石焼き芋の甘さの理由

9月から11月に旬を迎えるさつまいもは、食物繊維など栄養が豊富な上に甘みがあり、ごはん、おかずからスイーツまで様々な料理に使える人気の食材です。その調理法も様々ですが、蒸したり、レンジで温めたりしたものよりも、時間をかけてゆっくり加熱した焼きいもの方が、より強い甘みを感じるのはなぜなのでしょうか?
解説
さつまいもはでん粉含有量が高く、他のいも類に比べて糖分が多いことが特長です。さつまいもを石焼き芋機に入れて温度を上げていくと、加熱された小石が放射する遠赤外線によりさつまいもの表面付近に摩擦熱が生じ、熱がさつまいもの内部にゆっくり伝わります。さつまいも内部の水分温度が上昇し約60℃になると、さつまいものでん粉は水を吸収し膨れ形が崩れて糊化します。
糊化したでん粉が、さつまいもに含まれる糖化酵素(でん粉を糖に変える酵素)β-アミラーゼにより分解されることで麦芽糖が作られ甘みが増していきます。この酵素作用の適温は50~55℃ですが、さつまいもの温度が70℃くらいになるまで続くため、ゆっくり加熱することにより酵素の働く時間が長くなり甘い焼き芋が出来上がるのです。また加熱によりいも表面の水分が蒸発し、麦芽糖の濃度が増すことも甘みを強く感じる原因です。
一方で、電子レンジのような短時間加熱では内部の温度が急激に上がるので、酵素の失活が早く、でん粉の糖化度は低くなるため甘みをあまり感じないのです。
引き売りの焼きいも屋は一昔前の冬の風物詩でしたが、近年は電気式の自動焼き芋機が登場し、スーパーマーケット等で一年を通じて手軽に購入できるようになりました。品種も昔ながらのホクホクしたものばかりでなく、しっとり系やスイーツのような甘味が強くねっとりしたものなど幅広く楽しめるようになり、最近では専門店も続々登場しています。今年の秋は自分好みの焼き芋を見つけ、旬の味覚を堪能してみてはいかがでしょうか?

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参考文献
  1. 「調理学」 川端 晶子、畑 明美 著 株式会社 健帛社
  2. 「焼きいもが、好き!」 日本いも類研究会「焼きいも研究チーム」 株式会社 農文協プロダクション

豆知識

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