【ピッツァ】ピッツェリア ティンタレッラ 

(千葉県/柏市)

店主の遠藤秀雄さんはピッツァ職人歴18年。2022年にナポリピッツァ職人世界大会(通称「カプート杯」)の日本大会で優勝した腕前を持つ実力派です。イタリアに本部を置く「真のナポリピッツァ協会」認定店であるとともに、2022年12月には日本で初めて「ピッツァフリッタ(揚げピッツァ)」の認定を同協会から授与されました。今回は本場イタリアにも認められた「ピッツァフリッタ」メニューの中から、店名を冠した看板商品「ティンタレッラ」についてお話しを伺いました。

クローズアップメニュー

ティンタレッラ N(Normale)3,630円、B(Battilocchio)2,910円(税込)

ピッツァフリッタ(揚げピッツァ)とは、具材を盛り付けたピッツァ生地を折りたたみ、油で揚げたピッツァのこと。こんがりとキツネ色に揚げられたピッツァ生地は、最初はカリッとした軽やかな歯ざわりで、その後にふっくらモチモチの食感へ。窯焼きのピッツァとは異なる魅力を放ちます。
中はクリーミーなリコッタチーズと燻製させた香ばしさが特徴のプロヴォラチーズの組み合わせ。特徴の異なる2つの味わいが交互に現れてくる感覚は、食事の楽しさを演出しています。
ピッツァフリッタは紙で巻いてハンディに食べ歩きするなど副菜なしで提供されることが一般的。同店では生ハムをピッツァに纏わせるように巻き付け、たっぷりのルッコラセルバチコとフルーツトマトを贅沢に盛り付けて、看板商品にふさわしい艶やかな一皿に仕上げています。

技のポイント1

練りの段階でグルテンをピークまで出すのが遠藤スタイル

小麦粉はイタリア・カプート社の「サッコ・ブルー」を使用。
1回の生地作りで小麦粉は約5kg、水は約3ℓ、生イーストは約3g、塩は約150gが目安の分量。湿度が多い日は粉を多め、乾燥している日は粉を少なくして、毎日同じ焼きあがりになるよう調整しています。また塩分も気候と人の体調変化も加味した微調整を日々行っています。
専用のミキサーで20分前後捏ねて「練りの段階でグルテンをピークまで出して発酵過程で緩ませることを意識しています」と遠藤さん。本来グルテンを出し過ぎるとピッツァ生地は粘りが強くなり、いわゆる〝かたい食感〟になってしまいます。しかし、いったんグルテンをピークまで出しておくと、サクッとした歯ごたえとモチッとした食感が共存した生地になると言います。 捏ね終えた生地は1枚分240gずつに分けて丸め、室温24℃、10時間を目安に発酵させます。

技のポイント2

均等な厚さに伸ばし、拳で叩いてつなぎ目をなくします

生地に小麦粉をまぶして丸く伸ばしていきます。窯焼きの場合とは異なり、全体が均等な厚さになるようにしながら直径が20cm前後の円形になるようにします。

生地の上半分にリコッタチーズ、プロヴォラチーズを薄く広げ、フレッシュバジルを数枚散らし、海塩をひとつまみふって、生地を半分に折りたたむように包みます。全体を軽く抑えるようにして中の空気を抜き、口の部分は拳で強めに叩いてつなぎ目がなくなるように結着させます。

技のポイント3

200℃の高温でこんがりと揚げ、表面の油分はしっかり拭き取ります

生地を200℃の高温に熱したフライヤーに投入し約1分半~2分揚げます。生地が浮かび上がってしまうのでレードルで上面に油をかけながら揚げていきます。
揚げ油は軽い食べ応えに仕上がるサラダ油を使用。開業当初は本場ナポリで主流のラードを揚げ油に使っていましたが、それだけでお腹いっぱいになってしまうことから、いろんな料理を食べたい日本人の嗜好に合わせて軽い食べ応えにするために変更しました。 全体がこんがりとキツネ色になり、風船のように膨らんだら取り上げて、すぐにキッチンペーパーで表面の油を拭き取ります。こうしたひと手間でカリッとした軽い歯ごたえのピッツァフリッタが出来上がります。

技のポイント4

生ハム、ルッコラ、トマトを盛り付けてリッチな一皿に仕上げます

通常は揚げ上がったピッツァを紙で包んでハンディに食べるなどカジュアルな食べ方が一般的ですが、同店では盛り付けにもこだわっているところがポイント。ピッツァフリッタの上全体に生ハムを纏わせて、皿の余白にはたっぷりのルッコラセルバチコとフルーツトマト。仕上げにグラナパダーノ、オリーブオイル、ブラックペッパーを振りかけて完成です。

オススメメニュー1

ブファリーナ N(Normale)2,750円 P(Piccola)2,200円(税込)

ナポリピッツァは週替わりのおすすめピッツァを含めて50品超をラインアップ。ブファリーナは、ナポリピッツァの王道である「マルゲリータ」と同じモッツァレラチーズ、バジリコ、トマトソースを具材にした窯焼きピッツァですが、モッツァレラチーズの原料に水牛の乳のみを使用した「モッツァレラ・ディ・ブファラ」を使用したワンランク上の味。
トマトソースはイタリア産サンマルツァーノ種のホールトマトをつぶして塩を少量加えたもの。トマトの自然な酸味が水牛モッツァレラの濃厚なうま味を引き立てます。
ピッツァ生地は縁の部分を除いて空気を抜くように伸ばしていきます。焼成は400℃を超える温度で90秒前後かけますが、とりわけ水分をしっかり飛ばし、ピッツァの底から焼くイメージをしているそうです。
コルニチョーネと呼ばれる縁の部分はぷっくりと膨らんでいて、サクッとした軽い歯ごたえ。具材と生地がとろけるように一体化した中央部分は、うま味が凝縮された飲み物のように舌から喉へと広がっていきます。

