【メキシコ料理】MIXTEKO TOKYO

(東京都/港区)

数多くの人気店が集まる東京・麻布十番にオープン以来、メキシコ料理の先入観を刷新させる〝コンテンポラリー・メキシカン〟として注目されています。メキシコ料理のエッセンスはそのままに、日本各地から届く高品質な食材を用いてガストロノミックな料理に昇華。カルロス・ソラナ シェフはいたずらに斬新さを求めることはせず、食材の持ち味を最大限に引き出すことに注力して、メキシコ料理の新たな価値を探求しています。今回はメキシコ料理のシンボル的なアイテムである「トルティーヤ」づくりについて伺いました。
※同店はメニュー内容を毎週変更するスタイルのため、今回ご紹介する料理は参考メニューです。

クローズアップメニュー

タコ・デ・バルバッコア

その日に挽いたばかりのメキシコ産ホワイトコーンを使った焼きたてのトルティーヤは、香りも甘みも別次元のフレッシュさです。島根県産の黒毛和牛〝かつべ牛〟の肩ロースをバナナの葉で蒸し上げたバルバッコアは、和牛ならではの脂のうま味を赤身が吸って上品な味わい。スモーキーな風味と完熟ベリーを思わせるうま味のワヒージョチリ、オアハカ特産でうま味と酸味のバランスが良いコステーニョチリをベースにしたペーストは、牛肉に複雑で深みのある味わいと風味を付与しています。その上にかけられたサルサヴェルデは、採れたての長野産のトマティーヨと埼玉産のハラペーニョを使用。新鮮素材ならではの鮮やかな風味やキレの良い辛さが印象的です。素朴な美しさをもつ美濃焼の器にていねいに盛り付けられた様子にもカルロス・シェフの料理に向き合う姿勢を感じさせます。

技のポイント1

軟らかく戻したホワイトコーンを加水調整しながらすりつぶします

乾燥したメキシコ在来種ホワイトコーンは、前日に「ニシュタマリゼーション」という伝統的な処理法で柔らかく戻します。乾燥した穀物をアルカリ水で茹でて戻す方法で、食材を加工しやすくすることに加え、必須アミノ酸やカルシウム、ミネラル分など栄養価を高める効果があります。ホワイトコーン300gに対して1%の炭酸カルシウムを加え、5ℓの湯で45分間茹でます。その後は火を止めて一晩おいてゆっくり冷まします。
翌日、鍋からホワイトコーンを取り出して水を切り、メキシコの火山石で作られた石臼(モリーノ)ですりつぶしていきます。ポイントとなるのはコーン粉の〝湿り具合〟。適宜指で感触を確かめながら水を足して調整します。すりつぶされたホワイトコーンは、おからのようにしっとりとしながらふわふわとした軽い手触りです。
モリーノに付着した粉砕が不揃いなコーン粉の残りは廃棄せずに、メキシコ伝統スープ「ポソレ」の材料などに使います。

技のポイント2

生地がつながる程度に軽く練り込み、プレンサで円盤状に成形します

すりつぶしたコーン粉は塩水で湿らせた手で軽くこねて生地(マサ)にしていきます。コーンはグルテンフリーのため、こねても粘りは小麦粉ほど強くなりません。生地がつながって、もっちりしたねばり気を感じられたらマサの完成です。生地をまとめたら2〜3時間常温で寝かせて馴染ませます。その後、マサはちぎってピンポン球ほどの大きさに丸め、「トルティーヤ プレンサ」でプレスして円盤状に伸ばします。

技のポイント3

しっかり熱を蓄えたコマールで、焼き上げます

トルティーヤを焼き上げる専用のフライパンが「コマール」です。現在はステンレスなど鉄製のものが普及していますが、カルロス・シェフは故郷オアハカで作られている伝統的なバロ(粘土)製のものを使っています。温度が安定して焼きムラなくふっくらと仕上がります。調理前に20分程度熱してしっかりと熱を蓄えさせておきます。弱めの中火にして生地をこまめにひっくり返しながら焼き上げます。香ばしい香りとともに表面が乾き、軽く膨らみができたタイミングで完成。焼きたてのうちにウォーマーにくるんで保温します。メキシコの家庭では「トルティーヤを冷ましたら絶対いけない」と厳しく教えられてきたとカルロス・シェフ。温かいうちに食べるのがトルティーヤのおいしい食べ方です。

技のポイント4

6時間かけて蒸し煮したバルバコアを盛り付けます

焼き上がったトルティーヤの上に、島根・かつべ牛のバルバコアを盛り付けてサルサヴェルデをかけ、みじん切りしたコリアンダー、スライスした淡路島玉ネギをトッピングし、ライムを添えて完成です。
バルバコアはオアハカではお祝い事などに供される肉料理で、後に英語の〝バーベキュー〟の語源にもなったもの。カルロス・シェフの幼少期には、父親がヤギを一頭捌くところから料理するのを手伝っていたそうです。同品では、島根県産黒毛和牛かつべ牛の肩ロースを使用し、牛肉のうま味を追求。肩ロースのブロックに塩をすり込み、ワヒージョチリとコステーニョチリをベースにしたペーストでマリネしたら、バナナの葉で包んで低温のオーブンで蒸し焼きにします。焼成時間は180℃で1時間、120℃で5時間の計6時間。スモーキーな風味と完熟ベリーを思わせるうま味のワヒージョチリ、オアハカ特産でうま味と酸味のバランスが良いコステーニョチリをベースにしたマリネペーストは、牛肉に複雑で深みのある味わいと風味を付与しています。

