【スープ】〜Tio Danjo bar(ティオ ダンジョウ バル)〜

(東京都/渋谷区)

日本に味噌汁があるように、世界の国々に独特の汁物、スープが存在します。今回クローズアップするのはスペインの代表的スープの1つ、「ソパ・デ・アホ」(ソパはスープ、アホはニンニクの意味)。素材、味つけ、食器やインテリアまで現地にこだわる「Tio Danjo bar」のそれは、スペイン産生ハムを用いた本格派で、同じくスペイン産のパプリカによる薫製香がもたらす"かつぶし感"が日本人の味覚をくすぐる味わい深い一品です。

クローズアップメニュー
ニンニクスープ(ソパ・デ・アホ)
生ハムのくず肉、骨、香味野菜を炊いたブイヨンが本場の「ソパ・デ・アホ」の基本。小鍋にオリーブオイルを敷いて、スライスしたニンニクをきつね色になるまでソテーし、生ハムの角切り、少し固くなった程度のバケットのスライス、ピメントン(スペインのパプリカ)を投入し、ブイヨンを加えたら、バケットが柔らかくなるまで煮込んで、最後に溶き卵を散らして出来上がり。見た目からはパンチのある味が想像されるが、意外なほどまろやか。現在「Tio Danjo bar」では提供していないが、リクエストは多く、冬場などにはメニュー入りする可能性が十分ある。
  • 技のポイント1
    ニンニクは弱火でソテーし香りを引き出す
    スープをおいしく仕上げる決め手はニンニクを弱火でじっくりとソテーし、香りを最大限引き出すこと。カリカリにはしないまでもきつね色になるまでじっくり炒めるのがポイントで、この行程で味のほとんどが決まってしまうという。急ぐと焦げたり、香りが飛んでしまったりするので、あくまでも根気強く見守ること。
  • 技のポイント2
    バケットにスープを染み込ませて十分にふやかす
    ブイヨンを入れた後は、バケットを加えて十分にふやかす。写真のようにレードルから垂れ下がるくらいになるのがちょうどよい煮込み具合。もともと古くなったパンを再利用する料理として発展したこともあり、1、2日程度置いて少し固くなったバケットを使ったほうが上手にできる。
  • 技のポイント3
    スープが沸騰した状態で溶き卵を回し入れる
    あらかじめ溶いておいた卵は、ほかの具材が十分煮えてから、スープが沸騰している状態で回し入れる。こうすることでスープの中に卵がきれいに散った状態になる。沸騰していないまま入れると卵とスープが液体として混ざり合い、濁ってしまうので要注意。
  • ここがコツ!
    ピメントンがもらたす“かつおぶし感”
    スペインのパプリカ「ピメントン」は、乾燥した赤ピーマンの粉末をスモークしたもので、日本のかつおぶしを思わせる独特の風味が特徴。「スペインらしさを出すのに最も適したスパイスがピメントン。使いやすく、現地でもとても多用されています」と店主の檀上桂太さんが言う。
オススメメニュー
マッシュルームの鉄板焼き 600円
肉厚の丸々したマッシュルームは人呼んで“Danjoサイズ”。千葉県の農場に栽培してもらっている特注品で水分は豊富だが焼いてもさほど縮まらないのが特徴だ。これの石突きを取り除き、くぼみのある側からソテー。裏返すときに出てくる汁ごと表側をよく焼きながら、くぼみに塩、刻んだ生ハムとニンニクを乗せてさらに焼き、仕上げにレモン汁と刻みパセリをかける。丸ごと口に入れれば汁もこぼさず食べられる。醤油味のように感じるが塩以外の調味料は使っていない。マドリードの有名なバル「メゾン・ド・シャンピニオン」の看板メニューとして知られる。
  • スペイン風ポテトオムレツ 600円
    ジャガイモ(メークイーン)、卵、タマネギ、塩だけで作るシンプルなメニュー。分厚く焼いて切り売りするのがバルスタイルで、おつまみでありながらお腹も膨らむボリュームが魅力。20cmのフライパンで1枚(10切れ分)を焼くが、このサイズでメークイン中玉10個、卵12個、タマネギ1個を使っている。
  • ナツメヤシのベーコン巻ソテー 600円
    ナツメヤシを蒸して種を除き、代わりに塩炒りアーモンドを詰める。これにベーコンを巻いて楊枝で押さえ鉄板で焼いたスペインではおなじみのおつまみ。ナツメヤシの甘味とベーコンの塩味、これらの粘りや弾力とアーモンドのカリカリ感など、諸々が舌の上で混ざり合う独特の味わいにはまる人も多い。
    スペインでは焼くだけの状態でスーパーにも売られている定番品。ナツメヤシの甘さ×ベーコンの塩気がくせになるお酒のアテメニュー。
  • お店紹介
    檀上桂太シェフ

    国内のホテルで洋食の修行を積み、スペインにわたったのが約25年前。そこで出会った「バル」の魅力いっぱいに、1995年にスペイン料理店を開業した。レストランに始まり、レストランとバルの2フロア展開を経て現在はバル一本。店主の檀上桂太さんは日本にバルという文化を輸入したパイオニア的存在である。
    スペイン産の素材を用い、日本人向けにアレンジすることなく現地の製法や味つけを再現。インテリアはもちろん、楊枝やナプキンなどの小物類まで現地のものにこだわった店づくりは、数多く訪れるというスペイン人客から「日本語以外はスペインそのもの」と絶賛され、スペイン通やバル愛好家にも一目置かれる存在となっている。サッカーやフラメンコ関係者の来店も多い。
    「バルは日本風に言えば立ち飲み居酒屋であり、その魅力はシンプルなスペイン料理を手軽に楽しめること」と檀上さん。バルブームともいえる時代を迎え、多様化するバルだが、当初のスタンスを維持し本場の味をおいしく安価で提供している。
  • 基本情報

    店名

    Tio Danjo bar

     (ティオ ダンジョウ バル)

    住所 東京都渋谷区恵比寿1-12-5 萩原ビル3-1F
    電話 03-6277-4114
    営業時間 17:00〜23:00(L.O)24:00(C)
    定休日 日曜・祝日
    席数 30名くらい
    客数 80〜100人/1日
    予算の目安 2,500円~
    主な客層 30~50代のビジネスマン中心
    開業 1995年にレストラン開業、2005年にバルをオープン
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。