「アッサンブラージュ・カキモト」シェフが作る ~「ファーマチューレMS-1」「黒糖パウダーYS」を使った"黒糖マドレーヌ"~

2011年に菓子職人の世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」氷彫刻部門で個人優勝。13年と18年にはチョコレート職人の世界大会「ワールド・チョコレート・マスターズ」で日本予選優勝、世界大会で総合4位に輝いた、世界的なショコラティエ、パティシエである垣本晃宏さん。

垣本シェフの真骨頂は、店名の「アッサンブラージュ(組み合わせ)」というフランス語に表されるとおり素材の組み合わせの妙。例えば、黒糖コーヒーガナッシュでは、セロリとパイナップル、山椒の芽と木の芽、マンゴーとショウガとタイムといった具合に、チョコレートのフレーバーとは考えにくい香味野菜、ハーブ、スパイスのエッセンスを折込み、新たな味覚の可能性を拓いていきます。

今回は垣本シェフに「ファーマチューレMS-1」「黒糖パウダーYS」の特徴を生かした黒糖マドレーヌを考案していただきました。

「ファーマチューレMS-1」の垣本晃宏シェフ評価

製菓全般に言えますが、おいしさを左右する要素が口溶け感です。思い描いた口溶け感を実現するために、無限にある素材の組み合わせや温度調節から試行錯誤しながら見出すわけです。これを補助してくれる素材も様々あり、用途に応じて組み合わせながら使いますが、「ファーマチューレMS-1」は少量で効果があるので使い勝手がいいですね。

「ファーマチューレMS-1」を使うメリット

  • パン類では対小麦粉で0.5〜2.0%、菓子類では対小麦粉1〜3%と少ない添加量でしっとり感、ソフト感を向上します。
  • 乳酸菌発酵由来のため、自然な形で品質を向上できます。また添加物表示の必要もありません。
  • 粉臭や好ましくない臭いをマスキングする効果もあり、また食塩等を含まないので菓子などの味に影響を与えません。

「黒糖パウダーYS」の垣本晃宏シェフ評価

粒子がとても細かくて、サラサラとしている。ふるいにかける必要もなく使えます。従来の黒糖は蜜分が多くて粘り気があるので使いづらい印象を持っていましたが、「黒糖パウダーYS」は手間なく均質に混ぜることができるので、幅広い用途に使えそうです。

僕がいちばん気に入った特徴は「甘くない」こと。砂糖特有の刺すような甘さがないんです。製菓もチョコレートも砂糖なしで作ることができないものですが、食べた後に残る砂糖の甘さがどうしても私は好きになれない。その点、「黒糖パウダーYS」は甘さが控えめなので、自分の理想の味を作りやすいと感じます。

一方で黒糖独特の酸味は、よりはっきりと感じられます。私の菓子やチョコレート作りでは酸味や苦みも大切な要素。この特徴を活かした味を表現したいですね。

「黒糖パウダーYS」を使うメリット

  • 粒子が細かいため、ふるわずに使用が可能です。
  • クリーム等に直接入れた場合もダマにならずにムラなく馴染みます。
  • 黒糖独自の香ばしさ、蜜香を保持。黒糖本来の風味を手間なく表現できます。
  • 味が濃いため、焼成しても風味が飛びません。

黒糖マドレーヌ

黒糖の強い風味を強調しながら食べ疲れない甘さに調整

食材(1個25g 約10個分)

作り方

バター45g
加糖卵黄30g
冷凍卵白45g
グラニュー糖  10g
トレハロース20g
黒糖パウダーYS 25g
薄力粉40g
ローストフラワー20g
ベーキングパウダー1.25g
ファーマチューレMS-11.2g
ラム酒5g
  
黒糖パウダーYS20g
5g

<作り方>

  1. 「黒糖パウダーYS」20gと水5gを合わせて一晩寝かせて蜜状にする。
  2. ボウルに常温の卵白にグラニュー糖、トレハロース、「黒糖パウダーYS」(25g)を入れ混ぜる。
  3. <2>に薄力粉、ローストフラワー、ベーキングパウダー、「ファーマチューレMS-1」をふるったものを加え、混ぜ合わせる。

