【パン】キューバサンドのお店 PAN

(東京都/大田区)

日本各地で専門店を増やしているアメリカ生まれのご当地グルメ・キューバサンドをご存知でしょうか。1900年代初頭にフロリダへ移住したキューバ人がアメリカンサンドイッチをアレンジ。手軽な昼食として一躍人気となり、現在は専門店のほか、カフェやコンビニでも提供されるフロリダ名物に。現地では毎年、世界大会も開催。その「ノントラディショナル部門」で優勝を果たしたのが今回ご紹介する「キューバサンドのお店 PAN」です。現地の舌を唸らせた絶品キューバサンドに迫ります。

クローズアップメニュー

「トラディショナルキューバサンド」 (16cm)1,400円(税込)

キューバサンドを初めて食べる方はもちろん、すでにキューバサンドの魅力にハマっている方にもおすすめしたいのが、こちらの伝統的なキューバサンド。キューバンブレッドと呼ばれるパンに、プルドポーク、ハニーハム、サラミ、スイスチーズ、イエローマスタード、ピクルスを挟んでプレス焼きで香ばしく仕上げた、キューバサンドの基本とも言えるひと皿です。
定義があるようでないキューバサンドは、提供店によってさまざまなアレンジが加えられ、その個性も楽しみの一つになっていますが、フロリダ・タンパで毎年開催されるキューバサンドの世界大会「CUBAN SANDWICH FESTIVAL」のトラディショナル部門では、細かな規定が定められています。「PAN」のトラディショナルキューバサンドは、その大会ルールに沿ったもの。同店のこだわりもぎっしり詰まった、本場が認める伝統的な味わいです。

技のポイント1

サクッとした食感が楽しく香ばしい、特注のキューバンブレッドを使用

まずはキューバンブレッドを水平にハーフカットし、下準備をします。
キューバサンドには大きく2種類、食感が楽しいキューバンブレッドを使用した「クバーノ」と、ふわふわのロールパンを使った「メディアノーチェ」があります。世界大会のトラディショナル部門の規定はクバーノで、キューバンブレッドの購入店まで指定されています。
キューバンブレッドとは、ラードが練り込まれたパンのこと。見た目はバゲットに似ていますが、気泡が少なめでやわらかくサクッと軽い食感が楽しめます。PANでは、地元・南蒲田のパン屋さん「ブーランジェリー・ミモレット」に特注するキューバンブレッドを使用。プレスした際にも内側のふわっと感を残し、歯切れの良い食感と小麦の香りがしっかりと感じられます。
本場フロリダのキューバサンドは2mの長さがありますが、同店では約60cm。トラディショナルキューバサンドは、それを3等分したサイズが一人前となります。本場のボリューム感を体験しながらも、日本人がおいしく食べ切れるサイズを意識しています。

技のポイント2

具材たっぷり!ジェノアサラミを使ったキューバサンドの原点、タンパ系スタイル

両面にイエローマスタードを乗せ、ピクルス、ハニーハム、サラミ、スイスチーズ、プルドポークを乗せた状態で一度閉じ、下焼きを行います。
キューバサンドはフロリダの中でも2つの町にルーツがあり、タンパ系とマイアミ系の2つのスタイルがあります。タンパはキューバサンドの始まりの地と言われ、マイアミはタンパから進化したスタイルでキューバサンドの知名度を世界へと広めました。2つのスタイルの大きな違いは、ジェノアサラミが入るかどうか。
タンパで開催される世界大会では、ジェノアサラミの使用も規定の一つ。ハードかソフトかの規定はなく、PANではハードタイプを採用しています。ほかにも大会規定として、マスタードは粒を残さずにペーストにした辛味の少ないイエローマスタード、ハムはロースハムの中でもはちみつでコーティングしてスモークしたハニーハム、チーズはアメリカでスイスチーズと呼ばれる穴の開いたエメンタールチーズと定められていますが、それぞれの厚さや切り方、量などは規定がないため、それらのバランスで各店で個性を描き出しています。

技のポイント3

豚肉のおいしさを余すことなく満喫できる、ふわふわジューシーなプルドポーク

キューバサンドの味の要となるポークは、プルドポークまたはローストポークから選択します。ローストポークの場合は、チャーシューのようにスライスして挟むことが多く、細かくほぐして使うプルドポークは現地では燻製されることも多いそう。PANでは、現地同様にアメリカンポークを使い、独自に開発した調理方法でプルドポークに仕上げています。
アメリカンポークの肩ロースをオレガノと塩、甜菜糖、次の工程で出る肉汁をプラスしたマリネ液で3日間漬け込みます。マリネした豚肉は63℃で24時間じっくりと低温調理し、うま味を閉じ込めながらしっとりと柔らかい肉質に作り上げていきます。低温調理であふれた肉汁には豚肉のうま味がたっぷりと含まれるので余すことなく、マリネ液に加えています。
低温調理後は、ラードで2〜3時間じっくりことこと煮込むことで、味わいをより凝縮させてコクのあるポークへと仕上げていきます。繊維の細かいアメリカンポークは、最終的に糸のような細かさにほぐれるので、ほろほろになる少し手前の段階で止め、仕上げにオーブンで表面にカリッと香ばしく少し焼き目をつけます。最後にほぐしたポークに乾燥オレガノで香り付けをしたらPAN特製プルドポークのできあがりです。口の中で豚肉がほぐれていく楽しさを味わえるよう、あえて大きめの形にほぐし、弾力ある食感も残しています。 ブルドポーク以外の材料を乗せ下準備したキューバンブレッドにプルドポークをたっぷりと詰めて下焼きしたら、仕上げとなる最後のプレス焼きを行います。

