【減塩でもおいしく-Vol.1】 「減塩」をとりまく環境

日本人は食塩を摂りすぎ?!高血圧を中心とした様々な疾病の予防の観点から、減塩の必要性について耳にする機会が多くなっていますが、味噌や醤油を多用する日本の食文化においてはハードルが高く、なかなか食塩摂取量が減っていっていないのが現状です。本シリーズでは「減塩」をテーマに、最近のマーケットの状況や減塩のための技術、減塩レシピのご提案などを綴ってまいります。

日本人の食塩摂取量は1日10.4g

  • 2013年度の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると日本人の食塩摂取量は1日あたり平均10.4g (男性11.3g、女性9.6g)でした。年々減少傾向にはありますが、ここ1年はほぼ横ばいでした。先般、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2015年版」が打ち出され、食塩摂取量の上限目標が男性9g~8g、女性7.5g~7gと現行からさらに厳しくなる見込みです2。とはいうものの、国際的には世界保健機関(WHO)で1日当たり5g未満を推奨していることなどと比較すると、日本の基準値はまだまだ高いといえます。
    減塩の必要性については国のほか、自治体や日本高血圧学会を中心とした医学界で積極的に啓発活動に取り組んでいます。最近では日本高血圧学会減塩委員会で「減塩加工食品リスト」の作成を始めるなど3 、「減塩」を求める風潮はますます強くなっていくものと予想されます。
  • (図1)日本人の食塩摂取量の経年変化1
    出典:厚生労働省 平成24年国民健康・栄養調査

そもそも日本人はなぜ塩分摂取が多い?

日本人の塩分摂取量が多い理由の一つとして、日本独特の食文化が挙げられます。和食では調理の際に「醤油」「味噌」など塩分の多い調味料を多用したり、塩漬けや塩辛のような食塩を使った加工食品が多いという特徴があります3,4。欧米諸国と比較して自分でかける量を減らしたりして調整できる塩分の量が少ないため、先日の基準値を達成するためには外食店や食品メーカーに期待されるところは大きいと言えます。

減塩加工食品市場は過去5年で1.5倍に

  • 過去5年の「減塩」もしくは「塩分控えめ」を謳った商品のPOSデータの推移を見ると、2010年以降急成長を遂げ、2013年度には2009年度の1.5倍の販売金額となっています6。品目数も着実に増加しており、従来からある「味噌」「醤油」「佃煮」「味噌汁」が堅調に推移している他、「つゆ」「漬物」「水産加工品」「ハム・ソーセージ類」「ソース」「スナック菓子」「ふりかけ」等幅広いジャンルで「減塩」を謳った商品が登場し、アイテム数を増やしています6。アイテムの増大により消費者が手に取りやすい環境になってきており、今後ますます市場が伸長することが予想されます。
  • (図2)減塩を謳った商品の販売金額の伸び
    2009年を100とした相対値
    出典:KSP-POS 品名に「減塩」「塩分控えめ」が含まれる商品
参考文献
  1. 厚生労働省 「平成24年度 国民健康・栄養調査」
  2. 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準2015年版の概要」
  3. 日本高血圧学会 減塩委員会 ホームページ
  4. 循環器内科、61(3)、(2007)
  5. Cheryl A.M.Anderson,et al.,J.Am.Diet.Assoc.,110(5),736-745 (2010)
  6. KSP-POSデータ