【麻婆豆腐】龍の子

(東京都/渋谷区)

本場に忠実な味付けから日本人好みのアレンジ、完全な創作料理まで、一口に中華料理といっても、お店によってもシェフによってもさまざまです。1977年に東京・原宿で創業した「龍の子(りゅうのこ)」では、和食や洋食の技術も柔軟に取り入れるなど独創的なアレンジで、一般的な四川料理をよりマイルドに、味わい深く仕上げて提供しています。おいしさのポイントは五味のバランス。旬の食材を効果的に用いながら、自家製調味料でおいしさを引き出し、長く、多くの人に支持される味をつくり出しています。
クローズアップメニュー 

麻婆豆腐 1,800円(ランチはスパイス控えめで1,000円)共に税込

やや固めに仕上げた特注の木綿豆腐と豚100%の挽肉でつくる、まろやかでコクのある一品。サラダ油をしいた熱い中華鍋で、豆板醤、豆鼓醤、ニンニク、辣油の底の一味唐辛子を合わせ、そこに麻婆豆腐用に仕込んだ挽肉の甘味噌炒めを投入。さらに基本のスープ(鶏ガラベース)、豆腐、調理酒、濃口醤油、胡椒、山椒粉、葱のみじん切りを加えて炒め、水溶き片栗粉でトロミをつけたら、麻婆豆腐専用辣油(以下、麻婆辣油)、山椒油を順々に入れてからめる。旬の食材を加えることも多く、写真は冬においしい葉ニンニク入り。ランチだけで1日60食も出ることがあるという大人気メニューだ。
技のポイント-1
 

挽肉は脂が透き通るまでよく炒める

挽肉の甘味噌炒めは、調理酒と醤油で下味を入れながら炒め、さらに甜麺醤を加えて水分を飛ばしてつくる。最も重要なのは、テンメンジャンを加える前に肉の脂が透き通るまでしっかり炒めること。これによって濁りや臭みが取り除かれ、よどみのない味に仕上がる。
技のポイント-2
 

自家製調味料で個性を出す
味のバランスを追求するため醤やオイル類の大半を手づくりしている。写真は麻婆豆腐で用いる調味料で、左上から麻婆辣油、山椒粉、ニンニク、辣油の底の一味唐辛子、胡椒、自家製山椒油、醤油、調理酒、自家製甜麺醤、自家製豆板醤、自家製豆鼓醤。麻婆辣油は、あまり辛くない韓国産唐辛子の粉末に紹興酒とた醤油を加えて下味と湿り気を持たせ、そこに朝天辣椒(四川唐辛子)で辛味をつけながら煮立たせたサラダ油を注いで混ぜ、1〜2日寝かせてから使う。
技のポイント-3
 

最後の5秒は燃えるような強火でこうばしく仕上げる

辣油に醤油を含んだり、挽肉をじっくり炒めたりと、それだけでも十分こうばしくなるが、極めつけは皿に盛る直前の燃え盛るような強火。5秒程度、鍋全体を炎で包むことでこうばしさを際立たせている。
オススメメニュー 1

担々麺 1,300円(ランチでは1,100円)共に税込

醤油ダレ、芝麻醤、辣油、刻み葱がベース。醤油ダレは醤油、酢、香辣醤を合わせたもの。芝麻醤は、じっくりローストした白胡麻をミンチ機で三度挽きし、そこに葱と生姜を入れて沸かしたサラダ油を注ぎ入れてつくる。この料理に使う辣油は「龍の子」で最もポピュラーなタイプで、サラダ油に山椒、朝天辣椒、桂皮、八角、陳皮、葱の青い部分、皮付き生姜を入れてゆっくり沸かして漉し、200℃以上に熱したら、水で湿らせた国産の一味唐辛子の上に注ぎ入れて1週間ほど寝かせて使う。麺は梘水(かんすい)の入っていない卵入り細麺。トッピングは挽肉の甘味噌炒め、搾菜みじん切り、ボイルした小松菜で、タレを割るスープとトッピングの挽肉は麻婆豆腐と同じものだ。タレ、スープ、辣油はくっきり二層に分かれているので、混ぜずに味の変化を楽しむか、全体を混ぜて食べるかはお好み次第。辛さは比較的マイルド。

