【物性の話-Vol.4】「カードラン」の基本的な性質

前回までで、食感改良剤の必要性と食感をとらえる方法を紹介してきました。今回は、食感を改良する弊社独自素材の「カードラン」をご紹介いたします。

カードランの発見から食品への利用までの歴史

  • 1966年に当時の大阪大学教授の原田篤也博士によって大学内の研究所の敷地の土の中から発見され、加熱すると固まる性質(curdle)からカードラン(Curdlan)と命名されました。
    日本では、1996年に既存添加物名簿に収載され、アメリカでも同年12月に米国食品医薬品局(FDA;Food and Drug Administration)において食品添加物として認可されています。
    また、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)では、第53回会合(1998年)及び第57回会合(2001年)の2回にわたり安全性評価が行われ、ADlはnot specifiedと設定されています。
    日本、アメリカ以外では、中国、ベトナム、タイ、韓国、台湾などで添加物として認可されています。
  • (図1)カードラン(Curdlan)は、
    直鎖状のβ-1,3グルカン

発見当初は豆腐の凝固剤としての用途検討を行っておりましたが、現在までに様々な用途に広がり、各種加工食品はもちろん、食品業界以外の用途でも採用されています。

(図2)カードランの食品への採用例

  • 麺類
    (中華麺、うどん、蕎麦、餃子の皮など)
  • 水産ねり製品
    (かまぼこ、ちくわ、揚げかまぼこ、カニ風味かまぼこなど)
  • 食肉加工品
    (ハム、ソーセージ、ベーコンなど)
  • 惣菜類
    (ハンバーグ、餃子、クリームコロッケなど)
  • 各種調味料
    (たれ、ドレッシング、ソースなど)
  • 菓子類
    (焼き菓子、ゼリーなど)
  • イミテーション食品
    (あわび風、イカ風食品、糸こんにゃく様食品など)
  • ミートレス食品
    (素食、ベジタリアン食など)
  • その他
    (工業用途、化粧品分野など)

カードランの性質

カードランは、カラギーナンや寒天、ジェランガムなどの多糖類の仲間です。ほとんどの多糖類は加熱すると溶解し、冷却するとゲル化しますが、カードランはユニークな性質があるのでここで紹介します。

<膨潤性>
カードランは、加熱するとでん粉のように吸水して膨潤する性質をもっており、50℃~60℃になると膨潤は最大に達し、100倍程度の水を保持し、粘度は急激に増加します。更に加熱すると、80℃でゲル化します。

(図3)カードランの性質と食品への添加効果~膨潤からゲル化~
(図4)加熱による吸水性(膨潤性)の比較
カードランは55℃~65℃付近で膨潤、吸水する特長的な増粘剤で、これにより、歩留まり向上効果、食感改良効果などを発揮します。
 

次回は、カードランゲルの特長についてご紹介します。