【エスニック】 マレーシア料理 馬来風光美食

(東京都/杉並区)

13席のこぢんまりとした家庭的なお店。「一人でも店を切り盛りできるこの広さが良かった」というマレーシア出身のエレンさんは、お母さんから教わったままのマレーシア料理の味を守っている。コンセプトは、マレーシアに住んでいた方が、ここに来て、マレーシアを懐かしんでもらえるような店。今回は、マレーシア料理のなかでも人気の海南鶏飯をクローズアップ。
クローズアップメニュー 

南鶏飯/ホイナムカイファン 900円(税込)

海南鶏飯のルーツは中国の海南島。海南島出身者が、マレーシア、シンガポールに広め人気となった。鶏スープで炊いたジャスミンライス(タイ米)に、茹でた鶏もも肉をのせ、ソースをつけながら食べる。
ジャスミンライスは、丸鶏を中火で40分茹でて作る鶏スープに、バンタンリーフ、レモングラス、生姜、ニンニク、塩を加えて炊く。丸鶏の代わりに鶏ガラでスープをとることもある。茹で鶏は、鶏スープで鶏もも肉を茹でる。茹であがったら冷水で冷やし、炊いたご飯に盛る。
しっかり塩味の効いたジャスミンライスに、シンプルに茹でた鶏もも肉がよく合う。辛い生姜ソースと、まろやかなブラックソースの2種類のソースを交互に楽しむと箸が止まらなくなる。
技のポイント-1
鶏だけで作るシンプルな鶏スープ
鶏スープは、丸鶏をまるごと中火で約40分茹でて毎日作る。鶏を茹でただけのスープは、鶏のうま味がシンプルに出ており、ご飯を炊くスープはじめ、料理のベースとなる。
 
技のポイント-2
ジャスミンライスの香りには、バンタンリーフが重要
ジャスミンライスに重要なのはバンタンリーフ。マレーシア料理にはよく使われる食材で笹の葉のような良い香りが特長。バンタンリーフを入れないと、香りだけでなく味も違ってくる。日本では冷凍のものが購入できる。
 
技のポイント-3

鶏もも肉の食感の秘訣は、注文ごとに茹でること

鶏もも肉は、注文が入ってから鶏スープで茹でる。茹で時間は4分程。「茹で立ては食感が良くおいしい」と、エレンさんのこだわりである。希望で、骨付きもも肉にもできる。骨付きもも肉は、うま味が強いので、マレーシアでは骨付きの方が人気。
技のポイント-4
 
つけダレは2種類。ピリ辛生姜ソースとブラックソース
ピリ辛生姜ソースは、生姜、にんにく、とうがらし(生はないので冷凍)をそれぞれ、少量の水ですり下ろしたものがベース(左写真)。この3種類を混ぜ、ごま油、レモン汁、オイスターソースで味付けをする。生姜の味が効いているが、とうがらしは辛みにパンチがあり、あとをひくクセになる味。
ブラックソースは、マレーシアにある有名な調味料だが、日本では入手困難のため、エレンさんが手に入る調味料で試行錯誤の上、インドネシアのケチャマニスと中国の黒醤油(右写真)を混ぜて手作りしている。ケチャマニスの甘みと、黒醤油のしょっぱさが混ざり、まろやかな味となる。
オススメメニュー 1

肉骨茶(パックッテー) 900円(税込)

マレーシアでは、専門店も存在する漢方の煮込み料理。エレンさんの故郷イポー等、中国系の住民が多い地域の華僑の郷土料理である。ハーブ、漢方をふんだんに使っているので体にもよい。エレンさんは、創業時から、日本ではなかなか味わえないこの肉骨茶を定番にしたかったとのこと。
使用する20種類に及ぶハーブと漢方のほとんどは、マレーシアで調達している。毎日、調合したハーブと漢方を煮出し、豚バラ、スペアリブを4〜5時間煮込む。味付けに、黒醤油を使用。この煮込んだ豚肉と漢方スープ、油揚げ、えのき、パクチーを鍋に入れ、具材が煮えたら出来上がり。スープは、ほんのり薬膳の香りがするが、豚肉のだしの甘みでまろやかな仕上がり。使用する漢方は、血液の流れを活性化するという当帰(とうき)。食べると体が温かくなる。

オススメメニュー -2

ペーパーチキン 1個 500円(税込)

付けをして煮込んだ鶏胸肉を、紙で包み、油で揚げたオススメの一品。鶏胸肉は、にんにく、生姜、オイスターソース、黒醤油で煮て1日置く。1日置くことにより、鶏肉はしっとりやわらかくなる。紙で包んで揚げるため、油っぽくなくさっぱりしている。黒醤油を使っているので色は濃いが、しょっぱくはなく、鶏肉のうま味がしっかり感じられる。

オススメメニュー -3

頭加里 3,000円(税込)

魚の頭がまるごと入った、魚のだしが効いているスパイシーなスープカレー。魚は、日本で手に入りやすい鯛の頭を使用。鯛の骨からは、だしがよく出る。鯛の頭は、生姜を入れて、下茹でしてくさみを取る。次に玉葱、レモングラス、カリーリーフ(乾燥)を油で炒める。マレーシア製の魚系カレーパウダーと、ココナツミルク、タマリンペーストを加え、さらに炒めてから小量の水とウコンを加える。最後に適量の水を入れて仕上げればカレースープは完成。このカレースープに、トマト、オクラ、なすを入れ煮込み、エビと魚の身を加えてから、鯛の頭を入れ、軽く煮込んだら完成。盛りつけはパクチーを添えて。

  • お店紹介
    エレンさん

    店主は、マレーシア北部イポー出身のエレンさん。日本人のご主人と出会い日本に来日。20代でお店を開業し15年目になる。エレンさんのお母様は、マレーシアで飲食店を営んでおり、12歳のときから店を手伝っていたので、料理はお母様直伝。開業するにあたり、アレンジはせず、本場と同じ味にこだわった。日本では現在でも、タイ料理、インドネシア料理、インド料理に比べて、マレーシア料理の店は少ない。開店当初の15年前は、本場と同じ味を出すための食材調達はいま以上に困難だったが、本場の味を食べてもらいたいというコンセプトを試行錯誤しながら守った。「アレンジしたら、お母さんに怒られるから」と、エレンさんは真剣な表情で言う。年に2回ほど帰国するときにマレーシアから食材を持ち帰るなどしているが、どうしても手に入らないものは、手に入れることのできる調味料で工夫して、本場の味を再現した。
    「もっとマレーシア料理を知ってもらいたい」というエレンさんだが、テレビ、雑誌の取材、本の出版などの依頼もあり、日本でマレーシア料理を広める一役を担う存在となりそうだ。
  • 基本情報

    店名 マレーシア料理 馬来風光美食
    住所 東京都杉並区天沼2-3-7 SAKAIビルディング B1F
    電話 03-5938-8633
    営業時間

    平日 18:00〜23:00
    土日 16:30〜23:00

    定休日

    月曜日

    席数

    13席

    主な客層 平日はビジネスマン、土日は家族。マレーシア在住経験のある方も多い
    1日の客数 約30人
    予算の目安 4,000円前後
    開業 2000年
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。