【豚汁】壌 大手町

(東京都/千代田区)

日本経済の中心地、大手町。日本屈指のオフィス街は、多彩なグルメが楽しめるランチ激戦区でもあります。大手町パークビルディングの地下街「よいまち」の2017年開業と同時にオープンした立ち飲みBAR「壌」は、昼だけでなく夜もビジネスパーソンが集う人気店。 “さくっと手早く、かつ安くて美味しい食事でしっかり満たされたい”という忙しいワーカーの切実な願いに応えるランチの「大人のとん汁定食」を皮切りに、押しも押されもせぬ人気の秘密を探ってきました。

クローズアップメニュー

大人のとん汁定食 800円(税込)

“二日酔いの日も美味しく食べて、元気になってほしい”。そんな思いから生まれた「大人のとん汁定食」。ランチではメインのおかずとして、夜は飲んだ後の〆の一杯として愛されています。
豚肉とたっぷりの野菜がごろごろと入った具沢山な汁の中には、ひと噛みすると出汁のうま味があふれる大きなふろふき大根が潜み、仕上げに、口に入れた途端にほろほろとろける豚の角煮を乗せて完成します。
毎日足を運んでくださるお客さまのために、定食に添える3種の小鉢は日替わりで用意。ごはんは、驚くほど美味しく炊けると注目を集めたバーミキュラの炊飯器で炊いたツヤツヤでふわふわなコシヒカリが楽しめます。
とん汁と聞くと冬のメニューとイメージする人も多いかもしれませんが、季節を問わず通年人気が高いメニュー。二日酔いの日はもちろん、働く身体にじんわりと沁み渡る美味しさで栄養も満点です。仕込める量に限りがあり、なくなり次第終了となるため、早めの時間に完売してしまうことも珍しくありません。

技のポイント1

汁物であり定食の“主役”だから、具材は大きくたっぷりと。ボリューム満点に

提供する前日に毎日仕込むとん汁は、1回の仕込みで14 ℓの仕上がりになります。具材は、豚バラ肉600g、大根800g、タマネギ500g、コンニャク500g、ニンジン300g、ゴボウ250gを使用。以前は一から店内で仕込んでいましたが、現在は本社のセントラルキッチンを導入し作業を効率化。時間が経つと変色しやすいゴボウのみ店内の厨房でカットし、とん汁用にカットされた野菜を水6 ℓを入れた鍋へと投入します。野菜をすべて入れてから火をつけ、お湯が沸くまで強火で煮込みます。
「おかずとしての主役感を大切にしたいので、野菜はごろっとした感じに仕上げています。崩れたり食感がなくなったりしないように大きめにカットして、量も食べ応えの満足感を意識しています」とシェフの石井建太郎さん。

とん汁の中に入れるふろふき大根は、形を整えた大根を下煮として水煮します。大根の厚さや季節によって調整しながら平均30分の下煮を終えたら水を切り、一度冷ましてから再度、調味料(白醤油、みりん、酒)を加えたかつお出汁で約15分煮込み仕上げます。

技のポイント2

出汁は野菜と豚肉から出る甘味とうま味だけ。余計な味は加えません

別業態で豚しゃぶやとんかつといった豚肉料理店を展開する同店。豚肉に精通する強みを活かしてとん汁に最適な豚肉を吟味し、「相模豚」を採用します。相模豚は、柔らかいけれど煮崩れしない肉質で、歯ごたえと風味が良いのが特徴。豚肉は野菜を入れた鍋が沸くころを見計らい、炒めて火を通しておきます。野菜の鍋が沸いたら細火にし、炒めた豚肉を鍋へ。ここから約30分間じっくり煮込みます。 「ぐらぐら煮込まないから汁が濁らず透明で、灰汁もほぼ出ません。うちのとん汁には出汁も使っていません。弱火でことことと煮込むことで、野菜の甘味と豚肉のうま味がしっかり出る。それだけで最高に美味しくなる。余計な手を加える必要がない」と石井さん。

技のポイント3

合わせ調味料を入れた後に味噌を溶き入れ、仕上げます

30分煮込んだら火を止め、合わせ調味料(酒、みりん、濃口醤油)を入れてから味噌を溶きます。粗熱がとれたら別容器に移し一晩かけて冷ましながら、さらにじっくりと味を染み込ませて完成です。

「もちろん出来立ても十分に美味しいんですけど、一晩寝かせたとん汁は格別に美味しい。味全体が馴染んで、コクとうま味に丸みが出るんです」と、石井さんはにっこり。

オススメメニュー1

炙り豚丼の頭 800円(税込)

