【ステーキ丼】がぶ

(東京都/目黒区)

「がぶ」といえば、「がぶ丼」。最初は小丼サイズだったものが、「肉を増やしてほしい」という客の要望で、大輪の華が咲いたような豪華でインパクトのあるステーキ丼に進化。多くの雑誌、テレビなどで取り上げられ有名になり、現在では、来店者の約9割が「がぶ丼」を目当てに訪れる。「がぶ丼」のSOLD OUTにより店じまいをする日も少なくないという、人気の味の秘密に迫ります。
クローズアップメニュー
がぶ丼1.5 肉270g 1,990円(税込)
牛肉は、オージービーフのもも肉の一部を使用。ブロック肉のスジを取り、厚さ2㎝くらい(1人分)にカットする。
注文が入ってから、カットした肉の表面に岩塩をふり、フライパンにたっぷりの油をひいて焼く。表面はカリッと、中はレア状態に焼き上がったら、ほんの少しおいた後、スライスする。
どんぶりに、ご飯220gを盛り、キャベツの千切りを敷き詰め、スライスした肉をどんぶりのふち側からきれいに盛る。最後に、醤油ベースのタレを全体にかけ、中心には粗挽き黒胡椒をたっぷりふって完成。
まさに、肉の鉄火丼。油でカリッと香ばしく焼けた表面が、きめ細かく柔らかいレアの赤身肉を覆い、さっぱりと淡白な赤身肉にアクセントを与えている。甘過ぎない醤油ベースのタレは、日本人好みのあっさりした味。
「朝・昼・夜とも、次の食事に影響を与えない料理でありたい。ライバルはそば屋です」という店主・上村信一郎氏。その言葉どおり、ボリュームがありながら、完食後にすっきりした余韻を残すステーキ丼に仕上がっている。
技のポイント1

肉は、牧草を食べて育ったオージービーフ
開店当初より、赤身肉にこだわった。牛の本来の食性である牧草を食べて育ったオージービーフのもも肉の一部を使用。和牛には、肉と脂の混ざり合うおいしさがあるが、オージービーフの赤身肉は、肉そのものの味が味わえる。
技のポイント2

 
たっぷりの油と強火で表面を手早く焼く
焼き方のポイントは焼きすぎないこと。表面をカリッと、香ばしく焼くために、油は多めにひき、油を全体に回しかけながら強火で焼く。手早く表面を焼き、中心はレア状態で完成させる。中心のレア状態から、表面にかけての焼き具合はグラデーションになっている。
技のポイント3
 

維に沿ったスライスと、繊維を切るスライスで食感に違いを出す

繊維に沿ったスライスと、繊維を断ち切ったスライスを混ぜることで、同じ肉に食感の違いを出し、味に変化をつける。同様に、キャベツの千切りも、繊維に沿った千切りと、繊維を断ち切った千切りを混ぜている。
技のポイント4
 
の味を邪魔しないコクが控えめのタレ
タレは、濃い口醤油、砂糖、酒を煮て作る。肉の味を邪魔したくないので、必要以上にコクは出さず、少し煮詰める程度。さっぱり、さらっとしている甘塩っぱい醤油ベースの和風ダレ。
おすすめメニュー1

五種の肉ちらし1,700円(税込)
「がぶ丼を鉄火丼に例えるなら、ちらしもあっていいんじゃないか」と、上村店主が考案したメニュー。かぶ丼の肉、鳥照焼、焼豚、牛甘辛、そぼろと、自家製厚焼き卵、自家製ガリがのった肉ちらし。
鳥照焼はもも肉と胸肉、焼豚は肩ロース肉を、がぶ丼のタレで焼く。牛甘辛は、牛ももブロック肉をさばいたときに出る落し肉を、がぶ丼のタレをアレンジして焼く。そぼろは、豚の挽肉を、アレンジしたがぶ丼のタレで炒り煮にする。ご飯に、5種の肉と厚焼き卵を盛り付け、がぶ丼のタレ、中心にあらびき黒胡椒をかけ、自家製ガリをちらして完成。
味のベースはがぶ丼のタレで統一されているが、肉の違い、調理方法の違いによって味に強弱をつけている。湯引きせずスライスしたままの生姜を甘酢につけたガリは、辛さのパンチが効いていて、ピリッと味を引き締める。
おすすめメニュー2

ひな鶏の唐揚1/2 1,100円(税込)
「骨まで食べれられる“エコな唐揚げ”です」と上村氏。それは、客は骨まで食べてカルシウムが取れるし、店は骨がゴミにでないから。
ひな鶏を半分にさばき、調味料は一切入れず、圧力鍋で骨が柔らかくなるまで煮る。ひな鶏はフランス産を使用。骨まで食べることができるようにするには、1羽700gから750gくらいのサイズのひな鶏がちょうどいい。日本産にはこのサイズがほとんどないため、フランス産を使用している。
注文が入ったら、圧力鍋にかけ、柔らかくなった半羽の鶏に、小麦粉を水で溶いた衣をつけて油で揚げる。味は一切つけない。
塩、胡椒、山椒、ピンクペッパーを混ぜたスパイスとレモンを添えて完成。骨も柔らかく、違和感なく鶏肉と一緒に口に入っていく。鶏肉の香りが口に広がる。鶏肉の味を邪魔しないスパイスとレモンでさっぱりといただける唐揚げである。
  • お店紹介
    店主の上村 信一郎 氏

    気取らず、がぶっと食べてほしいから、店名は「がぶ」。儲けるというより、長く続ける店を念頭において1999年に開業。行列のできる店となった現在でも、16年前と変わらず奥様と二人だけで店を切り盛りしている。「自分が食べたいもの、家族に食べさせたいものをそのままお客様にも提供したい」と言う店主の上村氏。「がぶ丼」があまりにも有名だが、そんな思いを込めた多くの料理がメニューに並ぶ。自分が食べたいから自ら作る「自家製」とつく料理も少なくない。
    「食は喜びで、明日の自分を作るもと。料理人としてお客様へ提供する料理は、お客様の日常をちょっと素敵に演出する料理でありたい。自分へのご褒美として食べに来てもらえる料理であったらうれしいです」。気取らず、おいしい料理が食べたくなったら「がぶ」に行こう。
  • 基本情報

    店名 くいしんぼう がぶ
    住所 東京都目黒区目黒本町3-7-9
    電話 03-5722−1766
    営業時間

    平日 昼 11:30〜13:30 
       夜 17:30〜22:00L.O.
    日曜・祝日 (夜のみ)
         18:00〜21:30L.O.

    定休日

    土曜

    席数

    カウンター9席 
    テーブル2卓(2人用)

    主な客層 近隣の方より、遠方からの来訪者が多い。
    1日の客数 80人〜100人
    予算の目安 昼 1,000〜1,500円 
    夜 2,000円位  
    開業 1999年
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。