【お酒の話-Vol.1】料理とお酒

料理にお酒というと飲み物と料理の相性がよく話題に出てきますが、実は飲み物としてだけでなく調味料としても広く利用されています。
和食には、みりんや清酒、洋食ではワインやブランデー、中国料理では老酒、お菓子ではラムやリキュールなどがそれぞれの料理の引き立て役として幅広く利用されています。

調味料としてのお酒
和食によく使用される調味料の「みりん」は、焼酎の製造技術が伝来した戦国時代には既に作られてきたといわれていますが、もともとは甘味飲料として楽しまれていました。その後、江戸時代になり、醤油と合わせタレやつゆなどの調味料として利用されるようになり、江戸時代の食文化の発展に伴って現代に続く和食の基礎調味料の一つになりました。
洋食ではワインがふんだんに用いられていますが、イタリア料理、フランス料理など宮廷料理が発展する中で煮込み料理やソース、漬け汁などに水代わりにワインが用いられ、調理の素材の一つにもなっています。
中国料理では、老酒で蒸したり、調味たれの風味づけをしたり、料理の仕上げに使うなど、中国料理の特徴的な香味づけに老酒が使用されています。
料理と酒類は、飲み合わせだけでなく、料理の味わいを左右する大事な調味料として古来より使われています。
料理に使うお酒の役割り
お酒には、料理の「味をよくする」「香りをよくする」「見た目や、食感をよくする」といった効果があることが知られていますが、それ以外にも「かくし味」として料理をぐっとおいしく仕上げ、引き立てる働きがあるのです。

(図1)調味料としてのお酒の役割り

酒類は、原料となる果実、穀類などを酵母で発酵させた「醸造酒」と、それを更に蒸留した「蒸留酒」、また、果実や草根木皮、糖類などと蒸留酒を混ぜた「混成酒」に分かれます。

(図2)酒類の分類

これらに共通する主な成分は、1.アルコール、2.糖類、3.有機酸、4.アミノ酸、5.酒類特有の香気成分などになります。それぞれの成分の調理効果は以下の通りです。

成分 主な効果
アルコール 味の浸透を促進、煮崩れ防止、肉質の軟化、保存性の向上
糖分 甘味やコクの付与、焼色を良くする、煮崩れ防止
有機酸 マスキング効果、肉質の軟化、塩味の緩和
アミノ酸 旨味付与、味質の向上、褐変反応の促進
香気成分 発酵による芳醇な香り、マスキング効果

(表1)酒類の主な成分と調理効果

料理における酒類の役割は、他の基礎調味料たとえば醤油、味噌などのような調味の方向付けをするというより、酒類が持つ発酵香気やアルコールや酸味などが、素材の臭みを抑え、料理全体の香味を整える脇役的な存在です。酒類は、料理の味わいを作る大事な要素でもありますが、自己主張しすぎない名脇役といえます。

次回以降、数回にわたって調理に良く使用される様々な酒類のお話とその調理効果などをご紹介していきたいと思います。