【おでん】~おぐ羅~

(東京都/中央区)

銀座で創業して29年の「おぐ羅」。24年修行した銀座の老舗おでん店の味を受け継ぎ、醤油を使わないだしはきれいに澄んでいる。年間を通して、約30種余りあるおでん種はその7割が自家製というこだわりぶり。一つひとつ丁寧に下ごしらえしたおでん種が、大きなおでん鍋にきれいに並ぶ。

クローズアップメニュー
おでん
おでんだしの色はきれいに澄んだ関西風だが、味は塩味がきちんときいている関東風。味付けは塩、味醂、酒で醤油は使わない。
「塩が命。うまいまずいは塩加減。塩を入れすぎると味は戻らない」と、店主の小倉良久さん。客の口に入るときにちょうどよい味で出すため、季節によって微妙に塩加減を調整している。
100人分はこなせるという大きなおでん鍋には、自家製のおでん種が並ぶ。1つの鍋で煮込むのがおでんという考えから、下ごしらえしたおでん種がすべて一緒に煮込まれる。それぞれから出るうま味が混ざり合い、だしは深みを増す。このだしで炊いた茶飯に、さらしねぎをのせ、だしをかけていただくおでん茶漬けも絶品。
  • 技のポイント 1
    おでん種を下茹でした”元だし”も味のポイント
    おでんのだしは、創業以来、毎日、鍋に残っただし汁をこして保存したものに、毎朝、昆布と鰹節でとる一番だしを継ぎ足して作る。さらに、一番だしとともに、元だしと呼ばれる大根や、油揚げ、がんもなどのおでん種を下茹でした煮汁も一緒に入れる。おでん種のうま味が出た元だしも味を深めるポイント。
  • 技のポイント 2
    厚みのある岸の昆布と、血合いの少ない背節を使う
    継ぎ足される一番だしは、利尻昆布、函館の真昆布、枕崎の鰹節でとる。昆布は、沖よりも厚い昆布ができる岸の昆布を使う。鰹節は、血合いの少ない背節を使うことが上品なだしのポイント。鰹節の風味が前面には出ないがうま味はしっかりきいている。

人気のおでん種

  • 豆腐 500円
    おぐ羅の三大人気おでん種は、豆腐、大根、つみれ。豆腐は、午後4時の開店のために、12時からおでん鍋に入れて炊いている。だしの味の染みたふっくらした木綿豆腐に、水によくさらしたねぎをのせ醤油をたらしていただく。
  • 大根 500円
    大根は、中まで均等にだしが染みていることが大事。厚めの輪切りにして面取りをした大根を水で下茹でし、水にさらす。さらに、下味をつけるため大根だけだしで煮る。下ごしらえで5〜6時間。その後、おでん鍋に入れて一緒に炊くことで全体が均等に味のついた大根になる。
  • つみれ 500円
    おぐ羅のつみれは鯵を使う。鰯よりも一年を通して、脂ののりが安定しているから。三枚に卸して、あたり鉢であたる。味つけにはゆずを入れる。口に運んだ瞬間、そのゆずの風味がふわっと広がる。箸でつみれを割るとだしにもゆずの香りが移っておいしい。
  • ごぼう 600円
    皮をむいて、下茹でしたごぼうを切って、真ん中をくりぬく。合鴨に、玉葱、卵、片栗粉をあたり鉢であたる。味付けをした種を絞り袋に入れて、ごぼうの真ん中に詰める。合鴨のうま味が染みたごぼうは格別。
  • ロールキャベツ 600円
    キャベツの中は、鶏肉のたたき。鶏肉を茹でキャベツで巻き、そのままおでんの鍋へ入れる。くたっと煮すぎず食感が少し残る程度。何枚も巻いた厚いキャベツ層は、キャベツの甘みをたっぷりと味わえる。ほどよい炊き加減が、おいしさの肝。
  • 小松菜の湯葉巻き 600円
    下茹でした小松菜を湯葉で巻いた。食べたときに、シャキっとした小松菜の食感が残るようにおでん鍋に入れるタイミングを計っている。「おでん種の具は、彩りも大事。緑が入るときれいじゃないですか」と、小倉さん。
オススメメニュー
鰹のタタキ 2,000円
おでん以外のメニューも豊富。魚は毎日築地から仕入れている。「刺身、和え物、焼物、煮物、揚げ物…と、多様な味を楽しんでもらえるから、日本料理は楽しい」と小倉さん。
この日のオススメは鰹の叩き。薬味は、細くきれいなねぎ、みょうが、すり下ろししょうが。ねぎは、よく水でさらしているから、たっぷり薬味をのせて食べてもねぎの味が口に残らない。残った薬味に、おでん種の豆腐を入れれば、まさに湯豆腐。だしが染みた豆腐の湯豆腐は格別。初鰹と戻り鰹の時期だけの特別な楽しみ。
  • お店紹介
    店主 小倉良久
    暖簾をくぐって、ガラガラっと戸を開けると、「いらっしゃいませ」と、威勢のいい声で出迎えてくれる。創業29年。その間、継ぎ足し続けてきたおでんのだしがおぐ羅の味になり、これからも引き継がれていく。「火事でもだしだけは持って出ろ。だしさえあればまた店はできると言っている。それくらいだしは大事。だから、休みは大変なんですよ。店が休みでもだし当番が必要」と、小倉さんの声が引き締まる。
    飲食店であるからには、うまい物を、適正な価格で提供することは当たり前。今なお考えるのは、お客様へのサービスはなんだろうということ。「清潔さを保つことも大事なサービスの1つだといま思っています。店内、厨房、トイレに至るまで行き届いた掃除、そして、スタッフの笑顔、気持ちのよい声がお客様へのサービス」と、小倉さん。注文をすると「ハイ! かしこまりました!」と気持ちのいいスタッフの声が、カウンターに響く。
  • 基本情報

    店名 おぐ羅
    住所 東京都中央区銀座6−3−6 本多ビル地下1階
    電話 03–3574–8156
    営業時間

    月曜〜金曜 16:00〜1:00
    土曜    16:00〜21:00

    定休日 日曜・祝日
    席数

    カウンター14席 4名テーブル2席 個室 8名1室 4名1室

    主な客層 主に男性会社員
    開業 1981年
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