(東京都/渋谷区)
一口かじると溢れ出す、うま味たっぷりの肉汁と脂のコクを味わいながら、ぐびっとビールで流し込む。これぞソーセージの醍醐味! そもそもソーセージとは、牛・豚・羊の腸などに調味したひき肉を詰め、茹でたり燻製して作る保存食のこと。ドイツの食材のイメージだが、実はヨーロッパだけでなく、南北アメリカ大陸からアジア、アフリカ大陸まで、世界各地にその土地のソーセージがあり、それを使った郷土料理がある。今回は、そんな世界中のソーセージをいちどきに味わえるユニークなお店、恵比寿「ソーセージスタイル流行 hayari」のオーナー村上武士氏に、ソーセージへのこだわりについてうかがった。
-
クローズアップメニュー
-

-
本日の盛り合わせてお得なソーセージ 5種盛り 3,250円(税込)※写真の組み合わせは3,450円
常時10種類以上あるオススメソーセージの中から、好みのものをチョイス(3種盛り、4種盛りもある)。それぞれのソーセージに適した焼き方で仕上げ、マッシュポテト、ザワークラウトなどと、生野菜を添えて供する(付け合せは日によって変わる。写真は、ザワークラウト、茹でたひきわり小麦、生野菜)。ソーセージは1本80~100gとボリュームたっぷりだが、それぞれの味が異なるので、飽きることがない。世界各地の味の違いを確かめながら味わいたい。
-
-
技のポイント-1
-
ソ-セージごとに調理法は異なる。
(写真左下から)
■ヴァイスブルスト
ドイツを代表する白いソーセージで、あっさりとした味わい。茹でて食べることが多いが、焼いても美味。
■チューリンガー
ドイツ・チューリンゲン地方のソーセージ。ナツメグ、マジョラム、キャラウェイシードを効かせた爽やかな味わい。
■サッチクローコー
カンボジアのソーセージ。トウガラシの辛味が刺激的でジューシーな牛肉のソーセージ。
■チョリソ・アルヘンティナ
アルゼンチンのチョリソ。日本で一般的に流通しているチョリソは辛いものが多いが、これは牛肉と豚肉を使った、辛くない生ソーセージ。
■サイウア
タイのチェンマイ地方のソーセージ。レモングラス、コブミカンの葉、ニンニク、トウガラシ、ターメリックなどを効かせた、エキゾチックでスパイシーな味。
ひとくちにソーセージといっても、腸詰めしたあとに、蒸す・茹でる・乾燥させる・燻製するなどがある。当然、焼くときもフライパンで焼いていいもの、低温でゆっくり温めないと破裂してしまうものなどがあり、それぞれに適した調理法で焼き上げる。簡単そうに見えて、実は繊細な食材なのだ。
-
技のポイント-2
-
味が混じらないよう、最後まで注意を払う。
焼き上がったソーセージは、味が混じらないよう別々の皿で保温し、最後に一皿に盛り付ける。ここにもソーセージ職人ならではのこだわりが見てとれる。
-
オススメメニュー -1
-

-
サルシッチャとグリエールチーズのアッシュパルマンティエ
(ハーブソーセージと旬の野菜のポテトグラタン) 1,500円(税込)
サルシッチャはゴロゴロとした粗挽き肉と粗挽きの背油を使い、ローズマリーやセージなどのハーブを効かせたイタリアの生ソーセージ。
フライパンにサルシッチャをちぎり入れて、しっかり炒めた後、季節の野菜(今回はレンコン、春菊、菜の花)を炒め合わせる。最後にマッシュポテトを入れ、さっと混ぜ合せてから耐熱容器に移し、グリエールチーズ、パン粉を振りかけ、焼き色がつくまでオーブンで焼く。サルシッチャから滲み出た肉汁と油は、生の肉よりも熟成されたうま味があり、それがクリーミーなマッシュポテトに混ざり合って、まったりとしたおいしさに。春菊の香りやシャキシャキとしたレンコンの歯ざわりも楽しい一品。
-
オススメメニュー -2
-