オススメメニュー2

タコとジャガイモ、グリーンオリーブ、レモンのサラダ 1,980円(税込)

遠藤さんがイタリアに行くたびに訪れるというナポリのリストランテ「ア・フィディア・ド・マレナーロ」直伝の一品。シンプルに塩茹でした真ダコ、ジャガイモ(取材時はキタアカリ)のブツ切りとシチリア産グリーンオリーブをタコの茹で汁とオリーブオイルで軽く和えています。ルッコラセルバチコをしいたお皿に盛り付けたら、1/4サイズにカットしたレモンをギュッと絞りかけ、ブラックペッパーを適量振りかけて完成。塩味をつけるタコの茹で汁は継ぎ足しながら使っていて、濃厚なタコのダシが個性的なおいしさの秘密です。

オススメメニュー3

ジェラート ピスタチオ 820円(税込)

自家製のジェラートは3種類を用意していますが、とりわけ評判が高いのはシチリア・ブロンテ産のピスタチオペーストをたっぷりと練り込んだ「ピスタチオ」のジェラートです。牛乳、グラニュー糖、卵黄とともにアイスクリーマーで空気を含ませながら仕上げたジェラートは、甘さ控えめながら、香りも味もピスタチオの濃厚な香ばしさに満ちています。 ファミリーでの利用が多いためドルチェの品揃えも充実。「ティラミス」やイタリア・カプリ島の伝統的なケーキ「トルタ・カプレーゼ」などすべて自家製して本場の味を届けています。

お店紹介

「食材や料理はもちろん、店の内装や雰囲気も本場ナポリを体験できる店づくりを心がけています」と遠藤秀雄さん

ナポリ・ピッツァとの出会いは奥様とのバースデー・ランチで訪れた東京・南青山のトラットリア「ナプレ南青山本店」でのこと。同店で食べた「ピッツァ・マルゲリータ」に衝撃を受けた遠藤さんはピッツァイオーロ(ピッツァ職人)を志し、当時勤めていた都内一流ホテルを退職してイタリアへ。現地の料理学校で学びながら本場のナポリピッツァを食べ歩いて現地のスタイルや文化を吸収。帰国後には「ナプレ南青山本店」でピッツァ職人としてのキャリアをスタートさせ、2007年の東京ミッドタウン店出店時は立ち上げメンバーとしてピザ窯作りを手伝って知見を深めました。
そして2016年に出身地の千葉・鎌ケ谷からも近い柏に「ピッツェリア・ティンタレッラ」を開業して独立。当時、周辺にナポリピッツァを提供する店はなく、自分の生まれ育った地域にナポリピッツァの食文化を根付かせたいという想いから、この場所を選んだそうです。
店名は、ナポリでバースデー・パーティーなどでは必ず合唱するという歌「ティンタレッラ・ディ・ルナ」に由来します。
店の核となる薪窯はナプレでも使用していたステファノ・フェラーラ社製の内径144cmの大型窯を導入。「大型窯ならではの安定した火力も大切でしたが、何より〝店の顔〟としての存在感が欲しかった。とりわけ子どもたちに〝カッコイイ〟って思ってもらえたらナポリピッツァに対する見方も単なる食事以上のものになると思うのです」と遠藤さん。
忙しくない時間帯にはお子さま客に急遽ピッツァ作りを体験させてあげたり、夏休み限定で提供する「かき氷」ではジャンケンに勝ったら値引きサービスするなど、親しみある営業姿勢も地域住民の支持を得ています。
開業と同時にイタリアに本部を置く「真のナポリピッツァ協会」に申請し、厳しい審査を経て世界で666番目の認定店となりました。さらに2022年には開業以来の看板商品としていた「ピッツァフリッタ」が、日本で初めて同協会で認定されるなど、確かな技術と文化伝承への貢献が国内外から認められています。また、イタリア・ナポリで開催される世界大会進出を目指して国内大会に積極的に参加。7回目の挑戦でクラシカ部門での日本チャンピオンとなり、2023年6月に念願の世界大会出場を果たしました。年に一度はナポリを訪れて、本場の空気感を店で再現できるように心がけているそう。 ゆくゆくは「ラーメンと同じような感覚で食べに行けるナポリピッツァのファストフード店もやってみたい」と遠藤さん。ナポリピッツァが日本でも日常食として愛されるのを目指しています。

基本情報

店名ピッツェリア ティンタレッラ
所在地千葉県柏市柏6-8-40 小溝ビル1階
電話番号04-7164-0039
営業時間ランチ/水木金11:30〜14:00、土日祝11:30〜15:00、ディナー/土日祝16:00〜22:00、火水木17:00〜22:00、金17:30〜22:00
定休日月曜
席数テーブル席20席+テラス席8席
主な客層地元住民、ナポリピッツァ好きな目的客
予算の目安ランチ1,800円 ディナー5,000円
開業2016年4月27日
HPhttps://www.tintarella.jp/

※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。