【スープ】~洋食 黒船亭~

(東京都/台東区)

初代オーナー、須賀惣吉氏が上野・不忍池の近くに料亭「鳥鍋」を創業したのが明治35年。以来、時代にあわせて業態を変えながら同地で営業を続け、昭和61年に現在の『洋食 黒船亭』として開業。「気軽においしい食事ができる老舗洋食店として上野を訪れる人々に親しまれています」と語るのは4代目の須賀利光(専務取締役)氏。黒船亭のポタージュスープは、セットメニューに付くため、多くのお客様に愛されている一品。人気の秘訣は、甘みをおさえ素材そのものの美味しさを引き出した、飽きのこない味付けにあります。

クローズアップメニュー
本日のポタージュ(人参ポタージュ) 849円(税別)
人参、かぼちゃ、じゃがいも、さつまいも、コーンなど、素材はその時々で変わる「本日のポタージュ」。今回の素材は人参を使用。まず、鍋に油とベーコンを入れ、香りが出るまで炒める。次に、薄くスライスした人参、玉葱を加えてしっかり炒めてから、鶏ガラスープを入れ沸騰するまで強火にかける。この際、つなぎとして炊いたご飯を入れる。沸いたら少し火を弱め、20〜30分煮込む。その後、ミキサーにかけて裏ごし。生クリーム、バター、塩、ホワイトペッパー、その他調味料で味を整える。野菜から出る甘みは自然な甘さで飽きがこないので、他の料理に優しく寄り添う一皿となる。素材の野菜が甘すぎるときは「塩加減で、なるべく甘みを抑えるのがコツ」と、石出正浩総料理長。
  • 技のポイント 1
    とろみの秘訣は炊いたご飯
    黒船亭のポタージュのとろみの正体は、炊いたご飯。鶏ガラスープで野菜を煮込む時に、ご飯も一緒に入れて煮込む。少し火を弱めるので、煮込む間は常に鍋底をかき混ぜなくても大丈夫。ご飯のとろみは、くせがなく優しい味わい。ただし、じゃがいもやさつまいもなどイモ類のポタージュのときは、ご飯を使わない。
  • 技のポイント 2
    なめらかさは2段の裏ごし
    煮込んだスープをミキサーにかけた後、目の粗さの違う2種類(下段が細かい)の裏ごし器を重ね、裏ごしする。2段の裏ごし器を通すことで、よりなめらかなポタージュに仕上がる。「(円形の板と棒を組み合わせた)この裏ごし棒は、創業当時に特注したんじゃないかな。大量のときはこれが早い」(石出料理長)とのこと。
  • 黒船亭の味のかなめ 1
    鶏ガラスープ
    黒船亭の味のベースは鶏ガラスープ。材料は、1羽まるごとの鶏ガラ、まるごと人参、玉葱。一度沸騰したら弱火にし、あくをとりながら、5時間かけて澄んだスープをとる。鶏をベースにしているので、くさみがなく、いろいろな料理に使いやすい。
  • 黒船亭の味のかなめ 2
    粗(あら)デミ
    人参、玉葱、セロリなど、料理で使った野菜の切れ端や残った材料、シチューを煮たソースやルゥなどを鍋で煮込んで作るソース。必然的にいろいろなうま味が凝縮される。黒船亭のデミグラソースの味は、日々足されて作る粗デミのうま味もかなめとなっている。
オススメメニュー (その1)
黒船亭風魚貝の寄せ鍋 1,960円/ハーフサイズ 980円(税込み)
魚貝をふんだんに使った白いブイヤベース。油と小麦粉と牛乳でルゥを作る。冷蔵庫で冷やすとバターは固まるので油を使うのがポイント。ベーコンを炒め、次に玉葱、人参、セロリ、じゃがいもを炒める。魚貝でとったブイヨンにルゥを入れ、和風だし、塩、ホワイトペッパー、魚だしで味を整え、炒めた野菜を入れて煮込み、ベースのスープを作る。別の小鍋に、このスープを入れ、パーナ貝、ボイルタコ、ボイルイカ、蟹爪、生の白身魚、蛤を入れて煮る。エビとホタテは煮えすぎないよう最後に入れてさっと熱を通し、生クリームを入れて完成。ホワイトクリームのスープはさらっとしているが、魚貝のだしが濃厚に感じられる。ご飯のおかずにもなるスープ。
オススメメニュー (その2)
ハヤシライス 1,570円/ハーフサイズ 785円(税込み)
牛すじを焼いて圧力鍋で作るブイヨンと鶏ガラスープ、粗デミ、玉葱を30分圧力鍋にかけて作るオニオンブイヨンを合わせ、小麦粉と油で作ったルゥを入れ、火にかけたり下ろしたりを一週間繰り返す。この間に裏ごしを5〜6回行う。仕上げに、オーブンで焼いた“焼き粉”を合わせてできるデミグラスソースがハヤシソースのベースとなる。
まず、和牛バラ肉を炒める。圧力鍋に、炒めた牛肉、生マッシュルーム、にんにくのみじん切り、ケチャップ、トマトピューレ、ウスターソース、ブラックペッパー、塩、その他調味料を入れて、3〜4分圧をかける。別に、スライスした玉葱を炒め、デミグラスソースと絡める。圧力鍋で煮た具材に玉葱入りのデミグラスソースを合わせて完成。ケチャップの甘みと、トマトピューレの酸味が口中に広がる。ライスとともに、上野の漬け物の名店、「酒悦」のらっきょう、福神漬け、野沢菜が添えられ、甘くまろやかなハヤシライスのアクセントとなる。
  • お店紹介
    石出正浩 総料理長

    創業は明治35年。時代のニーズとともに、提供する料理や店の形態を変えて、昭和61年に『洋食 黒船亭』を開業した。黒船亭の開業時からのメニューづくりのコンセプトは、「ご飯のおかずになる料理」。「現在、食は多様化していますが、元来、日本人はご飯が好きな民族。これは50年、100年は変わらないニーズです」と須賀利光氏。その言葉通り、メニューにはご飯と一緒に食べたい料理が並ぶ。
    初代創業から数えると110年以上続く老舗店だが、長く続く秘訣は「客の満足度しかない」と明確だ。ただし、満足と感じるポイントは人それぞれ。そのため、「いつでも寄ってもらえるように午後の休み時間をとらない」「いろいろ食べてもらえるようハーフサイズメニューが豊富」など、さまざまな客のニーズに応える工夫を欠かさない。とはいえ、味に満足してもらえるのが一番重要なことは言うまでもない。取材時に、人気のメニューの秘訣を惜しみなく教えてくれた石出正浩総料理長の姿勢にも、味に対する自信とおいしい料理を食べてもらいたいという想いが溢れている。
  • 基本情報
    店名 洋食 黒船亭
    住所 東京都台東区上野2—13−13 キクヤビル4F
    電話 03-3837-1617
    営業時間 11:30~22:45(L.O.22:00)
    定休日 年中無休
    席数 42席
    主な客層 20代後半以降の方が多め
    予算の目安 ランチ 2,000円前後
    ディナー 3,000円前後
    HP http://www.kurofunetei.co.jp/
    開業 1986年10月(黒船亭)

     

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