【フランス料理】アッサンブラージュ・カキモト

(京都府/京都市中京区)

京都・寺町に店を構える「アッサンブラージュ・カキモト」は、2011年に菓子職人の世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」氷彫刻部門で個人優勝。13年と18年にはチョコレート職人の世界大会「ワールド・チョコレート・マスターズ」で日本予選優勝、世界大会で総合4位に輝いた、世界的なショコラティエ、パティシエである垣本晃宏さんのお店です。昼は洋菓子とチョコレートのお店、夜は垣本シェフ自ら調理するコース料理を提供するレストラン、というユニークなスタイルで営業しています。今回はパティシエ発想で再構築されたフランス伝統料理として「牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」について伺いました。

クローズアップメニュー

牛ホホ肉の赤ワイン煮込み  ディナーコース内の一品/12品超17,380円(税込み)

フランス料理の定番中の定番ながら、パティシエならではのエッセンスを盛り込んだ香りや甘味が官能的な一皿です。赤ワインを煮詰めたソースはまるでサングリアのようなフルーティーな甘味と華やかな香りが広がります。レストランによっては完成までに数日かけるケースもありますが、垣本シェフの調理法は6時間ほどで完成。臭み取りや肉質を柔らかくさせるための〝漬ける〟〝寝かせる〟調理工程がないにもかかわらず、芳醇な香りとほろほろととろける食感を表現してしまうところも驚きです。

技のポイント1



フルーツ、ハーブ、スパイスをたっぷり使ってパティシエ発想の甘味、香りを表現します

右上の牛ホホ肉は熊本県産のあか牛のもので1kg使用。牛肉から時計回りに塩10g、オレンジ1/2個、ニンニク2片、枝付きのフレッシュタイム2g、八角3個、玉ネギ300g、ニンジン300g、シナモンスティック2本、ドライイチヂク80g、レーズン80g、粒コショウ3g、水1,000ml、赤ワイン750ml、「熟成蔵出し 黒みりん」100ml、醤油30g。
牛ホホ肉は子どものこぶしくらいの大きさにカット。玉ネギ、ニンジン、オレンジは2〜3ミリほどの薄さにスライスして使用します。

技のポイント2

炒める、煮込むまで一つの鍋で完結させます

鍋にオリーブオイル30mlをしき、牛ホホ肉を中火でソテーします。表面にまんべんなく焼き色がついたところで、玉ネギ、ニンジンを合わせてさらに炒めていきます。野菜がしんなりしたところで水と赤ワイン、「熟成蔵出し 黒みりん」、醤油、そして塩、フルーツ、ハーブ、スパイスをすべて入れ、中火で4時間程度煮込みます。その間は落とし蓋などもせず、加水しながらひたひたの状態を維持します。肉に鉄串を刺して抵抗なく通るほど柔らかくなったら火を止めます。

技のポイント3

煮汁をブレンダーにかけてなめらかに仕上げます

提供する分量の肉と煮汁を別鍋にとり、中火で煮詰めるように煮込んでいきます。このときシナモンなどハーブやスパイス類は取り除いておきます。煮汁の分量が1/4程度まで煮詰まったところで肉を取り出し、野菜やフルーツを溶かし込んだ煮汁をブレンダーにかけて口当たりの良いソースに仕立てます。

技のポイント4

盛り付けの最後に塩とコショウでバランスを調えま

皿の上にソースをしいて中央にジャガイモのピュレをしぼります。その上に牛ホホ肉を盛り付け、淡路島の天日塩とマダガスカル産の野生コショウをふって完成です。

オススメメニュー1

鶏パテレバー ※ディナーコース内の1品

鶏レバーのパテとシルクスイート(サツマイモ)のピュレをパイ生地とキャラメリゼでサンドしたケーキのようなビジュアルで〝パティシエの料理〟を表現しています。鶏レバーは血抜きをして白ワインで軽く煮込んでいます。サツマイモのピュレは砂糖を使わずに素材の甘味を強調。上に乗せているのは、フランス・アルザス地方の伝統菓子ベラヴェッカ。ナッツやフルーツの甘味とハーブの香りがアクセントとなり、鶏レバーパテのおいしさを引き立てます。

オススメメニュー2

和牛サーロインステーキ ※ディナーコース内の1品

ほとんど黒色になるまで焼き込まれた表面と、中の鮮やかな赤色のコントラストに火入れの卓越さを感じさせます。熊本県産のあか牛のサーロインを2℃まで冷やしてからフライパンでじっくりと焼きはじめ、最後は薪の火に当てて仕上げています。ジャガイモのピュレの上にはマダガスカル産の野生コショウをたっぷりふった牛レバーパテ。チェリーとフランボワーズのフルーティーな酸味が効いたソースとの組み合わせも意外性たっぷりです。

お店紹介



「菓子作りの手法や素材使いで料理に新しい味覚を拓いてみたい」と垣本晃宏シェフ

垣本晃宏シェフは、幼少の頃から料理に目覚め、高校卒業後は辻製菓専門学校へ。卒業後「京都ロイヤルホテル」「神戸菓子Sパトリー(閉店)」「アトリエ・アルション」のシェフパティシエを経て、2016年に「アッサンブラージュ・カキモト」をオープンして独立しました。

菓子職人ひと筋のように思われますが、パティシエの職に就く前は会社員を3年ほど務めたり、キャリアの途中で沖縄・西表島など各地を転々としながら料理人として働いていた時期もあるなど、型にはまらない一面も。こうした経験がパティシエ、ショコラティエ、キュイジニエの3つの顔という同店のコンセプト誕生に寄与したようです。

そんな放浪生活を経てパティシエとして復帰後、世界大会を目指すように。齢30歳を過ぎてからと遅まきのチャレンジでしたが、見事「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」優勝、「ワールド・チョコレート・マスターズ」で二度四位に輝き、パティシエそしてショコラティエとして世界から注目を集めています。

京都・寺町の一角に店を構える同店は、歴史ある古都に溶け込む京町家風情の設え。カウンター席のみ10席のレストランスペースの奥には自然光が差し込む坪庭が設けられ、茶室のような静謐感がただよいます。

店名の「アッサンブラージュ(組み合わせ)」というフランス語に表されるように素材の組み合わせの妙が、垣本シェフの真骨頂。料理10品+デザート2〜3品で構成するディナーコースは、菓子作りのエッセンスと肉、魚料理を組み合わせた、アクロバティックとも思える〝アッサンブラージュ〟が楽しめます。

2019年にはコース仕立てでデザートを提供する完全予約制の「アッサンブラージュ・ハナレ」、2023年にはジェラートとパウンドケーキの専門店「アッサンブラージュ・プリュス」をオープン。どちらも垣本シェフならではの組み合わせの妙を楽しめます。

基本情報

店名アッサンブラージュ・カキモト
(ASSEMBLAGES KAKIMOTO)
所在地京都府京都市中京区竹屋町通寺町西入ル松本町587-5
電話番号075-202-1351
営業時間月・木~日:12:00~17:00(Cafe) / 18:00~(Dinner) / 12:00~19:00(Store) 
定休日火曜日・水曜日
席数10席(カウンター席のみ)
主な客層20〜50代の男女
予算の目安昼:3,000~4,000円、夜:2万~3万円
開業2016年4月

※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。