【お酒の話-Vol.4】みりんについて

和食の基礎調味料の1つである「みりん」は、和食の味を作るために欠かすことができません。醤油、みりん、清酒、出汁は和食の基本の調味料でこれらの合わせる比率を変えることで様々な味を作り出しています。特に「みりん」はめんつゆ、たれ、照り焼きなどに上品な甘味や厚みをつける大事な役割を持っています。

みりんの製法、組成
「みりん」は(図1)のように、蒸した米に米麹と焼酎(アルコール)を用いて仕込み、麹の持つ酵素の力でお米をゆっくりと糖化熟成させたお酒の一種です。

(図1)みりんの製造工程

  • 麹の糖化酵素によって、米の中のデンプンが糖化され、オリゴ糖やブドウ糖をなる他に米麹のタンパク分解酵素により各種のアミノ酸も生成されます。この製法によりエキス(糖度)は40度以上となります。また麹由来の香りと熟成によって醸成された香気成分が、みりん特有の風味を作り出しています。
  •   みりん
    アルコール分 v/v % 14.0
    全糖 w/v % 45.0
    還元糖 w/v % 40.0
    全窒素量 mg % 87.0
    滴定酸度 ml 0.5
    pH 5.6
    食塩分 w/v %

    (表1)みりんの組成(分析例)

みりんの効果
みりんは、米と米麹とアルコールを用いて仕込み、麹の糖化酵素により米を糖化し熟成させるものである。熟成中に米の中のでんぷんが糖化される他に、米麹のタンパク分解酵素により各種のアミノ酸も生成される。これら糖類及びアミノ酸の存在の結果、温和な上品な甘味をもち、種々の食品に用いて上質な甘味調味料としての効果のほか、テリ、色沢への影響、粘調性の付与などの効果がある。
みりんは、糖化熟成で生成された糖類やアミノ酸などの存在により、温和な上品な甘味をもち、種々の食品に用いて上質な甘味調味料として利用されています。みりんの調理効果は以下のようなものがあります。
  • 上品でまろやかな甘味を付与します
ぶどう糖やオリゴ糖といった多糖類が砂糖にはない上品でまろやかな甘味を付与します。
  • テリ・ツヤをつける
みりんに含まれるオリゴ糖などのさまざまな糖類は、水を保持しやすく性質を持っており、この糖類と結合した水分が調理した際に、テリやツヤを引き立てる効果を発揮します。
  • マスキング効果(嫌な臭いを消す)がある
みりんに含まれるアルコールが蒸散する際に食材の臭い成分も一緒に揮発させる効果があることや、有機酸と臭い成分の反応で臭みがなくなる効果、さらに麹や熟成でできる香気成分がいやな臭いを抑えます。
  • 煮崩れを防止する
みりんに含まれるアルコールと糖分は肉ずれ防止に役立ち、ジャガイモなどの煮崩れを防ぎます。
  • 味の浸透を良くする
アルコールの浸透力で味の染み込みをよくします。
  • コク、うま味を付与します
みりんの熟成段階で麹や米由来の成分からアミノ酸やペプチド、また有機酸など生成され、これらがさらに複雑な味わいを増加させ、料理にコク、うま味を付与します。
みりんの用途
これらの効果をもつ「みりん」は、和食の基礎調味料である、醤油、清酒、出汁などとの組合せいろいろな和食の味を作り出します。
業種 食品名 標準使用量
タレ・つゆ類 そばつゆ 10~20%(対醤油)
おでんつゆ 40~50%(対醤油)
てんつゆ 醤油と同量
焼肉のタレ 10~15%(対製品)
焼鳥のタレ 醤油と同量
蒲焼のタレ
照り焼のタレ
水産練製品 ちくわ、かまぼこ、揚げもの 3~4%(対魚肉)
漬物類 福神漬 3~4%(対調味液)
千枚漬
醤油漬 2~3%(対調味液)
べったら漬 3~4%(対粕漬大根)
佃煮 4~6%(対調味液)
米菓類 せんべい、あられ 2~3%(対醤油)
冷凍食品、惣菜類 ギョウザ、シュウマイ、ハンバーグ 5~8%(対挽き肉)

(表2)みりんの用途

みりんの歴史

みりんの起源ははっきりしませんが、戦国時代に中国から「蜜淋(ミイリン)」という甘い酒が伝わったという説や、「練酒」「白酒」に腐敗防止のため焼酎が加えられて本みりんになったという日本誕生説などがあります。
いずれにおいても焼酎の製造技術が伝来した戦国時代には既に作られてきたといわれています。

当時は甘味料が乏しいこともあり、甘い貴重な飲み物で多くの人に好まれていたと言われています。
また、みりんを作るときに出てくるみりん粕は、江戸時代には「こぼれ梅」と呼ばれる甘いお菓子として食べられていました。
みりんは上方で発展してきたお酒ですが、江戸時代後期には、江戸の米の集積地の一つである流山(現在、千葉県流山市)で醸造業を営んでいた第五代秋元三左衛門が関東でもみりんを作り始めました。

秋元三左衛門が開発した「白みりん」は、それまでの上方から来ていた褐色の濃いみりんと異なり、淡い色と淡白な風味で飲み物として多くの人に好まれ、江戸のお土産になるくらい人気の商品になっていました。
この時代は世の中が安定することで食文化も発展し、みりんも次第に調理の味づけに使われるようになり、タレ、つゆの味付けに、みりんは欠かせない調味料として活躍するようになってきました。

みりんは、その独特の上品でまろやかな甘味により、飲用より調理用として発達してきた日本独特の酒類調味料です。