【発酵種(パン種)の話-Vol.1】 パンと発酵種の起源と歴史

それは6000年前のエジプトからはじまりました
今日、私たちが食す様々なパンは小麦栽培発祥の地メソポタミアで生まれ、古代エジプトで偶然の発見から発酵パンが誕生し、長い歴史の中で進化しながら世界へと広がっていきました。中でも発酵種の培養やイースト菌の発見はパンづくりの歴史のキーポイントといえるでしょう。
  • 古代エジプトからヨーロッパへ、パン文化はパン酵母とともに発展しました
    パンの起源は人類最古の文明メソポタミアまでさかのぼるといわれます。紀元前4000年頃には、すでに平焼きパン(無発酵パン)がつくられていました。同じ頃、古代エジプトでも同様のパンがつくられていましたが、ある時、捏ねてあったパン生地がたまたま放置され、自然発酵によってふくらんでいたその生地を試しに焼いてみたところ、ふっくら香ばしいパンができた・・・・・これが発酵パンの誕生、まさに偶然の産物だったわけです。そう、発酵パンはエジプトからはじまったのです。発酵パンの技術は、やがて古代ギリシャへと伝わり、紀元前5世紀にはパン屋という職業が誕生。パンの商業化は、いつでも同じおいしさを提供しようと、発酵条件を一定にするために“発酵種”という酵母の培養技術を生み出しました。こうした技術とともに、パンづくりはやがてヨーロッパ全土へと広がり、各地の気候・風土に合わせて様々なパン文化が発展していったわけです。
  • 画期的なイースト製造法の完成によって安定した大量パン生産が可能に
    パンは、なぜ発酵してふくらむのか。その謎を解いたのが、顕微鏡を発明したオランダのレーウェンフックと、フランスの偉大な化学者パスツール。17世紀後半、フックによってイーストが発見されると、同時にその分離培養にも成功。そして19世紀中頃、パスツールが、イースト(酵母)が糖をアルコールと炭酸ガスに分解するという発酵の原理を理論的に解明すると、これをきっかけに酵母の研究は飛躍的に進みました。そして20世紀、第一次世界大戦により、大麦・ライ麦といった酵母製造の主原料が入手困難になると、ドイツの酵母製造業者たちは代用物による酵母づくりをはじめました。これが良質なイーストを効率よく大量生産するのに最適だったのです。こうしてイースト製造法の基礎が完成し、おいしいパンを安定的に大量に生産できるようになったのです。