【焼きそば】 ~浪花家総本店~

(東京/港区)

たい焼きの元祖として知られる、麻布十番「浪花家総本店」の、もうひとつの名物が焼きそば。具は揚げ玉とキャベツだけといたってシンプルだが、食べてみると、甘酸っぱいソースの香りの奥から、まるで肉があるかのような豊かなコクが口いっぱいに広がる。その秘密は炒め方にあるそう。

クローズアップメニュー 
焼きそば 500円(税込)
かつて浪花家が大衆食堂だったころから、人気メニューだったという焼きそば。味の決め手は、近所の蕎麦屋から譲ってもらうという揚げ玉。高級ごま油と綿実油を使った本格的な揚げ玉で、いわゆる“天かす”とはまったく違ううま味があり、カリッとした歯ごたえがアクセントになっている。
  • 技のポイント1
    強火で一気に炒める
    鉄の中華鍋、またはフライパンをしっかり熱してからラードを入れ、溶けたら揚げ玉をたっぷり入れる。揚げ玉が焦げる寸前まで炒めたら、キャベツを入れて、しっかり炒める。
  • 技のポイント2
    麺には水分を加えず、ソースを吸わせる
    蒸し麺を入れる。このとき水分は入れないのがポイント。しばらくはバリバリと硬いが、やがてほぐれてくる。麺が箸に絡むようになったら、コショウ適量と少々のうま味調味料で味をまとめ、酸味をきかせた特製ウスターソースを回し入れる。しゃばしゃばのソースを麺が吸って、しっとり仕上がる。
  • 技のポイント3
    強火でソースを絡め手早く仕上げる
    全体にソースが絡んだら、皿に盛って青海苔を振り、紅ショウガを添えて出来上がり。強い火力でいっきに炒めるため、1人前なら5分かからずに仕上上がる。
  • ここがコツ!
    揚げ玉が焦げる寸前まで炒め、ラードに香りを移す
    ラードは、高級中華料理などでよく使うオランダ製のラードを使用。そこに揚げ玉を入れるが、ラードに揚げ玉の風味を全部移すつもりで、焦げる寸前まで炒めるのがコツ。そのためにも、必ず鉄の中華鍋またはフライパンを使うこと。テフロンは扱いやすいが、パサパサして焦げ臭くなってしまう。
     

オススメメニュー


  • たい焼き 200円(税込)
    餡子は北海道十勝産の小豆を8時間かけて炊き、しゃもじと手で丁寧に練り上げる。そのためほどよく小豆が潰れ、まろやかな口どけ。それをくるむ皮は、厳選した中力粉に近い小麦粉を、氷で冷やしながら水溶きしたもの。高温でいっきに焼き上げるため、極限まで薄くカリカリになる。焼き立てを頬張ると、かじった瞬間にパリッと皮が割れ、しっかり塩気の効いた濃厚な甘さと、豆の香りが口中に広がる。いったん冷めたものを、オーブントースターで軽く温めて食べてもおいしい。


  • 氷宇治金時 800円(税込・白玉トッピングで+100円)
    山盛りの氷の上に、京都の抹茶を使ったほろ苦いシロップと、たい焼き用の餡。シンプルな組み合わせだが、見るからに美しい宇治金時は、かき氷の定番。今回はそこに白玉をトッピングした。シロップはそのつど抹茶を立てて作るため、甘さの調整も可能。たい焼きの皮を作るのに氷を使うため、かき氷は通年メニュー。冬でも注文する人が多い。

  
          
  • お店紹介
    神戸将守さ
    浪花家の創業は明治42(1909)年。当初はカレーからそば、うどん、丼物等、安くておいしい町の大衆食堂だった。麻布十番といえば、今でこそ高級住宅街のイメージだが、かつては下町の風情が色濃く、主な客層も界隈で働く職人や労働者たち。そんな客たちの疲れをほぐす、庶民のおやつとして初代店主が考案したのが、たい焼き。日本のたい焼きの元祖ともいわれている。
    材料の餡は毎日仕込む。その量、約150キロ、たい焼きにして約2千個分! 餡は風味が大切なので、翌日には食べきるのが理想だ。「材料は小麦粉、重曹、砂糖、塩、水だけ。単純だからこそ、小豆の味と甘さのバランスが大切です。小豆は十勝産ですが、十勝産ならどれでもいいわけではない。野性味ある味の小豆でないと、うちのようなしっかりとした甘さの餡は作れません」と語るのは、4代目店主の神戸将守さん。さらに「1階でたい焼きの焼き上がりを待つときは、みんな並んでもらいます。子供も会社の社長さんも平等。それがたい焼き屋の面白いところです」と笑う。
    安心して子供に食べさせられるからとやってくるお母さんも多い。子供の頃から馴れ親しんだ、昔ながらの餡の味を守るため、今日も餡を練り続けている。
  • 基本情報
    店名 浪花家総本店
    住所 東京都港区麻布十番1-8-14
    電話 たいやき 03-3538-4975
    カフェ  03-3538-4976
    営業時間 10:00~20:00(ただし店内飲食は11:00~19:00)
    定休日 毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、第3水曜日
    席数 1階12席、カフェ24席
    1日の客数 400人
    主な客層 幼児から高齢者まで、あらゆる世代。
    予算の目安 800円
    開業 明治42年

    ※1階では、たい焼き、かき氷、焼きそばのみ食べられる。2階のカフェでは、たい焼きに煎茶やコーヒーなどの飲み物が付いた、たい焼きセット(600円)のほか、おしるこやうどん類も味わえる。
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。