D-アミノ酸のお話し、第5回目です。今回で最終回となります。Vol.4では、D-アミノ酸を活用した調味料として「味まとめDJ」の紹介と、その食品への添加効果について紹介しましたが、今回はD-アミノ酸を弊社の代表的な調味料シリーズである「こく味調味料」に活用した例をご紹介したいと思います。
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D-アミノ酸を含む「こく味調味料PD-400」と「こく味調味料MD-400」
- これまで紹介したように、D-アミノ酸には食品の味に悪い印象をあたえる、いわゆる「カド」を低減する効果があることがわかっています。この効果を我々が長年ご提案してきている「こく味調味料」に応用したのが、「こく味調味料PD-400」と「こく味調味料MD-400」の2つのタイプのこく味調味料です。「こく味調味料PD-400」は調理したのちに寝かした食品の「こく」を、「こく味調味料MD-400」は長期間熟成した食品の「こく」を再現した調味料です。
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「こく」に寄与する成分の研究
- 三菱商事ライフサイエンスでは、食品の「こく」に寄与する成分の研究と素材の開発に長年取り組んできました。一言に「こく」といっても、色々な種類の味の特長が組み合わさってできていることがわかってきています。(図1)は「こく」を形成する成分をまとめたものです。食品を調理した時に得られる「ピラジン類」、食品を熟成(発酵)することによって得られる「ペプタイド」や「メイラードペプタイド」に加え、「D-アミノ酸」のまろやかさに寄与する機能を組み合わせることにより、より幅の広い「こく」を提案することができるようになったのです。
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(図1)「こく」を形成する成分
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「こく味調味料PD-400」と「こく味調味料MD-400」の特長
- 「こく味調味料PD-400」は調理によって得られる「ピラジン類」と「D-アミノ酸」を組み合わせることにより、厚みとまろやかさの付与効果を兼ね備えた調味料になっており、主にカレーなどの煮込み料理に相性がよくなっています。一方「こく味調味料MD-400」は比較的長期の熟成によって得られる「メイラードペプタイド」と「D-アミノ酸」を組み合わせることにより、持続性のある複雑な味とまろやかさを付与する効果を兼ね備えた調味料になっており、たれ・つゆやチーズや味噌のような熟成製品を使った食品と相性がよくなっています(図2)。
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(図2)「こく味調味料」の特長と相性のまとめ
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2つの「こく味調味料」の効果
- 最後にD-アミノ酸の効果を活用した2つのこく味調味料の添加効果を示します。(図3-1)のグラフは、カレーに「こく味調味料PD-400」を0.3%加えた時の効果を示したものです。カレーの味をまろやかにし厚みを特に増す効果があることが認められました。(図3-2)のグラフは、そばつゆに「こく味調味料MD-400」を0.2%加えた時の効果を示したものです。そばつゆの「かど」をとりまろやかにするとともに、持続性を特に高める効果が認められました。
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(図3-1)カレーへの「こく味調味料PD-400」の添加効果
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(図3-2)そばつゆへの「こく味調味料MD-400」の添加効果
- 以上のように2つのタイプのこく味調味料を使い分けることにより、まろやかさに加えて厚みや持続性をコントロールすることができるのです。
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以上、5回にわたって、「D-アミノ酸」のお話しをさせていただきました。これでD-アミノ酸のお話しは「完」となります。機会がありましたらぜひD-アミノ酸の効果を体感していただければと思います。それではコラムの次回シリーズをお楽しみに。