(東京都/渋谷区)
京王井の頭線渋谷駅より徒歩1分という好立地ながらも、都会の喧騒から離れた隠れ家のような雰囲気が広がる「裏の山の木の子」。日式きのこ火鍋の専門店で、日本古来の出汁文化にきのこの旨味とアジア各地のエッセンスを加えたきのこ火鍋は、従来の火鍋とは一線を画する唯一無二の味わい。全世代の女性をトリコにする看板メニューの魅力と楽しみ方を店長の大釜敬介さんに伺いました。
クローズアップメニュー

「きのこ火鍋」がメインのコース「喜乃胡」1人前 4,800円(税込)
※2人前から注文可、写真は2人前
白湯(ぱいたん)スープと紅湯(ほんたん)スープ、白と赤の2種のスープで味わう「きのこ火鍋」。
毎日店舗で仕込むこだわりのスープは、どちらもきのこの味わいを最大限に引き立てるべく独自に配合した昆布と干し椎茸でうま味をプラスした鶏ガラスープがベース。そこに、白湯スープは八角や陳皮などの薬膳を合わせて味に深みを出し、お出汁の味わいをダイレクトに感じられるスープに。紅湯スープは麻辣醬や山椒などの四川系調味料を加え、辛さとコクが癖になる麻辣スープへと仕上げています。
きのこやお肉などの食材が加わるほどにうま味が凝縮・倍増していくきのこ火鍋は、常時20種類が並ぶ薬味でのアレンジも無限大。まさに唯一無二の味わいが楽しめます。
「きのこ火鍋」は単品でもオーダー可能ですが、ほとんどの方がコースをオーダー。きのこ火鍋をメインに人気の春巻き2種を堪能できる同店のお試しコースの「喜乃胡」4,800円と、季節限定の味わいを加えた「旬麗茸茸(しゅんれいたけだけ)」5,800円の2つのコースを用意しています。今回ご紹介するメニューは単品でのオーダーや追加注文も可能ですが、すべて「喜乃胡」コースに含まれています。
技のポイント1

市場にほぼ出回らない幻のきのこも!全女子がときめく「きのこ12種のブーケ」
その愛らしい佇まいから提供されると各テーブルから喜びの声が上がる「きのこ12種のブーケ」が、火鍋のメイン具材。
約5000種に及ぶといわれる日本のきのこですが、そのうち食用となるものは約100種、さらに流通するきのことなると約20種に限定されています。同店では、市場にはほとんど出回らない品種に着目。国内では5軒の農家でしか栽培されていない希少かつ高価なトキイロヒラタケや、山伏が首にかけている梵天のような形のヤマブシタケなど、味わいはもとより見た目の楽しさにもこだわった珍しいきのこ12種を盛り合わせ、新たなきのことの出会いの場を提供しています。
店の入り口では色とりどりのきのこを収納する冷蔵ショーケースがお客様をお出迎え。「それぞれ異なる味わいや食感、香りを堪能すれば、きっと楽しいきのこの世界にハマりますよ」と、大釜さん。
12種のきのこは通年味わえるものを厳選し、長野県須坂市できのこを栽培する「キノコ村」を中心に、山形や岐阜、岡山など全国各地の農家から直接仕入れています。 きのこは秋冬に高い需要がある反面、夏は消費が激減。その差は6倍にも及ぶため、通年生産できるにもかかわらず夏の間はやむなく生産を止め、副業をせざるを得ないきのこ農家も少なくないという現状があります。同店では日式火鍋を通じてきのこの魅力を伝えることで、きのこ市場の活性化を図るとともに、きのこの生産者に光を当てることも店舗運営目的のひとつに掲げています。
技のポイント2


