(東京都/渋谷区)
東京・小田急線「代々木八幡」駅はのどかな雰囲気のローカルエリアながら、新宿や渋谷にアクセスしやすく情報感度の高い地域。同駅近くの裏路地にひっそりと店を構えながら、夜ともなればおいしいもの好きな男女で連日満席の賑わいをみせているのが、ポルトガル料理店の「クリスチアノ」です。郷土料理をワインとの相性を高めた一品料理にバージョンアップさせた味はミシュランガイドでも評価され、8年連続でビブグルマンに選出されています。今回はポルトガルの定番煮込み料理「コジード」について、同店を経営する株式会社キュウプロジェクト代表取締役の佐藤幸二さんに伺いました。
クローズアップメニュー

コジード 4,200円(税込)
ポルトガルの郷土料理のひとつで、ポトフに近い煮込み料理です。特徴的なのは材料の肉のバラエティーで、正肉だけでなくモツやソーセージなどをまとめて野菜とともに煮込みます。
クリスチアノでも牛ホホ肉、豚スペアリブ、豚モツに3種類のソーセージと圧巻の肉々しさ。冬のフェアでは鹿や猪などジビエ肉も加えて計10種類を使ったスペシャル版を提供したそうです。
多様な肉のうま味が溶け合って滋味深いおいしさです。本場ポルトガルでは味を調えるのに塩だけしか使わないそうですが、同店ではフレッシュミントとオリーブオイルを加えることで香りや風味をプラス。よりワインとの相性を高めています。
技のポイント1


バラエティー豊かな肉を水からゆっくりと炊いていきます
コジードの材料は、豚モツ、牛ホホ肉、豚スペアリブ、燻製前の生ソーセージ、モルセーラ(ブタの血のソーセージ)、アレイラ(挽き肉とパンが詰まったソーセージ)、玉ネギ、ニンジン、キャベツ、ローリエ、ミント(フレッシュ)、塩。
寸胴に水を張り、豚モツ、牛ホホ肉、豚スペアリブ、燻製前の生ソーセージ、半割りした玉ネギ、ニンジンを入れ、ローリエと塩を加えて、水から弱火でじっくり炊いていきます。モルセーラとアレイラは煮込むと溶けてしまうので、ここでは入れません。。
技のポイント2


沸騰しない程度の温度を保ち、肉が柔らかくなるまでじっくり待ちます
一度もフタをすることなく、80℃前後の湯温を維持しながらコトコトと3〜4時間炊き続けます。肉に鉄串がすっと通るくらい柔らかくなったら、キャベツを加えてさらに10分ほど弱火で炊きます。
ここまでで使っている調味料は塩のみ。香辛料はもちろんワインなど臭みとりの役割を担う調味料も使っていません。
技のポイント3




最終調理の段階でフレッシュミントを加えて爽やかな風味を付与します
注文が入ったら塊肉、野菜を取り出して一口大にカットし1皿分を手鍋に移します。そこにフレッシュのミントを加えて煮汁を注ぎ入れ、フタをして中火で温めます。
モルセーラとアレイラは一口大にカットして小麦粉をまぶし、170℃のフライヤーで揚げて表面を固めます。その後、手鍋に移して他の材料と合わせますが、ここでも煮汁に浸からないように注意して、蒸すように温めます。
技のポイント4


仕上げにオリーブオイルをたっぷりかけるのがクリスチアノ流
煮汁がほどよく煮詰まったところで皿に盛り付けます。煮汁を注ぎ入れたら、たっぷりのオリーブオイルを回しかけて完成です。
オススメメニュー1

蛸のラガレイロ(EXオリーブオイルの煮込み)1,780円(税込み)
「ラガレイロ」とはポルトガル語で「搾油所の人」という意味で、タコとジャガイモにオリーブオイルをたっぷりかけてオーブン焼きする郷土料理です。現地では平らな皿に盛り付けられることが多いのですが、クリスチアノではカスエラ風の深皿を使ってアヒージョ風に煮込んで提供しています。
タコは名産地として知られる熊本・天草産を使用。仕込みの段階で、オリーブオイルで1時間以上煮込んで柔らかくしています。ジャガイモはソテーして香ばしく焼き色を付けます。
注文が入ったらタコとジャガイモを一口大にカットして器に入れ、煮汁のオイルを注いで5分ほど温めます。最後にスライスした紫玉ネギをトッピングして完成です。
添えられる色鮮やかな朱色のペーストは、赤パプリカを塩漬け発酵させた味変調味料「マッサ・デ・ピメンタオン」。少量でも強烈な辛さ。香りは爽やかで、辛さと酸味とともに料理の後味をキレの良いものにしてくれます。さまざまなポルトガル料理で薬味として活躍する万能調味料的な存在です。
オススメメニュー2