「大人のとん汁定食」と並ぶランチの人気メニューである「炙り豚丼」(1,000円)。丼の上に乗せる炙り豚だけを酒のつまみで食べたいという常連さんからの声に応えてできた夜のメニュー。相模豚の三枚肉に、濃口醤油とザラメで作る甘辛濃厚ダレを絡ませた、お酒もごはんも進むひと皿。タレで下焼きしておいた豚肉をフライパンに並べ、ヒタヒタになるくらいのタレを加えてさらに味を馴染ませて濃厚に。温まったら豚肉のみを取り出し皿に並べ、バーナーで一気に炙って仕上げます。タマネギとニンジンとカイワレ大根を和えたサラダで、さっぱりとした味わいと食感、彩りを添えたら出来上がり。噛むほどに豚肉のうま味と甘辛ダレが口いっぱいに広がり、あとを引く美味しさ。食欲をそそる香ばしい甘辛ダレの香りが立ち上がるので、香りに誘われて隣席から次々と追加オーダーが入ることも多いのだとか。

オススメメニュー2

角煮巻 800円(税込)

夜の人気メニューのひとつである「建ちゃん自慢の出汁巻玉子」(500円)に、とん汁の上にも乗せている角煮を中に入れて焼いた、繊細かつ豪快な一品。もともとは、定番人気の「角煮」を提供する際にどうしても出てしまう崩れや端の部分を有効活用するためにフードロスの観点から誕生したメニューでしたが、人気が出すぎてしまい、逆に角煮の仕込みが追いつかないことも。日によっては、知る人ぞ知る裏メニューとして存在しているそうです。 ふわふわでなめらかな出汁巻はひと噛みすると、白だしベースのやさしいお出汁がじゅわーっとあふれ出し、そこにとろっとろの角煮もあわせて口の中でほどけていきます。しっかりとボリュームがありながらも、その口当たりの良さにするりと食べられてしまうひと皿です。

オススメメニュー3

「けん坊」渾身の揚げ出し豆腐 500円

「壌」に冬の訪れを知らせる風物詩的存在の寒い時期限定メニュー。店長の山﨑亮太さんが涼しさを感じない限りは提供がスタートしないという背景から、毎年秋口には「そろそろ揚げ出し豆腐の季節じゃない?」と提供を催促する常連さんの姿も。片栗粉をまぶして揚げた絹ごし豆腐に、甘めに調整した蕎麦つゆをかけたシンプルでベーシックなひと皿ながらもファンが多いのは、料亭で修行を積んだ石井シェフの腕前あってこそ。外側はカリッと内側はふんわりと仕上がった揚げ出し豆腐は、お箸が止まらない味わいが楽しめます。過去には「これまで食べた揚げ出しで一番美味しい!」と、連日足を運んだお客さんもいたのだとか。

お店紹介

「店のコンセプトはオンリージャパニーズブランド。お酒も料理も日本のものだけを揃えています」と話すのは、店長の山﨑亮太さん(写真左)

2003年創業の西麻布「壌」の姉妹店として、2017年に開店した同店。“日本人の心の温もり”をテーマにした落ち着いた店構えで、大人がカッコつけて飲める“新しい立ち飲み”を提案。立ち飲みの一番の魅力である気軽さや楽しさを備えながら、ドリンクやフードは、本物を知っている“大人”のお客さまに向けたものを用意しています。「店が地下鉄大手町駅に直結する入口の正面に位置していることもあり、夜は仕事を終えたお客さまがふらっと立ち寄られることが多く、また、上階にホテルを有することから外国から来たお客さまもよくいらっしゃいます。立ち飲みスタイルですので一杯だけという方から大歓迎ですが、長時間ゆっくりと楽しまれるお客さまも実は意外に多いんですよ」と山﨑さんは話します。
日本酒や焼酎をはじめ、クラフトビールやワイン、ウイスキーなど日本のお酒を各種揃えている店内。オープン時はもちろん、現在もなお日本各地でつくられるお酒に常に目を光らせているのだとか。ほかのお店ではなかなかお目にかかれないクラフトジン、ウォッカ、アブサン、キュラソーなど珍しいお酒を豊富に扱っているので、それらを目当てに遠方から足を運ぶお客さまも多いそうです。 お酒に合うものをシェフの石井建太郎さんと山﨑さんで相談しながら決定するという夜のお料理は、その日の気分や材料で新たなメニューがひょっこりと誕生することも。「小さな店なので、二人で楽しみながら考えています。営業中、シェフは忙しくて厨房から出てこられないことがほとんどなので、お客さまに名前だけは認知いただこうとメニューに入れ込んでいるのは僕からシェフへの心遣いです」と山﨑さんが笑うと、「そのおかげで突然『建ちゃん、あれ食べたいんだけど』と厨房へ声をかけてくれるお客さまもいらっしゃってありがたいですね」と石井さんも笑います。そういった気さくで暖かな雰囲気もファンを集める理由なのでしょう。

基本情報

店名壌 大手町店
所在地東京都千代田区大手町1-1-1
電話番号03-6551-2360
営業時間ランチ/11:00〜15:00(L.O 14:30)、BAR/17:00〜24:00(※温かいお料理はL.O 22:00)
定休日土日祝
席数立ち飲みスタイルのためなし
主な客層近隣の会社員、日本のお酒を飲みたい方
予算の目安ランチ1,000円 BAR3,000~4,000円
開業2017年2月23日
Instagramhttps://bar-joe.com/

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