東京・虎ノ門の虎ノ門ヒルズ内に店を構える「falò+(ピュウファロ)」は、炭火焼き料理と自家製の発酵調味料を二枚看板にする独創的なイタリア料理店。パン醤油やインゲン豆味噌など意外性の高い食材を使って発酵調味料を自家製。それらを用いた料理は独特な深みをもった味わいで、イタリア料理シーンに新しい風を起こしています。シェフの江口拓哉さんは、まるで科学の実験のように楽しみながらさまざまな発酵調味料造りに取り組んでいます。そんな江口シェフに、たまねぎを発酵させる新発想で生まれた新商品「オニフレッチ」と、「業務用 煮切り本みりん」を使った料理を考案していただきました。

「オニフレッチ」の江口拓哉シェフ評価
たまねぎ由来のうま味や風味の発酵調味液自体が珍しい。たまねぎ由来の爽やかな香りや甘味がある一方で独特のえぐ味や辛味はなく、風味づけ程度に添加するだけで料理全体のおいしさを底上げしてくれます。私自身発酵たまねぎを自家製したことがありますが、この品質を安定して使えることと料理を邪魔しないクリアな液色が良い。自家発酵では濁りをなくすことも、ちょうど良いところで発酵を止めるのも難しいですから。
風味づけとして食材の味わいが「伸びる」印象を与えます。加熱してアルコールを飛ばすと酸が出てきて、料理の塩カド・苦味・臭みをマスキングしてまろやかにしてくれます。
近年、世界的に「発酵食品」への関心が高まっていますし、多くの料理人がポジティブに受け止めてくれるのではと思います。
「オニフレッチ」を使うメリット
- たまねぎ由来のフレッシュな香りを付与。ドレッシングやディップペーストなどに爽やかな香味と甘味を与えます。
- 香味野菜や香辛料の風味を増強。じっくり煮込んだソースから漬けだれ、合わせ調味料の風味を高めます。
- 野菜の青臭さや、加工肉の畜肉臭、レトルト食品独特の蒸れた臭いなどをマスキングします。
- 清澄な液色で、非加熱でも加熱してアルコールを飛ばしても利用可能。多様な食材・調理法に活用できます。
「業務用 煮切り本みりん」の江口拓哉シェフ評価
最高の時短調味料ですね。飲食業界は人手不足が深刻ですから、少しでも効率化を進めたい。煮切り作業を省けるだけでも助かります。イタリア料理店でみりんを使う機会はあまりありませんが、主張が強くなくうま味を下支えしてくれます。今回は醤油をイタリアの魚醤であるコラトゥーラに替えて合わせてみましたがまったく違和感なくまとまりました。
「業務用 煮切り本みりん」を使うメリット
- 煮切り作業が省かれることで調理時間と作業負担の軽減、歩留まりアップによるコスト削減が実現します。
- 非加熱の料理にもすぐに使えるうえ、常に安定した品質が得られます。
漬けマグロ脳天の冷たいパスタ "山形のだし風"
臭みやすじ由来のえぐ味をマスキングし、淡泊なマグロ脳天のうま味やコクを補強

食材(分量5人前)
作り方
<漬けマグロ脳天> | |
---|---|
マグロ脳天 | 45g |
<漬けマグロのたれ> | |
業務用 煮切り本みりん | 80g |
オニフレッチ(非加熱) | 3g |
コラトゥーラ | 20g |
イナゾートマト | 20g |
塩 | 2g |
<ジェノベーゼ> | |
バジリコ | 500g |
にんにく | 25g |
エシャロット | 50g |
松の実 | 50g |
オリーブオイル | 500g |
塩 | 12g |
<だし風ソース> | |
オクラ | 160g |
ズッキーニ | 180g |
ナス | 200g |
山芋たたき | 200g |
みょうが | 80g |
生姜すりおろし | ひとかけ分 |
ケッパー | 80g |
アンチョビ | 50g |
塩 | 適量 |
オリーブオイル | 適量 |
A<冷やしボウル> | |
だし風ソース | 80g |
イナゾーファームのトマトジュース | 30g |
ジェノベーゼ | 10g |
パスタ(フェデリーニ) | 250g |
あさつき | 適量 |
オリーブオイル | 適量 |
<漬けマグロ脳天>
漬けマグロのたれの材料を合わせ、マグロ脳天を漬ける。
<ジェノベーゼ>
材料を全てミキサーに入れ、攪拌する。
<だし風ソース>
野菜の材料を1cm〜1.5cm角のダイス状にカットする。山芋は適当な大きさに切り、麺棒でざっくりたたく。
ナスはアク抜きのため水に一度さらす。オクラは切る前に塩で板ずりにして水で洗う。
ケッパー、アンチョビはみじん切りにする。
全ての材料のカットが済んだらボウルに入れて合わせる。
<作り方>
- フェデリーニを塩分濃度1.0%のお湯で柔らかめに茹でる。(ここでは8分)
ボウル2つとザルを1つ用意して、片方のボウルにパスタがしっかり冷やせるくらいの氷水を準備する。 - もう片方のボウルにAの材料を準備しておく。
- パスタが茹で上がったら氷水のボウルに入れて、しっかりと冷やす。その後ザルにあけて水気をしっかりと切る。
- Aのボウルにパスタを入れて、氷水をあてながらしっかりとあえる。
- パスタをお皿に盛り付け、小口切りにしたあさつきをたっぷりとかけたら、上から漬けマグロ脳天を盛り付ける。仕上げにオリーブオイルをかける。
料理紹介
コラトゥーラ、トマトジュース、「オニフレッチ」、「業務用 煮切り本みりん」を合わせた漬けだれで〝漬けマグロ〟をイタリア料理として再構築。独特な口溶け感ながらやや淡泊なマグロ脳天のうま味やコクを補強。またズッキーニやミョウガなど5種類の夏野菜を刻んでアンチョビやケッパーでイタリア料理風に仕立てた〝山形だし〟とジェノベーゼソースで和えたパスタとの相性も高めています。白い皿に盛り付けられた鮮やかな赤と緑の彩りはイタリア国旗を思わせる取り合わせ。食べるとパスタ麺よりも野菜の食感やマグロのうま味が強く満足度が高い。のど越し後味も爽やかで食べやすく、食欲が落ち気味な猛暑の栄養補給に最適です。
「オニフレッチ」の使用ポイント