主役のきのこを引き立てながら華を添える!名脇役の「お肉2種」と「季節の彩り野菜」
きのこ以外の火鍋の具材には、「お肉2種」と「季節の彩り野菜」、「豆腐の盛り合わせ」があります。
「塚田農場」や「四十八漁場」などのさまざまな飲食店を運営するエー・ピーホールディングスを母体に持つ「裏の山の木の子」。さまざまな分野に精通する各業態のプロが日本中をリサーチした産地ネットワークをセンターに集約。全国の食材だけでなく、生産者だからこそ知るおいしい食べ方といった独自の情報も、センターからグループ内の全業態へと展開されています。同店の食材選定でも、その強みを存分に生かしています。2種の食べ比べが楽しめるお肉は、地鶏のつくねと国産豚ロース肉を用意。国産豚ロース肉は、どのタイミングに食べても固くなりすぎずに肉らしい食感をしっかり楽しめるような厚みで提供。「塚田農場」でも評判の地鶏のつくねにはひときわこだわりがあり、山芋を合わせてふわふわの食感に。隠し味として豚肉を少し加えることで、噛むとジューシーな肉感が広がります。
付け合わせの野菜は目で、舌で旬を感じられるものを全国から仕入れ、1〜2ヶ月で内容を変えています。アスパラやズッキーニ、ゴーヤなど、通常鍋料理にはあまり使われない野菜も登場し、知っているようで知らない野菜の魅力に出会えます。オープン以来、隠れた人気を集めるのが通年提供されている、おかひじき。一般的にはおひたしなどで味わうことが多い食材ですが、実は鍋料理との相性も抜群。スープによく絡み、シャキシャキの食感が楽しめます。
技のポイント3




目の前で仕上げるライブ感と、日本古来の“鍋を囲む”という優しい時間も提供
2021年12月開店の同店は立ち上げに際し、“一人の空想オーナー”を想像することからスタートしました。“日本の田舎でおばあちゃんに育てられ、大人になってアジアを旅するようになった”という仮想のオーナーを設定することで、個人店のような情緒的で人間味あふれるお店を完成させました。料理のベースになったお出汁と同様、ワイワイガヤガヤとお鍋を囲む時間は多くの日本人が共有する原体験であり、同店ではそんなゆっくりと流れる時間も大切にしています。
きのこ火鍋は、「ヤマブシタケはスープをスポンジのように吸収してくれるので、白スープにおすすめで、ジューシーな食感とスープの味わいを堪能できます」といった具合に、きのこの特徴や栄養などの説明をしながら各テーブルでスタッフが仕上げていきます。「ご希望があればお客様ご自身で仕上げていただくことももちろん可能ですが、リピーターを含むほとんどのお客様がきのこの説明に耳を傾けながら、目の前で仕上がる臨場感を楽しまれています」と、大釜さん。
最初にスープに投入する薬膳は、立ち上がるスパイシーな香りに包まれる心地よさの演出だけでなく、“これから身体にいいものを食べるんだ“というマインドセットの効果も大きいそう。「しびれが好き」というお客様には追い山椒でスープを整えるなど、薬膳はお好みに合わせた配合も可能。鍋の途中でもリクエストOKです。
技のポイント4

台湾火鍋がルーツ。20種の調味料でつくる合わせダレでアレンジ無限大
店内には、スープを引き立てる調味料として20種類の調味料を常時用意。タレで楽しむ火鍋は、台湾からのルーツ。辛さ控えめの牛肉豆豉辣油や甘酸っぱい梅ソースなどの店舗で仕込む特製ダレのほか、青唐辛子やネギなどの薬味、中国醤油や麻辣醬といったアジア各国の調味料もそろえています。
大釜さんによると「タレの楽しみ方は3パターン提案しています。一つ目が食材に味わいを添える“つけダレ”、二つ目は食材に乗せて食感なども楽しむ“乗せダレ”、三つ目はスープに合わせる“まぜダレ”。調味料コーナーでは定番として4種の組み合わせをご案内していますが、スタッフそれぞれにもおすすめの組み合わせがあるのでいつでもお声かけください。僕のおすすめは、梅ソースとパクチーの組み合わせ。おつまみとしてもお楽しみいただけます。」
技のポイント5



絶品箸休めに締めの麺・とろけるスイーツ。最後まで飽きさせないリズム感あるコース
各コースで火鍋の前に提供される「じゃがいもとザーサイのラペ」は、前菜として火鍋で辛くなったお口直しとして活躍。細く千切りにして下茹でしたジャガイモとザーサイに、酢、砂糖、ごま油をあえ、シャキシャキとした食感にさっぱりとした味わいが癖になります。
火鍋の締めとして登場する「野菜中華麺」は、モロヘイヤを練り込んだヘルシーな麺。各食材の旨味が凝縮されたスープを罪悪感なく最後までしっかりと味わえます。「おすすめの食べ方のひとつが、麺を紅湯スープに入れ、牛肉豆豉醤とごまだれ、ネギ、ラー油を合わせたタレにつけて食べる“担々麺風つけ麺”。野菜中華麺は細麺ですがコシがあるので、男性のお客様も最後にガッツリと満足していただける味わい方です」と大釜さん。
「喜乃胡」コースの最後に提供されるデザートは、杏仁豆腐。店舗で杏仁霜から作っている自家製の杏仁豆腐は、クランデールで仕上げるとろけるスイーツ。クリーミーな口当たりながらも後味はさっぱり。火鍋で辛くなった口の中をまろやかにリセットしてくれます。
オススメメニュー1

