いつもはベロメーターで味わっている食品を科学的に「分析」するとどうなるか?
各種分析機器などを用いて理化学分析を行うと、いつも感じている「味」の裏側がわかることがあります。本コーナーではそのような事例を紹介してまいります。
プロファイル | |
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店舗A | 味が濃く、醤油と砂糖で煮込んだ風味が強い。 |
店舗B | 醤油感、塩味とだし感が強い。甘味も強くまろやか。 |
店舗C | だし感あり、甘味や塩味、醤油感のバランスのとれた味。 |
店舗D | 塩味とうま味が強く、練り物の味と香りが特徴的。 |
店舗E | 薄味ではあるが、かつおとこんぶのだし感がある。 |
自由記述式による官能評価
N=7
(図2)に、乳酸量と甘味度を指標として、醤油量と甘味の強さでマッピングした図を示しました。店舗Aおよび店舗Bは乳酸量と甘味度が高いことから、醤油と砂糖を多く使用した味が濃い関東風であることがわかります。一方で店舗Dおよび店舗Eは、醤油と砂糖の使用量が少ないことがわかり、官能評価により示された味の特徴が、分析値を用いることで客観的に示されています。
次に、乳酸量とヒスチジン量を指標として、醤油とかつおぶしの量でマッピングした図を(図3)に示しました。官能的にもだし感、醤油風味のバランスが良かった店舗Cは、ヒスチジン含量が高く、乳酸量も多いことから、だしと醤油の味が特徴的であることがわかります。また、店舗Eは乳酸含量は少ないものの、ヒスチジン含量が比較的高いことから、醤油の使用量が少なく、だしの使用量が多い、典型的な関西風の味であるといえます。また、関東風である店舗Aおよび店舗Bもヒスチジンが検出されていることから、醤油味と砂糖の甘さだけではなく、ベースにはかつおだしを効かせた味付けであることがわかりました。
このように、だしを使用した味の組み立て方など、官能評価では明らかにすることが難しい場合も、理化学分析を用いることで数値として示すことが可能になります。
(図2)醤油と甘味のバランス(乳酸と甘味度)
(図3)醤油とだしのバランス(乳酸とヒスチジン)