分半程温めます。残りのピューレには、パッションリキュール(48g)を加えておきます。ゼラチンを溶かし温めたピューレに、残りのピューレを混ぜ合わせます。


  
脂肪分35%の生クリーム(185g)を6分立てにしたら、イタリアンメレンゲを一気に加えます。生クリームは6分立てくらいのゆるめにしておかないと、メレンゲと合わさった時に全体が硬くなってバサバサになってしまうとのこと。泡立て器を使い、メレンゲをほぐすようなイメージで混ぜ合わせるのもポイントです。

 
  
前述のピューレに、生クリームとイタリアンメレンゲを混ぜたものを4分の1程度加えて、よく混ぜ合わせます。それを、残りの生クリームとメレンゲを混ぜたものに入れて混ぜ合わせるのですが、一気に混ぜないのはそれぞれの比重を緩和させて気泡を活かすためです。

 

ビスキュイを成型したセルクルに、側面のビスキュイを1cm程残した高さまでムースマングーを流し込みます。その上に、冷やしておいたジュレパッションマングーを乗せます。


  
さらにジュレやビスキュイを覆い隠すようにムースを敷き詰めたら、型の高さに合わせてならします。冷やし固めてからセルクルを外し、ダイス状にカットしたアルフォンソマンゴーをトッピングして、クレームシャンティーでデコレートしたら完成。
オススメメニュー1

サントノーレ カシス パンプレムマ 515円(税抜)

ピンクのサブレをあしらって焼き上げたシューにカスタードクリームを詰め、上からカシスクリームをたっぷり絞って、フレッシュなピンクグレープフルーツをトッピング。カシスクリームの下には、グレープフルーツのジュレが隠れています。ビビッドな色合いのカシスクリームは、驚くほど口どけが軽やか。キレのある甘酸っぱさを追いかけるように広がる香りが、爽やかな余韻を残します。ジュレのほろ苦さとも絶妙にマッチし、見た目に反してすっきりした味わい。サントノーレは通年ありますが、味をアレンジして随時変わります。
オススメメニュー2
ショコラ ノワゼット 520円(税抜)
チョコレートとヘーゼルナッツの組み合わせは、フランス菓子の中でも王道。「この組み合わせをいかに美味しく味わってもらうかがポイント。いろんなテクスチャーで、食感や味わいが変わってきます」との言葉通り、捧シェフの創意が光る一品です。ドーム型のチョコレートムースの中にノワゼットのクリームを忍ばせ、グラサージュ・ショコラを施しています。その上にヘーゼルナッツを和えたクレームシャンティーをトッピング。さらに土台は、フィヤンティーヌとヘーゼルナッツにチョコレートを絡めて固めたものが使われています。2種類のクリームでヘーゼルナッツの味わいに変化をもたらし、土台はザクザク、カリカリと心地よいアクセントを与える食感。ミルクチョコレート8割、ブラックチョコレート2割に配合されたムースは、程よいビター感とカカオの香りがじんわり染み渡ります。食べる箇所によって、チョコレートやナッツの違った風味が生まれ、食感の変化も新鮮です。
オススメメニュー3
プティ フール セック アソルティモン 2,188円(税抜)
手土産に重宝しそうなクッキー7種類の詰め合わせ。写真の手前右から時計回りに、サブレS.、サブレ ヴィ エノワ、ディアマン オ テ、2種類のムラング(カフェモカ、ココナッツ味)、サクリスタン、ディアマン パニーユ。「サブレS.」はチョコレートをサンドしたS字形のショコラクッキー、ヘーゼルナッツを使ったクッキー「サブレ ヴィ エノワ」はクラッシュしたヘーゼルナッツのつぶつぶ感が心地良く、豊かな香りが鼻孔をくすぐります。アールグレイを混ぜ込んだ「ディアマン オ テ」は、紅茶の香りが口いっぱいに広がります。「ムラング」は、消えるように口どけるメレンゲ。「ディア マンパニーユ」は、バターたっぷりのバニラクッキー。「サクリスタン」はこの中で唯一のパイ菓子で、アーモンドをまぶした香ばしい味わいです。
  • お店紹介
    「口はばったいことを言うようですが、伝統的な製法に基づく確かな技術と知識がベースになくては、独創的なフランス菓子は生み出せないと思っています」と語るオーナーシェフの捧 雄介さん
    オーナーシェフ・捧さんのエッセンスを加えた、オリジナリティあふれるフランス菓子で定評のあるパティスリー。京王線・千歳烏山駅北口から徒歩数分、住宅街に差しかかる閑静な立地ながら、多方面からわざわざ足を運ぶリピーターの多さに、その人気の度合いがうかがえます。常時20種類程の生菓子がショーケースに並び、焼き菓子は約50種類にも及びます。特に生菓子は定番が10種類程で、そのほかは毎月2~3品のペースで入れ替わるので、見逃すまいとこまめに通う常連客が後を絶ちません。捧さんは辻製菓専門学校を卒業後、青山の「ルコント」、四谷の「オテル・ドゥ・ミクニ」、品川の「アロマクラシコ」、湯島の「ロワゾー・ド・リヨン」、三軒茶屋の「パティスリー・エ・カフェ・プレジール」で経験を積み、2013年に「Pâtisserie Yu Sasage」を開業。
    専門学校に入学したてのころは、「フランス菓子、ドイツ菓子と分類があることすら知らなかった」とか。しかし、修業した店の数だけ技術を身に着け、多くの知識を吸収してきました。「『ルコント』は、クラシックでありつつ新しさも兼ね備えています。フランス菓子作りの土台を作ってもらいました。『オテル・ドゥ・ミクニ』では革新的な菓子に触れて刺激を受け、クラシックイタリアンの『アロマクラシコ』はレストランという違う畑で、パティスリーの新たな感性を学びました」と言います。そうした経験と吸収力が、開業当初からの変わらぬ人気の土台なのでしょう。「お菓子作りを始めたころ、美味しいって何だろうと考え、記憶に残るものだと気づきました。それは作り手が意図的に作り出したものだと。食感、香りなど五感を刺激するものが記憶に残る……そう気づいてから菓子作りが発展したと思います」確かに捧さんが生み出す菓子には、五感に訴える驚きや新しさがあります。そうした感動を記憶してもらえる菓子作りを、今もなお心がけているそうです。
  • 基本情報


    店名 Pâtisserie Yu Sasage(パティスリー ユウ ササゲ)
    住所 東京都世田谷区南烏山6-28-13
    電話 03-5315-9090
    営業時間 10:00~18:00、土・日曜日10:00~17:00
    定休日

    火・水曜日 ※祝日の場合は翌日

    席数

    なし

    主な客層 地元住民、ファミリー層を中心に男女問わず幅広い世代
    予算の目安 2,000円程度
    開業 2013年5月6日
    HP https://www.facebook.
    com/PatisserieYuSasage/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。
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