「オニフレッチ」を漬けマグロのたれに使用することで、マグロ脳天の臭みやすじ由来のえぐ味をマスキングしています。またマグロ脳天はやや淡泊な味わいなので、「オニフレッチ」、「業務用 煮切り本みりん」、コラトゥーラ、トマトジュースと4つの異なるうま味成分を掛け合わせた漬けだれで味を底上げしました。たまねぎ由来の香味とうま味が加わったことでマグロの味に心地よい余韻が生まれました。「オニフレッチ」は添加量1〜2%を想定した商品ということですが、今回のタレでは8%を使っています。隠し味としてだけではなく、ソースの主成分としての使い方も可能性があると感じましたね。
料理人の紹介
江口拓哉(えぐち たくや) シェフ
1988年、東京都生まれ。高校時代にアルバイトで寿司店に勤めたとき「飲食店はたくさんのお客さまに喜んでもらえる職業」であることを実感し、料理人を志す。服部調理師学校を経て、当時白金台に店を構えていた「グラッポロ」(現在は銀座に移転)に就職。イタリア料理を選んだのは、イタリアのサッカーチーム「ユベントス」のファンだったことと、パスタやピザなど食べながら楽しく過ごせる料理だと感じたことが理由だそうです。その後、二子玉川の「イゾラ・トラットリア」で5年間腕を磨いた後に、新業態のシェフに就任するも自分の引き出しの少なさを痛感。改めて学び直すために代官山の炭火焼きイタリアン「falò(ファロ)」に入店。料理人が直接お客に料理を提供し、コミュニケーションがとれる営業スタイルも同店を志した理由だそうです。そして、2024年1月に姉妹店となる「falò+(ピュウ・ファロ)」のオープンにともなってシェフに就任しました。江口シェフは「お客さまの気持ちの温度が上がるような店にしていきたい」と自身の理想をめざして邁進しています。

店の紹介


東京・代官山の焚火イタリアン「falò(ファロ)」の姉妹店として、東京・虎ノ門の虎ノ門ヒルズ内にオープン。店名にプラスを意味する「+(ピュウ)」というイタリア語が付いている理由は、既存の焚火イタリアンというコンセプトに「発酵」という新たなテーマを付加したことを表しています。豚肉の熟鮓を塗って炭火焼きする「piufalò+のポルケッタ」、ピスタチオ味噌と和えた「マグロ脳天とピスタチオ味噌のタルタル」など、同店でしか味わえない発酵イタリアンが外食感度の高い客層の支持を得ています。
自家製の発酵食品は「白インゲン豆味噌」「豚肉の熟鮓」「パン醤油」「鹿肉の醤油」など、独創性の高いものばかり。床下に貯蔵スペースを設け、多種多様な発酵調味料が眠っています。発酵食品を自家製するには数週間から数ヶ月をかけて熟成させる必要があり、毎日のように攪拌の必要があるなど手間がかかりますが、江口シェフは日々熟成が進んで変化していく様子も発酵食品造りの醍醐味として楽しんでいるようです。最初から味や用途をイメージして造るものばかりではなく、試行錯誤の連続。お客さまは行くたびに想像を超えた発酵調味料の味に出会うことになり、それが大きな価値を生み出しています。発酵調味料造りの材料としてパンくずや肉などの端材を活用したものが多く、食べ物を無駄にしない姿勢もまた自家製発酵に込められた同店の想いでもあるそうです。
代官山の店と同様、炭火の焼き台を囲むようにカウンター席で構成されたフルオープンキッチンは、調理のライブ感を楽しみながら食事ができるのが魅力。フードはアラカルト中心の構成で、イタリア産のナチュラルワインのみで揃えたワインも常時5〜8種類をグラス提供。バルや居酒屋の感覚で利用できる気軽さも人気の理由です。
店名 | falò+(ピュウファロ) |
---|---|
住所 | 東京都港区虎ノ門2-6-3 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 4F |
電話 | 03-6268-8300 |
営業時間 | 平日:16:00~23:00(フード L.O. 21:30、ドリンク L.O. 22:00) 土:13:00~23:00(フード L.O. 21:30、ドリンク L.O. 22:00) 日祝:13:00~22:00(フード L.O. 21:00、ドリンク L.O. 21:30) |
定休日 | 火曜 |
席数 | 20席 |
主な客層 | 20〜50代の男女 |
予算の目安 | 1万~2万円 |
開業 | 2024年1月 |
「falò+(ピュウファロ)」シェフが作る ~「オニフレッチ」を使ったレシピ~
- 漬けマグロ脳天の冷たいパスタ "山形のだし風"
- ウツボの炭火焼き 茹でたてのつるむらさきと空心菜