(東京都/千代田区)
行列必至のラーメン店が、東京・神保町にあります。この店のラーメンのテーマは、「フレンチ×ラーメンの融合」。フレンチの名店でも活躍してきたシェフがラーメンに挑み、フランス料理の技術で作り上げられたスープはオマール海老100%。一般的なラーメンとはひと味もふた味も違う魅力でいっぱいの味わいです。SNSでも大人気で、インバウンドの海外客のファンからも熱い支持を受けています。その美味しさの秘密をうかがいました。
クローズアップメニュー
元祖海老丸らーめん 1,380円(税込)
フレンチの「オマール海老のビスク」スープからインスパイアされた「元祖海老丸らーめん」は、人気No.1の看板メニュー。1杯にオマール海老の頭・約1尾分が凝縮されている濃厚なスープに、特製のかえし、スープのからみやすい麺、こだわりのトッピングが合わさって完成されています。ビスクを食べているかのようなオマール海老の味わいが、ラーメンでないようでいてラーメン、という絶妙な美味しさ。いちど食べたらまた食べたくなる逸品です。
技のポイント1
3時間以上煮込んで作るスープはオマール海老100%
「海老丸らーめん」のすべてのラーメンのベースは、オマール海老100%のスープです。その製法について、「たぶん、こんな大変なことは、誰にもできないと思う」とシェフの長坂将志氏。1日に約33kgものオマール海老の頭を使って、何時間もかけて行う大変な作業は、簡単に真似できるものではなさそうです。毎日100リットルの寸胴鍋3本分という大量のスープを作るため、スタッフは朝5時半から作業をスタート。寸胴鍋1本に、ローストした11kgのオマール海老の頭と炒めた野菜を合わせ、ブランデー1本(4リットル)とニンニクオイル、トマトペーストをあわせたソースに水を加え、煮込むこと3時間。スープにかける労力は半端ではありません。
技のポイント2
スープをとことん粉砕し、裏ごしは2回
3時間煮込んだスープは野菜の姿が見えなくなり、オマール海老の頭のカサも減った状態に。その寸胴鍋に直接パワーミキサーを入れて粉砕します。丁寧に粉砕を続け、なめらかなスープ状になったら、次は裏ごしです。目の粗いこし器で残ったカスもしっかりつぶしながら、凝縮されたうまみを丁寧にスープにとりこんだら、もういちど。目の細かいこし器で、再度しっかりと丁寧にこしていきます。そのスープを1日寝かせたら、やっとオマール海老100%スープのできあがり。これに特製のかえしを合わせ、「海老丸らーめん」の味の要である濃厚なスープが完成します。
技のポイント3
濃厚なスープに合わせたトッピングと麺
トッピングは濃厚な海老スープとの相性を考えてセレクトされたものばかり。飛騨旨豚のチャーシューは表面を燻製にしてから72℃で150分の低温調理で仕上げています。大山鶏のチャーシューは「かえし」をもみこんだあと、62℃で80分という繊細な加減で真空調理。しっかり火は入りながらも、しっとり仕上げています。ワンタンのように添えられる、海老とトリュフのラビオリもスープとの相性抜群。さらに、スープに味変や箸休め的な魅力を添えてくれるサワークリームとメルバトースト。そしてスープをたっぷりからめて楽しめるよう計算された太さの麺。すべてが合わさって、絶妙な美味しさのハーモニーを醸し出します。
オススメメニュー1
海老丸定番リゾット 600円(税込)
「元祖海老丸らーめん」にプラスして注文される人気メニューが、定番のリゾットです。アツアツの鉄器のご飯に卵黄と海老がのった状態で供されるリゾットですが、これはまだ完成前。残ったラーメンのスープをレンゲで6杯入れ、その上にスタッフがチーズを削りかけ、全体を混ぜ、テーブルの上で完成するひと品。トロリとした熱々のリゾットは、スープがご飯と混ざり合い、麺とはまた違う味わいに変化します。
ちなみに、「元祖海老丸らーめん」は、このリゾットのためのスープが残るよう、塩梅を計算して作られているそう。
オススメメニュー2
海老丸カルボナーラ 1,480円(税込)
