【分析データから見た食品-Vol.2】 レストランのスープのおいしさ

いつもはベロメーターで味わっている食品を科学的に「分析」するとどうなるか?
各種分析機器などを用いて理化学分析を行うと、いつも感じている「味」の裏側がわかることがあります。本コーナーではそのような事例を紹介してまいります。

コーンポタージュいろいろ

  • 以前は洋食店のコースメニューの一部でしかなかった「スープ」ですが、最近では専門店やデパートの惣菜売り場などでも買えるようになり、種類もどんどん増えています。そうはいっても人気の味はやはり定番のクリーム系で(図1)、中でもコーンポタージュスープといえば定番中の定番です。
    一言でコーンポタージュスープといってもレストランで出てくるものから市販加工食品まで様々なものがあります。そこで有名レストランが販売しているコーンポタージュスープと市販の加工食品のインスタントスープの分析値を比較してみました。有名レストランのスープのおいしさは果たしてどこからやってくるのでしょうか。
  • (図1)好きなスープの味付け
    一番人気はやはり定番のクリーム系
総アミノ酸組成の違いから分かること
「総アミノ酸」は食品中のタンパク質をバラバラに分解してアミノ酸含量を測定する方法です。総アミノ酸を分析すると食品中のタンパク質を構成するアミノ酸組成が分かります。食品成分表などを見ると、食品によって個々のアミノ酸の含量比が違います。この性質を利用して、総アミノ酸の組成から使われている原材料の特徴を把握することを試みました。

総アミノ酸組成から見る特徴

図2上図に有名レストランのスープと加工食品のインスタントスープのアミノ酸組成の違いを示しました。グルタミン酸(Glu)やロイシン(Leu)、リシン(Lys)、プロリン(Pro)が多いという特徴は共通していましたが、少しずつ組成比が異なっているのがわかります。特に有名レストランのスープではバリン(Val)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)の含量比が高くなっています。下図にコーンポタージュスープの主な原材料のアミノ酸組成を示しました。生クリームなどの乳製品ではバリンやリシンの組成比が高く、タマネギはアルギニンの組成比が高いことがわかります。スープと原材料のアミノ酸組成を比較すると、有名レストランのスープは乳製品やタマネギを多く使っていることが予想されます。

(図2)コーンポタージュスープと原材料の総アミノ酸の組成比

※ 上図:弊社分析値、下図食品成分表2010の数値を基に算出
  • 次に図2上図の総アミノ酸組成比中ではかなり微量なのですが、ヒドロキシプロリン(Hypro)の含量に着目してみます。図3に示しましたとおり、有名レストランのスープからはヒドロキシプロリンが検出されていますが、加工食品のインスタントスープからは検出されませんでした。ヒドロキシプロリンはコラーゲン(ゼラチン)を構成するアミノ酸の一種で、一般的なタンパク質には含まれていません。ヒドロキシプロリンが検出されたということは、ゼラチン質を多く含む原料を使っていることが予想されます。ゼラチン質は動物の骨、筋や皮などに多く含まれていますから、鶏がらや牛すね肉などを炊き出したブイヨンがふんだんに使われ、スープの味のベースとなっているものと考えられます。

    総アミノ酸の分析結果からは、有名レストランのコーンポタージュスープはブイヨンをベースとして、生クリームなどの乳製品やタマネギをふんだんに使い、バランスよく仕上げていることが分かりました。

    このように、理化学分析によって製品をマッピングしたり、原料の特徴を明らかにしたりすることが可能になります。より詳しくお知りになりたい方はお近くの弊社営業担当者までお問い合わせください。

  • (図3)コーンポタージュスープ中のヒドロキシプロリンの含量(総アミノ酸)
    (弊社分析値)