オススメメニュー -2

ヨダレ鶏 2,300円(税込)

鶏肉は半日前に塩、胡椒、紹興酒で下味をつけ、葱、生姜を腹の中に入れてせいろで30分ほど蒸してつるしておく。これを翌朝ばらして冷蔵庫に保管し、注文ごとにカットして使う。皿に葱、鶏肉、ソースの順に乗せ、香菜の芯とスライスした赤ピーマン、砕いたカシューナッツをトッピングする。甘さ、辛さともに際立つソースは、上白糖、黒酢、シーズニングソース、十三香粉(13種類のスパイス粉)、スープを混ぜ合わせたところに、朝天辣椒と四川山椒を一緒にから煎りして挽いたパウダー、ピーナツパウダーを加えて伸ばし、最後に山椒油、胡麻油、担々麺と同じ辣油を入れてさっくりと和えてつくる。

オススメメニュー -3

天使海老と四川ピクルスの酸辣煮込み 2,800円 (税込)

四川ピクルスとは、野菜を白酒(パイチュウ)で乳酸発酵させた泡菜(パオツァイ)と呼ばれる家庭料理で、ここではニンニク、生姜、大根を使う。香りの強いタイプの辣油(こげる直前までから入りして挽いた朝天辣椒、鷹の爪、山椒に、香味野菜と16種の香辛料で香りをつけたサラダ油を注いで1週間ほど寝かせたもの)を熱し、辛くて黄色い海南唐辛子の醤と一緒に泡菜の細切りを炒め、基本のスープと白湯を加え、塩、少量の上白糖、穀物酢で味つけ。ここに、脚や背わたを取り除いて縦半分にカットし、軽く塩をふって片栗粉をまぶし高温のサラダ油で揚げた天使海老を入れて煮込み、水溶き片栗粉でトロミをつければ出来上がり。仕上げに香菜をトッピング。

  • お店紹介
    写真中央が安川哲二オーナー、左端が及川寛貴料理長。厨房スタッフと一緒に

    創業38年になる「龍の子」ではこれまで、名シェフとして知られる安川哲二オーナーのもとで多くの料理人が育ってきた。2012年より厨房のトップとなった及川寛貴料理長もその1人。「数ある食べ物の中でも中華料理が一番大好きで、自然にこの道に進んだのですが、専門学校に入学して初めて教えを受けた中華の講師が安川オーナーで、このときお手本としてつくってもらった麻婆豆腐があまりにもおいしくて! 翌日には面接を受けに行きました」と運命的ともいえる出会いを、当時の感動そのままに振り返る。
     こんな料理長がつくるメニューはもちろん、オーナーから歴代料理長に引き継がれたレシピを踏襲している。「二代、三代にわたって通ってくださっているお客さまもおられますので、そういう方々にも満足していただける味を維持しなければ」と、表情を引き締める。
     2015年9月、及川料理長は正式にこのお店を継ぎ、オーナーシェフになることが決まっている。内装や食器など、リニューアルしたい部分はたくさんあるというが、「長く愛されてきた味や雰囲気は大事にしたいと思います。5年くらいかけてじっくりと、自分なりの中華料理店を完成させていければうれしいです」と語り、積み重ねた歴史を含めて引き受ける準備を整えている。
  • 基本情報

    店名 龍の子
    住所 東京都渋谷区神宮前1-8-5 メナー神宮前 B1F
    電話 03-3402-9419
    営業時間

    昼 11:30~15:00(L.O)
    夜17:00〜21:30(L.O) 
     ※祝日のみ21:00L.O

    定休日

    日曜

    席数

    32席

    主な客層 老若男女幅広い
    1日の客数 昼 約110〜120人 
    夜 30人
    予算の目安 昼 1,200円 
    夜 5,000〜6,000円
    開業 1977年
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。