【減塩でもおいしく-Vol.5】「減塩食品」に対する消費者の意識 ~2020年度調査結果~

ここ数年スーパー等でも良く目にするようになり、最近ではオンライン専門店も登場している減塩食品。その市場規模は約723憶円(2020年予測)1とも言われ、さらに拡大を続けています。今回は今春実施した消費者アンケートの結果から今後求められる減塩食品について考察します。

食塩の摂取基準は1日当たり男性7.5g、女性6.5gに
食塩相当量表示、猶予期間終了完全義務化へ

  • 厚生労働省が先般まとめた「日本人の食事摂取基準2020年版」では1日当たりの食塩摂取量目標量は男性が8gから7.5g、女性が7gから6.5gに引き下げられました。しかし実際の食塩摂取量は最新データ(図1)でもまだ平均で10.1gと、男女ともにどの世代も基準値を超えており、これまで以上に個人や加工食品メーカー、外食店が取り組んでいかなければ達成できない数値になっています。また2020年3月で食品表示法完全施行の猶予期間が終わり、今後加工食品においては「ナトリウム」量ではなく、より分かりやすい「食塩相当量」の表記が必須となり、今後消費者の塩分摂取への意識が高まることが予想されます。
    そのような背景の中、消費者が「減塩」に対してどのような意識を持っているのか、当社で今春実施したインターネットアンケート結果を基に様々な角度から消費者意識を見ていきたいと思います。(日本全国の20代~50代以上の男女それぞれ52名ずつの計416名より回答)
  • (図1)日本人の食塩摂取量の経年変化
    出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査(H29、30年)」
           

減塩食品の購入経験は66%  依然高い割合続く

  • 購入経験についての設問(図2)では、2013年の調査では「減塩食品を購入したことがある」と回答した人は全体の49%でしたが、2015年には71%と全ての世代で大幅に伸びています。その後横ばい状態となり、今回調査では66%と昨年に比べ若干減少したものの、依然高い割合が続いています。年代別では50代以上が最も高い結果になったものの、20代30代の若年層含め全ての世代で60%以上と、減塩食品が世代を問わず広く浸透してきている事が分かります。
  • (図2)減塩食品の購入経験のある人の割合
    (各世代N=104)

カテゴリー別(図3)では、醤油や即席スープ、味噌汁といった定番カテゴリーに加え、めんつゆ、即席麺や、スナック菓子、ドレッシング、マヨネーズなど定番カテゴリー以外の購入経験も2014年に比べ伸長が見られます。健康や病気を未然に防ぐ食生活に関心を寄せる消費者が増えていることを背景に、メーカー各社様々なジャンルに相次いで参入し、アイテム数が増加したため手に取りやすい環境になっていることが要因のようです。
また購入経験が43%と最も多い醤油では、同じ商品のリピート率は66%と昨年調査に比べ10ポイント上昇し、消費者の満足度が高まっていることが伺えます。今年は塩分66%カットの減塩醤油が登場し注目を集めるなど、開発が加速している減塩醤油市場は更なる拡大が続いています。

(図3)購入したことのある減塩食品カテゴリー

リピート購入している商品がある人は75%、味・品質の満足度上昇

減塩食品の購入経験がある人の中で、リピート購入したことがある人は約75%(図4)で、昨年度調査とほぼ同割合でした。またリピート購入の理由として「味や品質に満足している」と回答した人が66%と昨年度調査よりも8ポイント増加しています。メーカー各社減塩でも美味しさを維持する工夫を凝らした商品の開発に力を入れており減塩食品の味のレベルが年々高くなっている事が伺えます。

購入した減塩製品の満足度についての質問でも(図5)他の世代と比べ最も購入経験率が高い50代以上では、購入経験者のうちいずれかの減塩食品に満足している人の割合が、約9割と高い結果になりました。一方で50代以上の購入経験者のうち依然満足する製品に出会っていない人が約1割いることが分かります。購入経験率が最も低い40代においては「満足したものはない」と回答した人は購入経験者のうち約2割と、減塩食品の満足度は以前に比べ上昇しているものの十分とは言えず、更なる改良の余地があることが伺えます。

 

(図4)減塩食品のリピート購入状況
(図5)減塩食品の満足度(各世代N=104)

外食、コンビニ弁当・惣菜、加工食品の味付けについて6割以上の人が濃いと感じている

自分で作る食事以外の食品の味付け(塩分)についての質問(図6)では、外食、コンビニ惣菜、加工食品について「濃い」または「やや濃い」と感じている人が約6割と高い結果になりました。性別(図7)では外食を「濃い」または「やや濃い」と感じている男性は49%なのに対し女性は69%、加工食品については男性55%、女性73%と性別で大きく差があり、女性の方が全体的に食品の味付けを濃いと感じていることが分かりました。性別における塩味の感じ方の違いにいかに対応しリピートにつなげるか、外食店やCVS、加工食品メーカーの今後の課題かもしれません。

「塩分が気になる加工食品」についての設問では、即席麺やスナック菓子を挙げる人が多く、以前高かった醤油は減塩醤油との使い分けが浸透してきている為か大幅にダウンしています。「塩分が気になるコンビニ食品」ではラーメン、弁当を挙げる人が6割以上と高く、これらは更なる減塩商品の開発が求められる分野と言えます。
食の健康志向が高まりを見せる近年、消費者が薄味を好む傾向は強まっており、「減塩」を謳う製品群のみならず定番品や通常メニューでも減塩の取り組みが必要となってくることが予想されます。

(図6)各種食品の味付けについて(N=416)
(図7)各種食品の味付けについて(性別)
参考文献
  1. 「ウエルネス食品市場の将来展望2019」 富士経済社