【餃子】神田餃子屋 本店

(東京都/千代田区)

古書店と学生の街として知られる神田神保町で、60年近く続く「神田餃子屋本店」の餃子は、国産の素材を使い、毎日丁寧に手作りがモットー。お腹を空かせた若者やビジネスパーソンはもちろん、素材の味を素直に生かした優しい味わいの、安心して食べられる餃子として、家族連れにも愛されている。今回はそんな老舗の味の理由を、二代目社長の森部賢さんにうかがった。
クローズアップメニュー 

黒豚餃子(6個)620円(税込)

子どもの手のひらほどもある大きさ、ぽってりと丸みのある形。見るからにボリュームたっぷり、なんと1個約50グラムもあるという黒豚餃子。ここ「神田餃子屋本店」には7種類の餃子があるが、この黒豚餃子だけで100皿以上売り上げる人気メニューだ。
小麦粉と水で作った皮に、具は黒豚のミンチとキャベツ、にら。なんともシンプルながら、一口かじると溢れだす肉汁のおいしさにびっくり。このジューシーさは、粗挽きと細引き2種類の肉を使いわけ、丁寧に練り上げることで生まれるという。小麦の甘みを感じる、厚めでもっちりとした皮といい、一皿で「食べた!」という満足感が得られる。
食べるときは、オーソドックスにしょう油7+酢3+ラー油小さじ1、あるいは酢+黒コショウでさっぱりと食べるのが定番だが、ガツンとにんにくが効いた店特製のにんにく辛し味噌をつけるのも、密かな人気。味の変化を楽しみながら、おいしくいただきたい。
技のポイント-1  ~ 皮 ~
なめらかで伸びの良い皮作りのコツは 練って、伸ばして、寝かせを5回
選び抜いた中力粉と水を混ぜ、練って、伸ばして、寝かせ……という工程を5回ほども繰り返してから、薄く延ばして、型で抜く。出来上がった皮は、まるで赤ちゃんのほっぺのようになめらか、それでいて驚くほど良く伸びる。小麦粉のほのかな甘さも感じられる。
皮は乾燥しやすいので手早く包む
皮は、その日出る分を考えて毎朝作る。すべての餃子の皮は同じ工程で作り、種類によって薄さや大きさを変えている。きわめて乾燥しやすいので、手早く包むのがポイント。
 
技のポイント-2  ~ 具 ~


豚ミンチの乳化した脂が野菜の水分を閉じこめジューシーな具に
豚肉は国産黒豚の前脚部分。身の部分の肉に比べて脂が少なく、クセがない。キャベツは水分が少なく甘みがある長野や群馬の高原キャベツ、にらは香りの強い栃木産を使用している。
まずは3ミリに挽いた黒豚のミンチに塩、コショウ、しょう油、砂糖、ニンニク、ショウガ、ラードを入れ、脂が乳化するまで5~6分練る。そこに野菜と6ミリの粗挽きにした豚肉を混ぜる。乳化した脂が野菜をコーティングし、野菜の水分を閉じ込めてくれる。味がなじむよう、必ず前日に行っているという具作り。重さにして、なんと毎日160キロほども仕込んでいる。
技のポイント-3 ~ 焼き ~

きれいに焼くには低温のうちに水から茹でる

鉄板に水を張り、餃子を並べる。いきなり熱湯にすると、気泡で餃子に穴が空いたり焼きムラができるので、鉄板が低温のうちに、水から茹でるのがコツ。
 
  
たっぷりの湯で茹でてからサラダ油でパリッと
ふたをして7~8分加熱し、中まで火が通ったらお湯を捨て、サラダ油をまわしかけ、再びふたをする。最初バチバチと低かった音が、パチパチと甲高くなったら、水分が飛んで焼き上がった合図。
オススメメニュー 1

海老にら餃子(4個)620円(税込)

にらをたっぷり入れた具の中央に、大きめの海老を丸ごと一尾乗せ、平たい丸型に整える。たっぷりのお湯で茹でてから、余分な水分を捨て、油を入れてかりっと焼き上げる。しっかりと焦げ目の入った皮のサクサクとした歯ごたえと、海老のプルンとした食感の対比が楽しい。

オススメメニュー -2

ぱりぱり餃子(10個)650円(税込)

