1984年創業の老舗洋風居酒屋「元酒屋」は、クラシックな洋食料理と、先代オーナーの実家である「山梨銘醸」のブランド酒「七賢」を看板商品とするユニークなお店です。二代目オーナーシェフの鈴木江平さんは、同店で料理人のキャリアを積んだベテランで、手作りならではのおいしさを追究しています。そんな鈴木シェフに、うま味調味料のロングセラーである「いの一番」の活用方法について考えていただきました。

「いの一番」の鈴木江平シェフ評価
私の若い頃は「うま味調味料を使うなんて努力が足りない」って言われる時代でした。諸先輩がたにとっては自分たちが長年培ってきた味を、あっという間に実現させてしまううま味調味料の登場に戸惑っていたのかもしれません。
あれから30年以上経って、いまや醤油や味噌と同じように当たり前にうま味調味料が使われる時代になったと感じます。
料理人の先輩が、ある店のデミグラスソースに感動して、その店の主人に作り方を見せてもらったら、仕込みの最後に大量のうま味調味料を入れていた。それを見て意識が変わったと聞いたことがあります。
「いの一番」を加えるだけで味のバランスが一気に調う。野菜や魚介など毎日のように使う食材も、見た目は同じでも季節や天候によって味も水分も異なり、これが味ブレの要因になってしまう。こうしたブレを補完してくれます。
また近年は減塩ブームですが、塩を減らすとどうしても味が薄くなる。塩を減らした分を「いの一番」で代替すれば満足度の高い減塩メニューにもなりますよね。
自分は昔気質な料理人なので「まだまだうま味調味料に負けないぞ!」という気持ちでいます。ただ、一部の料理では〝ここはもうひと味足したい〟という時に役立つ使い方ができるのではとも考えています。
「いの一番」を使うメリット
- 素材や出汁のうま味を増強。味の輪郭をはっきりさせます。
- 漬けダレと食材の味なじみを向上。厚切りの食材でも短時間でタレの味が浸透します。
- 産地や気候でバラつく食材の風味やうま味をバランス良く調えます。
- 冷凍食材のコクとうま味を高め、ふっくらとした食感に仕上げます。
- 食材の臭みやクセをやわらげ、うま味を引き立てます。
タコのカルパッチョ
解凍時に滲出してしまう味の底上げに活用

食材
作り方
タコ(薄切り) | 15枚程度 |
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いの一番 | 適量 |
ケイパー | 4・5粒 |
アンチョビ | 1本 |
エキストラバージンオリーブオイル | 適量 |
トマト | 2スライス |
黒こしょう | 適量 |
パセリのみじん切り | 適量 |
<ドレッシング> (店舗で通常使用しているもの) | |
ワインヴィネガー | 100cc |
ピュアオリーブオイル | 200cc |
塩こしょう | 適量 |
ガーリックパウダー | 適量 |
<作り方>
1.冷凍のボイルタコを半解凍状態で薄くスライスし、お皿に並べる。
2.「いの一番」を適量振りかけ、なじませておく。
3.ケイパー・アンチョビはみじん切り、トマトのスライスはコンカッセし、エキストラバージンオリーブオイル、黒こしょうと合わせる。
4.「1」に<ドレッシング>をかけ、「3」をのせ、パセリのみじん切りを振りかける。
料理紹介
ボイルされたタコなど「1回分ずつ切り分けて冷凍保存」しておく食材では、解凍時に水分とともにうま味もドリップとして出てしまうことが難点。それを「いの一番」で補っています。その上に回しかけるエキストラバージンオリーブオイル、自家製ドレッシングとの味馴染みもいっそう向上します。
「いの一番」の使用ポイント

半解凍したタコをスライスし、キッチンペーパーで水気を拭き取ったところで「いの一番」を適量振りかけます。これにより、解凍時に水分とともに滲出してしまったうま味を補完します。
料理人の紹介
鈴木江平(すずき こうへい)シェフ
2020年にオーナーの北原啓次さんが高齢で引退することになり、鈴木シェフがお店を継承しました。
鈴木シェフは調理師学校卒業後に和食店を経て「元酒屋」へアルバイトで入社。その後、社員として10年ほど在籍した後に、先輩料理人の独立にともなって店を移りました。以降、いくつかの洋食店や洋風居酒屋で料理長を務めていたところ、北原元オーナーから声がかかり、お店を継ぐことを決心しました。
ビーフシチューなどのデミグラスソースやカニクリームコロッケのベシャメルソース、サラダなどに使用するドレッシングなども手作りにこだわり、時間をかけて品質を追求しています。

店の紹介


ユニークな店名の由来は、創業者の生家が山梨・白州で創業250年超の歴史をもち、銘酒「七賢」を醸す酒蔵「山梨銘醸」だったことから。長兄が家業を継ぎ、弟の北原啓次さんは上京して1984年に同店を開業しました。酒蔵出身の創業者のレストランということで「元酒屋」という店名になったわけです。
同店は老舗洋食店「小川軒」仕込みの洋食メニューと日本酒のマリアージュを提案する、当時では画期的なスタイルの洋食店として注目されました。アルコールのメインはもちろん、実家の蔵元から直送される「七賢」。少量生産の吟醸酒やシャンパンの製法を採り入れた発泡日本酒など、市販では入手しづらいアイテムを多数ラインアップ。しかも小売価格+500円と破格のお値打ち価格で楽しめます。
フードメニューは65品前後。ビーフシチュー税込み1,900円やカニクリームコロッケ同1,200円など洋食定番料理は、調理技術の確かさを実感。冷菜・温菜のメニューも豊富で気軽な居酒屋利用しやすい商品構成となっています。
昭和時代にタイムスリップしたかのような風情を感じさせる内装も特徴です。オールド昭和なポスターや看板が壁中に飾られる様子は、映画「三丁目の夕日」や「男はつらいよ」のノスタルジックな世界観を感じさせます。
店名 | 元酒屋 |
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住所 | 東京都中央区銀座8-5-24 西八ビル2階 |
電話 | 03-3572-6240 |
営業時間 | 月~土 11:30~13:15、17:00~22:00 |
定休日 | 日曜日・祝日・第3土曜日 |
席数 | 25席 |
主な客層 | 20〜50代の男女 |
予算の目安 | 2,000~5,000円 |
開業 | 1984年 |