上海蟹みそ入りふかひれスープ ~新世界菜館~

(東京/千代田区)

味つけなしでおいしい自社養殖の上海蟹と
ワインさながらに楽しめる自社醸造紹興酒が2本柱

「毎年9月第2週頃から翌年の2月末まで上海蟹を扱っており、上海蟹お目当てのお客さまでいっぱいになります。この時期、店内はまるで蟹専門店と見紛うほどの状況ですが、実は普段は旬の野菜や海鮮を使った上海料理店。1軒のお店でありながら、約半年のサイクルで2つのお店を営んでいるような感じです」と、季節によって様相の変わる「新世界菜館」の状況を楽しそうに語るのは、支配人の傅(フウ)良平さんだ。傅健興社長が父、傅永興専務は叔父、傅智料理長は従兄弟という親族経営で、祖父が戦後間もない1946年に開業したこのお店を守り続けている。

「上海蟹といえば中国・蘇州の陽澄湖産が有名ですが、当店では、上海から約200km内陸にある江蘇省・南京郊外の石臼湖と、もう少し上海寄りにある呉江の東太湖で100%自社養殖し、週2回のペースで使う分だけ空輸しています。だからより新鮮、より割安です」と傅さん。「稚蟹のときからトウモロコシなどを与えて蟹みそがきれいな黄色になるように育てたり、品質維持のために厳重に管理したりできることが自社養殖の強み」と言う。ワンシーズンに空輸する上海蟹の量は5~6t。数にして1日150杯が出る計算だ。茹でた蟹はショウガ入りの酢醤油を添えて提供するが、「上海蟹は素材がすべて」と、何もつけずに食べることを勧めている。

上海蟹と並んで「新世界菜館」の2本柱の1つとなっているのが紹興酒だ。食材にこだわる健興社長は「最高の食材を手に入れる仕組みが必要」と、「新世界菜館」の経営母体である株式会社健興通商を1992年に起業したが、そのきっかけとなったのが顧客の持ち込んだ紹興酒だったという。現在は中国の自社醸造工場で、杜氏の手づくりにより「紹興大越貴酒」「陳年紹興貴酒」「孔子貴酒」の3つのオリジナルブランドを製造・販売。「新世界菜館」でも輸入したこれらをさまざまなサイズで提供している。香りも十分楽しめるようワイングラスで提供するのが新世界流。ヴィンテージ紹興酒の飲み比べなどもできるというから、その楽しみ方はワインさながらだ。
200席ある客席は4フロアに分かれ、地下1階が落ち着いたグリル席、1階が一般的なグリル席、2、3階は個室。用途や人数に合わせて柔軟に使い分けられるのも魅力だ。

オススメメニュー

  • 上海蟹みそ入りふかひれスープ 1,600円
    自社ブランドの10年もの紹興酒とショウガをたっぷり使ってクセのある上海蟹・蟹みその風味を和らげたうえで、フカヒレ、ネギと一緒に澄んだ鶏がらスープで煮込んだ贅沢な一品。味つけはオイスターソースベース。傅さんが、「個人的にはスープというより煮込みと呼びたい」と言うほど具がたっぷりで濃厚。まさに"食べるスープ"の代表格。

  • 挽肉唐辛子冷やしそば 1,200円
    夏季限定と思いきや年間通じたグランドメニュー。中細ストレート麺に甘味のある酢醤油ベースのたれ(ショウガ入り)と肉みその一種「少子」をかけた麺料理。小子とは豚ひき肉とみじん切りにしたタケノコを炒めて豆板醤などで味つけしたもの。健興社長が修行時代に考案したまかない料理がベースになっており、もともとは汁そばだったものを冷やしそばにアレンジしたところ大人気となった。麺を囲むように添えた新鮮なキュウリと少子の下の糸寒天が食感のアクセント。冷たい麺に熱いあん、という組み合せも面白い。

  • 若鶏の唐揚げ唐辛子バスケット(辣椒鷄塊) 1,900円
    岩手産地養鶏を使用。あらかじめ揚げた鶏肉をたっぷりのトウガラシとハナサンショウを加えて炒め、軽く塩をふったシンプルなメニュー。大量のトウガラシから激辛料理をイメージするが、香辛料はあくまで香りづけとして用いているため思いのほか食べやすい。彩りの野菜は季節によって替わる。またカキやエビを用いたアレンジメニューも期間限定で登場する。

発見!! 味な「乾杯!」

仲間たちが見守る前で、主役が中華包丁片手に石膏で固めた大きなカメに切りかかる! こんな演出が忘年会など宴会の席でウケている。「新世界菜館」名物「紹興酒カメ割り」だ。包丁で入れた亀裂をもとにスタッフが石膏を崩し、封印されていた蓋を開け、ピッチャーに移し、さらにデカンタに小分けにしてくれる。9Lのカメで2万5,000円。底に近づくほど澱が濃くなり濁り酒の様相に。その飲み比べも楽しく、また、皆で力を合わせてカメを空にする達成感(!?)も味わえる。

  • お店紹介
    傅支配人
    戦後すぐから家族で営んできましたが、67年の歴史は重く、守っていかねばならないと強く感じるこの頃です。長く親しんだ神保町の地で、これからもお店を続けられるように頑張っていきたいと思います。
  • 基本情報
    住所 東京都千代田区神田神保町2−2 B1~3F
    電話 03−3261−4957
    営業時間 月~土曜 11:00~23:00(22:00L.O)
    日祝 11:00~21:00(20:00L.O)
    定休日 なし
    席数 200席
    1日の客数 日中 200~250人
    ディナー 150人前後
    主な客層 ランチ
    近隣の企業、出版社の方々
    ディナー
    上記に加え、接待が中心
    日祝
    お祝いや御法要、ご家族
    予算の目安 ランチ 1,000円
    ディナー 通常 5,000円
    上海蟹の時期 8,000円
    開業 1946年
    ホームページ
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