技のポイント4

3回に分けて焼き上げることで、提供までのスピードも味わいも格段にアップ

本場ではオーダーを受けてから具材を挟んで焼き上げるスタイルが主流ですが、テイクアウトのお客様の多いPANでは、提供までの時間を短縮するためにプレス焼きを3回に分けて行っています。
1回目の「下焼き」は前日の仕込みの段階で行い、片面を40秒ずつ焼いた後は冷蔵庫でひと晩寝かせます。翌日、営業当日に2度目の「仮焼き」。再加熱を行うことで、キューバンブレッドと具材に一体感が生まれます。そして、オーダー直後に3回目の「本焼き」。表面をカリカリに仕上げていきます。 プレス焼きを3回に分けることで仕込みに手間も時間もかかりますが、オーダーを受けてから提供するまでの時間が大幅に短縮されお客様を待たせることなく、味わいも格段に上がる結果に。本場の伝統を踏襲しながらも、おいしさを革新したトラディショナルキューバサンドの完成です。

オススメメニュー1

「蒲田のキューバサンド」(12cm)1,400円(税込)

フロリダ・タンパで2024年開催の世界大会「CUBAN SANDWICH FESTIVAL」のノントラディショナル部門で、世界一に輝いたキューバサンドがこちら。
キューバンブレッドにプルドポーク、ロースハム2種、スイスチーズ、チェダーチーズ、粒マスタード、オレンジピール、ピクルス、マヨネーズを挟み、ハチミツで表面をコーディングしてプレス焼きした、ここでしか味わえないPANの個性が光るひと皿。
仕上げのハチミツは、最初のリサーチでフロリダ・タンパを訪れた際に知り合ったローカルが教えてくれた「West Tampa Sandwich Shop」というお店の、オバマ元大統領が愛したというキューバサンド「Honey Cuban “Obama Sandwich”」からオマージュ。キャラメリゼのようにパリッと仕上がった表面は、ほどよい甘さで香ばしく食感も楽しい。
一般的にプルドポークを仕込むマリネはモホマリネと呼ばれ、フレッシュハーブとオレンジ果汁で調えたキューバ式ソース・モホソースが使用されますが、PANではマリネ液ではなくキューバンブレッドに直接フレッシュオレンジピールを塗ることで、より香り高くオレンジを表現しています。
甘味、酸味、塩味のバランスが評価の軸となる世界大会で、多くの審査員から絶賛され優勝を果たしました。

オススメメニュー2

アイス豆富ラテ 600円(税込)

ドリンクの中で一番人気を誇る、濃厚な豆乳にエスプレッソを加えたアイス豆富ラテ。濃厚な豆乳をベースにし、豆富にコーヒーの香りを添えたような仕上がり。
エスプレッソには、川崎の「珈琲問屋」でフレンチローストに焙煎したエチオピア産のコーヒー豆を使用。濃厚な豆乳に負けない豊かな香りとコクがあり、ほのかに香る柑橘のような爽やかな酸味が飲んだ後に心地よい余韻を残し、キューバサンドともマッチします。ホットの場合、豆乳が濃厚なため湯葉のような食感も楽しめます。

お店紹介

「キューバサンドをもっと進化させていきたい」とオーナーシェフの船井真樹さん

飲食関係の会社に10年強勤め、ステーキ店や和食店などを担当。仕事関係の友人宅で食べたキューバサンドのおいしさに感動し、当時担当していたバルで提供を始めると予想を超える反響が。入社当初から自身の店舗を持つことを目標にしていた船井さんは、キューバサンドでの独立を決意します。2023年5月末に退職し、数日後にはアメリカ・フロリダに渡り約1ヶ月間、現地でキューバサンドを食べ歩きます。現地でのさまざまな人々との出会いから世界大会の存在を知り、主催者とのコンタクトにも成功。現地で直接会うことは叶いませんでしたが、帰国後も連絡を取り続けていました。

帰国後すぐに、キューバサンドのメニュー開発と同時に物件探しをスタート。出店は当初より船井さんの地元・蒲田を予定し、9月に現在の場所に決定しました。内装工事を終えるまではガレージでのプレ営業を行い、12月16日にグランドオープンを迎えます。

翌年2月、突如主催者から世界大会出場への打診を受け、再渡米を決意。渡航費などの費用をクラウドファンディングで募り、再びフロリダ・タンパへ。1日限定のフェス形式で開催される世界大会では会場にキューバサンドの名店が約20店集結。一般のお客様への販売営業を行いながら審査員用に90食を用意するハードな戦いの末、見事ノントラディショナル部門での優勝を勝ち取ります。

「退職後は初めての独立開業に加え、開店直後に妻の妊娠がわかり家族が増えたり、不意に世界大会へも出場することになったりと、予期していないことだらけの激動の一年でしたが、さまざまな方との出会いやご縁に恵まれたおかげで、たくさんの夢を叶えることができました」と船井さん。今後の展望を尋ねると、「キューバサンドをもっともっと進化させていくこと。まだまだこれからです」と、これから辿る道をまっすぐと見据え、晴れやかに語る笑顔が印象的でした。

基本情報

店名キューバサンドのお店 PAN
所在地東京都大田区南蒲田1-3-9
問い合わせインスタグラムのDMから 
営業時間月・金9:00-14:00 
土・日・祝9:00-15:00
定休日火・水・木
席数イートインスペース14席
主な客層世代を問わずおひとり様、外国のお客様
予算の目安2,000円~
開業2023年12月16日

※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。