人気No.2のメニューが「海老丸カルボナーラ」。「元祖海老丸らーめん」にクリームを加えてじっくり煮詰め、マイルドに仕上げられたスープ。クリームが入った分、まろやかで、フレンチ風のビスクスープのようなニュアンスと思いきや、やっぱりラーメンという絶妙な味わい。特に女性人気の高いひと品です。
オススメメニュー3
期間限定らーめん 「スリランカ コロンボで出合ったスパイス混ぜそば」 2,000円(税込)
「期間限定らーめん」のメニューは毎週週替わり。季節や旬の材料に合わせ、シェフのインスピレーションで作り上げられます。年間60杯もの多彩なバリエーションを楽しみたいと、限定ラーメン目当てに毎週通う常連さんも少なくないそう。
取材日はカレー風味の混ぜそばで、スリランカ人スタッフのお母さんのカレーのレシピを元に、夏野菜の彩りも美しく、シェフが混ぜそばにアレンジしたもの。このラーメンの麺は「元祖海老丸らーめん」とは異なる、もちっとしたタイプを使用。メニューにあわせて麺を使い分けるなど、人気にあぐらをかくことなく、常に美味しさを追求しています。
お店紹介
店長の長坂将志さん
「目指すは世界に認められるラーメン。やるならNo.1をめざします!」
西麻布でフレンチ店を営む現役シェフの長坂将志氏。経営面も考え、人にもまかせられる2店舗目を持とうと考えたときにラーメンで、かつフレンチの代表的メニュー「オマール海老のスープ」を出す店を思いついたそう。原材料のオマール海老の頭のコストも採算がとれると、2017年9月に開店。しかし、オマール海老のスープのラーメンは、ラーメン好きやラーメン評論家から酷評を受け、半年くらい赤字が続きます。
「フレンチの技術があれば大丈夫だろうと、ラーメンをなめていたんです」と長坂氏。「フレンチはスープだけで完成しますが、ラーメンは『かえし』のうまみと『スープ』が融合し初めて味が完成するもの」。フレンチの技術だけではダメだと、フレンチ店の利益や、すべての力を注ぎ込み、「美味しいラーメンとは?」を究めようと、有名店の食べ歩きや専門書を読みあさるうち、ラーメン道の奥深さに気づいたといいます。そこで、スープの作り方もいちからやり直し、スープと互いに引き立て合う麺も研究。現在の形のラーメンを完成。
酷評していたラーメン評論家が次々と美味しさを認め、状況が一変。SNS映えするオマール海老がまるごと1尾乗ったラーメンなどSNSでの発信も注目を浴び、多くの支持を得て大人気店に。いまや系列店も含め、年間11トンものオマール海老の頭を扱ってラーメンを作っています。
2年前には飛騨高山へのこだわりをコンセプトに、徹底したブランディングを行い、ラーメンの価格につりあう、内装・インテリア、食器、箸、使用する材料、BGMのジャズに至るまでトータルに演出。
フレンチの前菜風の一品料理も多彩に用意し、美味しいもので楽しいときを過ごしてほしい、と「海老丸らーめん」の世界観を確立しています。
そんな長坂シェフの次なる夢は、世界でのNo.1。「やるからには1番になりたい」。その夢に向かって、着々と計画中です。
基本情報
店名 | 海老丸らーめん |
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所在地 | 東京都千代田区西神田2-1-13 十勝ビル1F |
電話番号 | 03-6272-6416 |
営業時間 | 平日 11:30-15:00 / 18:00-22:30 (LO 22:00) 土日祝日 11:30-20:00 (LO 19:30) |
定休日 | 月曜日(不定休) |
席数 | 14席 |
主な客層 | 近隣住民、会社帰りの方々、海外旅行客等、幅広い層 |
予算の目安 | 1,380円〜 |
開業 | 2017年9月 |
HP | https://ebimaru.com/ |
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