 

オススメメニュー1

ラクレットチーズとフレッシュイチヂクのケサディーヤ

スペイン語で「小さなチーズの料理」を意味する、メキシコではポピュラーなタコスです。
トルティーヤとラクレットチーズをコマールで温めたらカットした淡路島産のイチヂクを盛り付け、〝メキシコ版食べるラー油〟とも言われる「サルサマチャ」をドレッシングして完成。ブラックコーンを使った濃紫色のトルティーヤがイチヂクの色味を引き立てます。イチヂクの華やかな甘さとラクレットチーズのコクの組み合わせは上品な味わい。フルーティーな風味のアンチョチリをベースにしたサルサマチャとも好相性で、ナッツ系の香ばしさとトルティーヤの香ばしさの重なりも芳醇な余韻が楽しめます。

オススメメニュー2

シオゴ(カンパチの若魚)のアグアチレ

太平洋とカリブ海に面しているメキシコ沿岸部でポピュラーな魚介料理です。アグア(水)とチレ(チリ)を組み合わせた料理名で、ライム果汁とトウガラシなどを組み合わせた酸味の強い冷製スープに魚介を漬け込んだもの。同店では、日本の刺身文化を取り込んで、スープに漬け込まず、アンダーソースとして使用するスタイルに。千切りしたキュウリと小口切りのシャインマスカット、ハラペーニョを添えて美しいグリーンのコントラストを描いています。これらは刺身を味変させる薬味にもなっていて、それぞれ香り、食感、ジューシーさに変化をもたらしています。

オススメメニュー3

ポソレ

ポソレは、礼拝のある日曜日やクリスマスなどに供される風習がある、伝統的なスープ料理です。ホワイトコーンと鶏肉や豚肉を煮込んで作るのが一般的ですが、同店では鶏からとった出汁にホワイトコーンを加えて、和食のお吸い物やお粥に近い感覚にアレンジしています。ホワイトコーンのほっくりした甘みと鶏出汁が滋味深い繊細な味わいで、トウモロコシの意外な魅力を感じさせてくれます。サルサ・ロハとオリーブオイルを少量加え、フレッシュのコリアンダーと玉ネギのスライスを盛り付けて味のアクセントに。ライムを絞り入れるとより風味が引き立ちます。

お店紹介

「日本の食材や料理の感動が、思い描いていたコンセプトを実現させてくれた」とカルロス・ソラナさん。

共同オーナーでシェフのカルロス・ソラナさんはメキシコ南西部の主要都市オアハカ出身。大学の学費を賄うために米国ナパ・ヴァレーの高級レストランで働きはじめたのをきっかけに料理の道へ。皿洗いの立場から10年の研鑽を積んで、シェフの地位を掴みました。その後、メキシコ・シティのレストラン・シェフなどを経て日本へ。都内のメキシコ料理店をいくつか経験した後、独立をめざして目黒にある居酒屋を間借りする形でポップアップ・レストランを1年半にわたって開催するなど準備を進め、業態コンセプトと料理を磨きあげてから、2024年3月に麻布十番に店舗をオープンさせました。開業前に実施したクラウドファンディングでは、目標の200万円を上回る250万円超を達成するなど、一躍話題の注目店となりました。

日本に来たのは、米国時代の料理人仲間が先に日本で働いていて誘われたことがきっかけ。かつて米国での修業時代に和包丁と出会い、そのクオリティの高さやデザインの美しさに惚れ込んでいたカルロス・シェフは「いつかは日本を訪れたい」と思っていたことも決断の後押しになりました。

メキシコ料理をクリエイティブな調理と盛り付けでコース料理スタイルを採る構想は、米国でシェフをしていた頃からあたためていたもの。これを日本で実行した理由について、高品質で鮮度の良い食材が手に入りやすいことや、米国などと違って小規模でもビジネスが成立しやすい環境であることが決め手となったそうです。

カウンター7席、テーブル1卓4席のミニマムな客席構成で、壁はメキシコ古来の建築様式である「アドベ」の質感を再現し、カウンターテーブルには特殊な和紙を貼るなど、日本とメキシコに共通する美意識の融合を感じさせます。

料理は8〜10品のコース料理のみ。そのうちタコスは2品組み込まれています。旬の時期にはウニやカニなども登場。日本料理のそれを思わせる繊細な食材使いに、メキシコ郷土料理の調味がほどこされる独自のアプローチに多くの食通が注目しています。

基本情報

店名MIXTEKO TOKYO
所在地東京都港区麻布十番2-7-11 VERTEX AZABU 3階
問い合わせ03-6722-0230
営業時間火〜土 18:00〜22:00(L.O.21:30)
日 11:30〜14:30(L.O.14:00)
定休日月曜 
席数11席(カウンター7席、テーブル1卓4席)
主な客層30〜50代男女、駐在外国人
予算の目安2万円前後
開業2024年3月1日
SNShttps://www.instagram.com/mixtekotokyo_/

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