【物性の話-Vol.5】「カードランゲル」の特長

前回はカードランが食品用途として利用されるまでの歴史や、主な性質などをご紹介しました。ここからは、カードランゲルの特長について詳しくご紹介します。

カードランゲルについて
カードランのゲルには、分散液を加熱して得られる「加熱ゲル」、アルカリに溶解し、中和して得られる「中和ゲル」、アルカリ液にCaイオン、Mgイオンなどを添加して得られる「架橋ゲル」があります。それぞれの特長を以下に紹介します。
(図1)カードランゲルの特長~ゲルの種類~
加熱ゲルについて
特長
カードランのゲルは、加熱方法の違いで2種類の異なる性質のゲルを形成します。
1つ目は、寒天やゼラチンのような温度変化によって溶解する熱可逆性のゲルで、ローセットゲルと呼ばれ、カードランの水分散液を55℃から65℃に加熱して常温以下に冷却したときに形成されます。ゲルは柔らかく、歯切れの良い食感が特長です。
2つ目は、レトルトのような高温や冷凍などの厳しい温度条件に耐える熱不可逆性のゲルで、ハイセットゲルと呼ばれ、カードランの水分散液を80℃以上に加熱したときに形成され、再加熱(130℃まで)しても溶けません。ゲルは、硬く、弾力があり粘りのある食感が特長です。また、冷凍・解凍しても、離水はしますが、ゲルの組織は保持され、物性はほとんど変化しません(図2)。ハイセットゲルはレトルト耐性や冷凍耐性があるので、カードランを用いて調製した食品はレトルト処理や冷凍保存による悪影響を受けにくいです。(例:冷凍加工豆腐、レトルト用豆腐など。)また、ローセットゲルから加熱を続けるとハイセットゲルになります。
(図2)カードランの粘度の上昇・ゲル化と温度との関係
熱安定性・冷凍耐性
上記のように80℃以上に加熱して得られたゲルは、加熱しても溶解しません。更に、冷凍解凍後のゲル強度はほとんど変わらず、他のゲル化剤と比較して冷凍解凍耐性に優れています。
(図3)カードランの冷凍解凍耐性
pH
pH2-10の広範囲でゲルを形成し、特にpH3-4でゲル強度が高くなる。また、中性付近でゲルを調製し、種々のpHに浸漬すると、比較的短期間の内にゲル中のpHも浸漬液のpHと同じになり、この場合ゲル強度に影響が無い。この現象は、pHばかりではなく、調味液に浸漬しても起こり、カードランゲルへの味付け、フレーバー付けの際にメリットとなります。
(図4)カードランのゲル強度
中和ゲルについて
カードランのアルカリ溶液を中和するとできる。性質は、熱可逆性を示すが、80℃以上になるとハイセットゲルに遷移します。
架橋ゲルについて
カードランのアルカリ溶解液にCaイオンやMaイオンを添加すると架橋構造を持つゲルができる。このゲルは熱可逆性で加熱しても熱不可逆性のハイセットゲルに遷移しません。

次回は、カードランの使い方についてご紹介します。