    ※ここからの作業は混ぜすぎないよう注意する。
  4. <3>に<1>を加え混ぜる。
  5. 40℃ほどに溶かしたバターと常温の卵黄を加え混ぜ、ラム酒を加えてさらに混ぜる。
  6. 生地を2時間ほど冷蔵庫で寝かしたら、バターを塗った型に生地を1個あたり25gずつ絞り、180℃のコンベクションオーブンで8分ほど焼く。
    焼きあがったら型から外し、常温で冷ます。

  

料理紹介

「黒糖パウダーYS」をたっぷり使用し、蜜のような香ばしい風味が口の中にひろがるマドレーヌです。砂糖由来の甘さを抑えて、黒糖の香りや酸味が広がる大人のマドレーヌという印象。ローストしたナッツのような焼き色も独特ですが、歯応えや食感はソフトで軽く、後味もスッキリしています。黒糖使用というとクセの強い印象を持ちますが、黒糖独特の甘みが抑えられているため洋菓子らしい風味を保ったバランス感覚が絶妙です。

  

「ファーマチューレMS-1」「黒糖パウダーYS」の使用ポイント

「ファーマチューレMS-1」は軽やかな食感やまとまりを下支えしています。「黒糖パウダーYS」の香ばしさや酸味といった風味の複雑さにフォーカスするため、グラニュー糖、トレハロースと配合することで甘さのバランスを調整しています。

料理人の紹介

垣本晃宏(かきもと あきひろ)シェフ
1970年、京都府宇治生まれ。幼少の頃から料理に目覚め、高校卒業後は辻製菓専門学校へ。卒業後「京都ロイヤルホテル」「神戸菓子Sパトリー(閉店)」「アトリエ・アルション」のシェフパティシエを経て、2016年に「アッサンブラージュ・カキモト」をオープンして独立しました。

菓子職人ひと筋のように思われますが、パティシエの職に就く前は会社員を3年ほど務めたり、キャリアの途中で沖縄・西表島など各地を転々としながら料理人として働いていた時期もあるなど、型にはまらない一面も。こうした経験がパティシエ、ショコラティエ、キュイジニエの3つの顔という同店のコンセプト誕生に寄与したようです。

そんな放浪生活を経てパティシエとして戻った「アトリエ・アルション」で洋菓子コンクールの存在を知り、世界大会を目指すように。齢30歳を過ぎてからと遅まきのチャレンジでしたが、見事「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」優勝、「ワールド・チョコレート・マスターズ」で二度四位に輝き、パティシエそしてショコラティエとして世界から注目を集める。

趣味は海釣りで、自分で釣った魚をディナー料理の一品として提供することも。また近年は登山にも目覚めて3,000m級の峻峰にチャレンジするアウトドア派でもあります。

店の紹介

「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」「ワールド・チョコレート・マスターズ」に日本代表として出場経験を持つ垣本晃宏さんの、独立一号店として2016年にオープンしました。洋菓子とチョコレートのみならず、夜には垣本シェフみずから料理するディナー・コースを提供するというユニークなスタイルで、パティシエ視点から作る独創性の高いディナーも高く評価されています。

京都・寺町の一角に店を構える同店は、歴史ある古都に溶け込む京町家風情の設え。カウンター席のみ10席のレストランスペースの奥には自然光が差し込む坪庭が設けられ、茶室のような静謐感がただよいます。

店名の「アッサンブラージュ(組み合わせ)」というフランス語に表されるように素材の組み合わせの妙が、垣本シェフの真骨頂。例えば、ボンボンショコラでは、セロリとパイナップル、山椒の芽と木の芽、マンゴーとショウガとタイムといった具合に、チョコレートのフレーバーと考えにくい野菜、ハーブ、スパイスのエッセンスを折込み、新たな味覚の可能性を拓いていきます。

2019年にはコース仕立てでデザートを提供する完全予約制の「アッサンブラージュ・ハナレ」、2023年にはジェラートとパウンドケーキの専門店「アッサンブラージュ・プリュス」をオープン。どちらも垣本シェフならではの組み合わせの妙を楽しめます。

店名アッサンブラージュ・カキモト(ASSEMBLAGES KAKIMOTO)
住所京都府京都市中京区竹屋町通寺町西入ル松本町587-5
電話075-202-1351
営業時間月・木~日:12:00~17:00(Cafe) / 18:00~(Dinner) / 12:00~19:00(Store) 
定休日火曜日・水曜日
席数10席(カウンター席のみ)
主な客層20〜50代の男女
予算の目安昼:3,000~4,000円、夜:2万~3万円
開業2016年4月