「マッシュルームと鶏肉の生春巻き」600円(税込)
「喜乃胡」コースのスタートを飾るのは、目でも“きのこ”らしさを楽しめるマッシュルームの生春巻き。きのこの中で唯一、生で味わえるマッシュルームはシャクシャクした食感も醍醐味。中には玉ネギ、ニンジン、サニーレタス、鶏肉に加え、お店で使うさまざまなきのこの端材をペースト状に煮詰めた“きのこデュクセル”を隠し味として包んでいます。見た目、食感、香り、味わいの4コンボできのこ気分を一気に盛り上げてくれるひと皿は、タイ発祥のチリソース・シラチャーソースにマヨネーズを合わせたマイルドなソースで楽しめます。
オススメメニュー2

裏山木ノ子春巻 1本600円(税込)
各コースで生春巻きの次に提供される「裏山木ノ子春巻」。
中には、パウダー状のポルチーニ茸と細かく刻んだ黒舞茸、3種のチーズを合わせたベシャメルソースを包んでいます。マツタケやトリュフと並ぶ世界三大きのこと称されるポルチーニ茸は、濃厚な香りと強い旨味が特徴。黒舞茸もまた、香り高く旨味成分がとびきり多いきのこ。揚げ春巻きはサクッと歯切れよく、2種のきのこの香りと旨味を詰め込んだ贅沢なソースがとろりあふれ出します。クリーミーな中にも、黒舞茸の食感を楽しめるように仕上げています。
袋に入れて提供されるので、ワンハンドグルメのように味わえる気軽さも魅力。生春巻きとのコントラストも感じたいひと皿です。
お店紹介

「お客様へ食材のこだわりを伝えることは、お店として大事にしているところでもあり、自身のやりがいにもつながっています」と大釜敬介さん
新卒でエー・ピーホールディングスに入社し、今年で8年目。「塚田農場」で研鑽を積んだ後に、ホルモン居酒屋「芝浦食肉」など他業態の店長やスーパーバイザーを経て、「裏の山の木の子」は立ち上げから携わっている大釜さん。
立ち上げの際に中心になったという二人の人物、同店の前身である六本木の火鍋店の元店長で『裏の山の木の子 恵比寿』現店長である“きのこマスター”国村さんと、空想オーナーの人物像と重なり、同店のすべてのメニューを開発した早川さんに影響され、今ではきのこワールドにどっぷりハマっている一人だと笑顔で話します。
「もっとも大きなきっかけは、きのこ農家のキノコ村さんと直接会う機会をもらえたことです。キノコ村さんはもともときのこを栽培するための装置を製造していた工業系の会社でしたが、そこから転じてきのこ農家になったという背景もあり、きのこに精通しているだけでなく、ものすごいこだわりを持って時間も手間も惜しまずに生産していらっしゃる。きのこ愛にあふれた方で、話すと“きのこトーク”が止まらないんですよ」。
今まで以上に産地への思いが深まり、きのこをもっと楽しんでもらいたいという思いが強まったという大釜さん。今では日常生活でも“きのこアンテナ”を広げ、きのこについて日々勉強しているそうです。
基本情報

店名 | 裏の山の木の子 渋谷 |
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所在地 | 東京都渋谷区道玄坂1-3-11 一番ビル 2F |
電話番号 | 050-1720-6425 (予約はWEBから、予約変更・キャンセルのみ電話で受け付け) |
営業時間 | 17:00-23:00 土日祝のみランチ営業あり 11:00-15:00 |
定休日 | 不定休 |
席数 | 68席 |
主な客層 | 20代からシニアまで幅広い世代の女性 |
予算の目安 | ランチ4,000円、ディナー5,500円 |
開業 | 2021年12月3日 |
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