いつもはベロメーターで味わっている食品を科学的に「分析」するとどうなるか?
各種分析機器などを用いて理化学分析を行うと、いつも感じている「味」の裏側がわかることがあります。本コーナーではそのような事例を紹介してまいります。
辛子明太子の味
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ごはんのお供の代表選手ともいえる辛子明太子は福岡のお土産の定番の一つです。明太子の味は、うま味、甘味、塩味、辛味のバランスによるところが大きいですが、それぞれの商品を味わってみると、見た目は同じようでも各社少しずつ味が異なります。しかしながら明太子の場合、辛味が強く正確な官能評価が難しいのも事実です。そこでこれらの味のバランスを見るため、それぞれの呈味の指標となる成分を分析しました。
今回は福岡空港で入手したお土産用明太子9品目(各社とも中辛タイプスタンダード品)について分析を行い調味の傾向を比較してみました。
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成分値から見る味の特徴
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入手したサンプルについて呈味成分を抽出し、うま味の指標としてグルタミン酸ナトリウム(=MSG)、甘味の指標として糖組成を分析から甘味度を算出(甘味度=グルコースを100とした甘味の強さの指標)、塩味の指標として食塩分、トウガラシの辛味の指標としてカプサイシン類(カプサイシン、ジヒドロカプサイシン)を測定しました。
(図1)に代表的な4品目の成分値の相対値についてレーダーチャートを示しました。同じ「中辛タイプ」にも関わらず、辛味の強度を始め調味の傾向が大きく異なっていることが示されています。例えば、商品AやCは辛味が弱く甘味が強いことから、かなりまろやかな味になっていることが予想されます。商品Dは全体的に呈味成分が多く、味が濃いことが予想されます。
(図1)代表的な明太子の成分値比較
(測定した全品目の平均値を1とした場合の相対値)
商品は全て中辛タイプですが、辛味成分(カプサイシン類)の含量が大きく異なることが分かります。
また、糖類や食塩、うま味調味料の使い方もそれぞれ異なり、商品ごとに味の傾向に特徴があることが示されています。
各商品のポジショニング
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各商品を特徴づけている3つの呈味を使ってマッピングしたのが(図2)です。横軸に甘味度、縦軸にMSG、プロットの色の濃さでカプサイシン類の濃度を示しました。
今回分析したサンプルの味のバランスはバラエティに富んでおり、それぞれが特徴的な調味になっていることが見て分かります。このように分析値を使うと辛味が強い食品など、官能評価で客観的な評価が難しい場合でも、数値で表すことができるようになります。
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(図2)明太子商品の甘味、うま味、辛味によるポジショニング
2009年データとの比較
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弊社では2009年度に同様のデータを取得しておりましたので、今回取得したデータと比較を行いました。2009年の平均値を1とした場合の変化を示したのが(図3)です。
2009年と比較し2015年の分析値は、甘味度についてはほとんど変化がありませんでしたが、MSGの含量が下がり、食塩分がやや増加、カプサイシン類が約1.3倍に増加していることが分かり、この6年間で、塩辛くて辛味が強くなっている傾向が確認できました。6年前と原材料表示が大きく変わっている商品もあり、嗜好の変化に応じて各社リニューアルを繰り返してきた結果と考えられます。
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(図3)2009年度調査との比較(2009年度=1とした場合の相対値)
2009年、2015年共にデータを取得した8品目の平均値で示しました。甘味度以外は平均値に変化があり、味のバランスが変わってきていることが分かりました。