バカリャウ・ア・ブラス(干鱈とフライドポテトの玉子とじ)1,150円(税込み)
塩漬けした鱈を乾燥させた「バカリャウ」はポルトガル料理に欠かせない食材。本国では乾物として流通していますが、クリスチアノではこれを3週間かけて自家製しています。同品は、ポルトガルではもっともポピュラーな郷土料理のひとつ。本場ではレストランに必ずある料理で、各店がそれぞれ独自の味を自慢しあっているとか。
バカリャウと玉ネギ、細切りのフライドポテトを炒めたところに溶き卵を回しかけ、ふんわりとほどよく固まったところで完成。最後にオリーブ、イタリアンパセリをのせてレモンを軽くしぼります。
バカリャウの病みつきになる味に脱帽する一皿です。
オススメメニュー3

自家製バカリャウのコロッケ(プレーン/クロ/キイロ)830円(税込み)
1個10gほどの小ぶりな見た目が愛らしい、自家製バカリャウ(干し鱈)とジャガイモのコロッケです。ポルトガルの定番おつまみとして知られ。タラのうま味とジャガイモのホクホク感が人気です。プレーン(写真手前)、カレー(右)、イカ墨(左)の3種類を用意。一皿6個入りで、1〜3種から選べます。
お店紹介

「手頃な価格で出せて地域の人が喜びそうな新しい味は何だろう。考えた末に着目したのがポルトガル料理でした」と佐藤幸二さん。
自動車が通れないほどの路地裏にひっそりと佇む店ながら、連日おいしいもの好きな男女で賑わうポルトガル料理店「クリスチアノ」。代表の佐藤幸二さんは、美術好きがこうじてイタリアへ。その後、西はポルトガルから東はタイまで7年間にわたり各国を旅行。旅費をまかなうために各地のレストランで料理人として働きながら各国料理の技術や文化を吸収していった異色の経歴の持ち主です。同店の業態づくりにあたってはポルトガルを訪問。各地のレストランを食べ歩くとともに、食器や装飾品も購入。それらの調度品が本場の空気感を伝えるあしらいとなっています。
フードメニューは、一見馴染みの薄いポルトガルの郷土料理の数々を、ワインに合う一品料理にアレンジ。日本人にも親しみやすい味に仕上げています。ポルトガル料理に欠かせないバカリャウはタラを塩漬けして干すところから手作りし、3週間かけて自家製。他にソーセージやベーコンも自家製してバリエーションも豊富。ポルト酒に5日間マリネして作る「ポルトベーコン」やカマンベールチーズ用の白カビで熟成させた「カマンベーコン」など、ここでしか味わえないシャルキュトリーも人気の秘訣です。
ワインにはポルトガル特産の「ヴィーニョ・ヴェルデ」を中心にラインアップ。ほんのり緑がかった液色で、微発泡感がある爽やかな味が人気です。
同店のヒットを受けて魚介料理にスポットを当てた「マル・デ・クリスチアノ」、郷土菓子を製造販売する「ナタ・デ・クリスチアノ」を近隣に出店。さまざまなアプローチでポルトガル料理の魅力を発信しています。
近年は「お惣菜と煎餅もんじゃ さとう」などの新店舗、缶詰などの加工設備を活用した物販食品の開発やグルメ通販サイト「さとう商店」の運営など多方面で活躍しています。
基本情報

| 店名 | クリスチアノ |
|---|---|
| 所在地 | 東京都渋谷区富ヶ谷1-51-10 プリティパインビル1階 |
| 問い合わせ | 03-5790-0909 |
| 営業時間 | 17:00〜23:00 ※土・日・祝日はランチ営業あり12:00〜15:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 席数 | 38席(カウンター8席、テーブル30席) |
| 主な客層 | 地元の住民や会社員、30〜50代のおいしいもの好きな目的客 |
| 予算の目安 | 6,000〜8,000円 |
| 開業 | 2010年12月15日 |
| SNS | https://www.instagram.com/cristianos.1215/ |
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