セビーチェ (柑橘系の果汁でマリネした魚介のサラダ) 1,420円(税込)
太平洋に面し、アンデス山脈が連なる高地、アマゾン川流域の密林地帯など、多様な地形を有するペルーは、実は食材も多彩。そこでソーセージと並んで有名なのが、柑橘系の果汁で魚介類をマリネした「セビーチェ」。こちらではレモンやライムの果汁に、ニンニクやアヒ・アマリージョという黄色いトウガラシのペーストを加えたものを使用。油を使わない、ヘルシーなマリネサラダだ。今回はマグロ、サーモン、タコを使っているが、ホタルイカやホタテなどを使うことも。
また、魚介のうま味が溶け出して乳白色になった漬け汁は「レチェ・デ・ティグレ」(虎の乳)と呼ばれ、現地ではそれだけを飲むこともあるとか。最後の一滴まで味わってみてほしい。
-
オススメメニュー -3
-

-
スコットランドハギス (羊のホルモンのペースト) 1,000円(税込)
スコットランドを代表する料理。羊の胃袋に、オートミールや玉ねぎ、塩、コショウ、ナツメグなどとともに、羊のレバーやホルモンなどを入れ、2時間ほどゆっくりと煮る。茹であがった胃袋の中身はドロドロのゲル状になっており、それが「ハギス」。見た目はソーセージとほど遠いが、立派な詰め物料理=ソーセージの一種。臓物ならではのこってり感を、マッシュしたポテトとカブがほどよく中和してくれる。現地ではスコッチウイスキーとともに食べることが多い。
「ハギスはビニール袋とフライパンでも作れますが、胃袋を使った方がしっとり仕上がります」と村上氏。まだ牧草が残っているくらい、新鮮な羊の胃袋と内臓を使うのが、こちらのこだわり。胃袋や内臓の下処理を丁寧に行うことで、臭みのないマイルドな味になる。
-
-
お店紹介
-

左から、奥さまの村上真弓さん、オーナー村上武士氏、スタッフの佐藤智也さん
食品会社で肉類を扱う仕事を経て、居酒屋に勤務。2号店を任されることになり、そのとき着目したのが当時人気のあった豚肉料理。それも「ソーセージを手作りしたら面白いんじゃないか」と思ったのが、村上さんとソーセージの出会い。ところが「最初はB級グルメのイメージでしたが、勉強していくうちに、その奥深さにすっかりはまりました」。かくして2009年、ソーセージ専門店「ソーセージスタイル流行」オープンに至る。一番のこだわりは、結着剤や合成保存料を使わない、自然な味であること。「結着剤を使わないということは、肉の粘りだけでまとめないといけないのですが、温度が高いとその粘りが出てこない。季節はもちろん、肉質によっても粘りの出方が異なるので、その調節が難しいですね」。今は山梨県に工房を構え、専門の職人が1本1本丁寧に手作りしている。
その一方で、ソーセージならではのおもしろさもある。「もともとソーセージは、塩漬けした肉の保存食ですから、世界各地にその土地のソーセージを使った郷土料理がある。つまり、ソーセージを研究することは、その国の文化を研究することでもあるんです」。新しいソーセージの存在を知るたびに、ネットや文献を探し、さらには作り方を知る人に教わるなどして独学。しかも海外のソーセージについては、できるだけ現地の味を残しつつ、日本人にも受け入れられるギリギリの着地点を見ながら試行錯誤。おかげで、開店当初は8種類ほどだったのが、今ではオリジナルも含め、世界20カ国50~60種ものソーセージがあるというから驚きだ。さらには「腸に詰められるならなんでもソーセージになる!」とばかりに、生チョコレートやキャラメルを詰めた「デザートチョコレート」なる、独自のジャンルを考案したアイデアマンでもある。
今後の夢について、「故郷のソーセージや郷土料理を食べに、世界中の人にも来てもらえる店にしたいですね」と村上氏は目を輝かせて語る。
-
-
基本情報
-

店名 |
ソーセージスタイル 流行hayari |
住所 |
東京都渋谷区恵比寿3-48-5 グランデ恵比寿2F |
電話 |
03-5422-8467 |
営業時間 |
月~金18:00~23:00(L.O.)
土日祝14:00~18:00(ハッピーアワー。フードL.O.17:45)
18:00~22;30(L.O.)
|
定休日 |
不定休
(ホームページなどで確認を)
|
席数 |
25席
|
主な客層 |
地元の人と遠くから来る人の比率は半々ほど。落ち着いておいしいソーセージを食べたい大人の客が多い。 |
予算の目安 |
5,000円 |
開業 |
2009年11月13日 |
|
http://www.hayari-sausage.com/ |
※駅から遠いので、混みあう時間帯は特に、事前に電話確認を。
※2015年4月1日~7日、恵比寿・三越に出店。世界のソーセージを自宅で味わえる。
-
※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。