薄くのばした四角い皮で、具を三角形に包む。鉄板に並べてから少量の水で蒸らし、最後に油を回し入れ、焦げ目がつくまで焼き上げる。焼き立てをかじると、パリッとした皮がなんとも香ばしい。薄いので2分もあれば焼き上がる。おつまみ感覚で、お酒のお供にオーダーする人が多い。

オススメメニュー -3

スープ水餃子(6個)600円(税込)

黒豚餃子よりもにらを多めにし、カキ油を入れて練った具を餃子形に包んでから、両端をつなげて丸い形にし、清湯スープで火が通るまで煮込む。清湯スープは、こちらの店では餃子以外の料理に使う基本の中華だしで、塩気は控えめ。仕上げにキュウリの千切りや万能ネギ、白髪ねぎを散らす。皮を破ると肉汁がスープに混じりあい、なんとも奥深い味わいに。なめらかでもっちりとした皮の食感もクセになる。

 
オススメメニュー -4

野菜タン麺700円(税込)

神田餃子屋本店の、もうひとつの看板メニュー。以前は透明な清湯スープ、現在は白濁した白湯スープを使用しているが、味の基本は創業当時のまま。
麺は、餃子の皮と同じ小麦粉にかん水を加えて、ほんのり黄色い平打ち麺。具はキャベツ、にら、ニンジン、きくらげ、玉ねぎ、もやし、たけのこ、そしてひき肉。一見こってりしていそうなスープだが、飲んでみると、野菜の甘みがしっかり溶け出した、まろやかでさっぱりとした味わい。食べても食べても麺が見えないほどのたっぷり野菜で、女性にも人気だ。

  • お店紹介
    右から、代表取締役の森部賢さん、スタッフの小川秀美さん、チーフの山田正文さん
     
    世界でも有数の古書店街であり、出版社や製本・印刷など出版関連の会社が多く、大学生が集まる学生街……。多彩な顔を持つ神田神保町の真ん中に、60年近く前にオープン。当時はまだ夜遅くまでやっている店も少なく、街で働く人たちが、いつでも安心して食べられるお店をと、餃子とタンメンの専門店としてのスタートだった。その後、支店ができ、客の要望に応えるうちにいつのまにかメニューも増え、今では専門店というより「気取らない街の中華屋さん」の雰囲気だが、「素材の味が素直に感じられる餃子を作り続けたい」というポリシーは、今も昔と変わらない。
    メニューの中心である餃子は7種類。キャベツとにら、豚肉という基本の材料はどれも同じながら、餃子の種類によって配合や味を微妙に作り分けている。さらに、「不思議なことに、皮と中身の具が同じでも、餃子を包む人や焼く人が違うと味も変わるんです。つまり手作りの度合いが高いほど、味に違いが出る。うちではそんな手作り感を残していきたいですね」と語るのは、二代目社長の森部賢さん。16歳のとき、先代社長が体調を崩して以来、試行錯誤しながら餃子を作り続けてきた。「安さを売りにしている餃子の店もありますが、うちは安心できる素材を使い、丁寧に手をかけて作っているので、安さには限界があります。けれどそのぶん、おいしさには自信があります」と語る。
    もちろん今も、ほとんど毎日店に出ているという森部さん。「大切なのは、お客さんの顔を見ること。おいしい餃子が作れているかどうかは、お客さんの顔を見ればわかりますから」。笑顔の奥に、長年真摯に餃子を作り続けてきた自信がうかがえた。
  • 基本情報

    店名 神田餃子屋本店
    住所 千代田区神田神保町1-4
    電話 03-3292-5965
    営業時間

    月~金11:00~23:00
        (L.O.22:30)
    土日祝11:00~20;00
        (L.O.19:30)

    定休日

    無休

    席数

    1階30席、2階40席

    主な客層 平日は近隣のビジネスパーソンや学生。休日は家族連れや買い物客、観光客。
    1日の客数 多い日は、餃子だけで1日300皿(黒豚餃子だけで100皿以上)
    予算の目安 ランチタイム900円。ディナータイム3,000円。
    開業 昭和32年

    ※焼き餃子、生餃子の持ち帰りもできる(価格はお店と同じ)
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。