(東京都/台東区)
イタリアンやフレンチに比べ、日本人にとっては少々なじみの薄いロシア料理。「ボルシチやピロシキくらいしか知らない」という人も多いようですが、肉、魚、野菜、キノコ類など日本でもおなじみの食材を使った豊富なメニューが存在します。また、塩・コショウで軽く調味したシンプルな味付けのものも多く、意外なほど食べやすいのです。東京・浅草の「BONA FESTA(ボナフェスタ)」では、こんなロシア料理をより日本人の口に合うように工夫し、見た目も鮮やかに提供しています。
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クローズアップメニュー
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ロシア風キャベツロールのトロトロ煮 980円(税込)
“トロトロ煮”という言葉の通り、箸でも簡単に切り分けられるほどやわらかく煮込んだのが特徴の看板メニュー。仕込みからテーブルに出すまでにかかる時間は実に4日間。河岸から新鮮なキャベツを入手したらボイルし、流水にさらして青臭さを取る。水からあげたらよく絞り、適度に重ねてタネを巻く。それを炙って焼き固めるまでが1日目。翌日はネギやニンジンを合わせて作った自家製野菜ブイヨンで5時間煮込み、半日以上寝かせて味を染み込ませる。これをソースで煮込むのが3日目の行程。ソースはトマトベースでサワークリームと飴色に炒めたタマネギが入っている。煮込み時間は約4時間、その後はさらに翌日まで寝かせる。4日目は予約状況に合わせて小鍋で少量ずつ温めておく。オーダーが入ったら小鍋から出してオーブンで水分を飛ばし、表面を冷まして皿に盛り、別鍋で作った熱々のソースをたっぷりかけて温度の層を作る。そしてサワークリームで彩り、マッシュポテト、ニンジンのグラッセ、ホウレンソウソテーを添えたら出来上がり。店頭と通販でも販売している。
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技のポイント1
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キャベツは流水にさらして青臭さを除く
水から上げたキャベツはよく絞ってから、タネを巻く作業を効率よく行えるように、大きさを揃えて重ねておく。
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技のポイント2
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タネの味つけは塩・コショウでシンプルに
タネは牛100%の挽肉と飴色に炒めたタマネギ、つなぎのご飯をこね合わせ、塩・コショウで軽く味つけて作る。肉、タマネギともに、そのとき手に入る最高ランクのものを使用し、素材の味を活かす。
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技のポイント3
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煮込んでいる間は温度をしっかり管理する
巻き上げたキャベツロールはバットに並べてオーブンで長時間煮込む。この間、こげつかず、かつ均一に味がつくように、ときどき様子を見ながら温度管理をしっかり行う。このあと、半日以上寝かせて味を染み込ませてから、さらにソースで約4時間煮込む。
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技のポイント4
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かけるソースは別鍋でふんわり仕上げる
煮込み用のソースとは別に、仕上げにかけるためのソースを別鍋で作る。ここではタマネギペーストは使わず、トマトとサワークリームを合わせて塩・コショウで調味。小鍋で泡立ててふんわり仕上げ、キャベツロールを包むようにまんべんなくかける。仕上げの彩りはサワークリーム。
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おすすめメニュー1
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トマト風味のボルシチスープ 800円(税込)
炒めた野菜を、肉と野菜から作った自家製ブイヨンで煮込み、素材の甘味を引き出したうえで塩・コショウで調味した、シンプルながら味わい深いスープの代表格。同じ野菜でも、タマネギ、セロリ、ピーマン、ニンジン、ニンニク、ジャガイモ、キャベツなどは最初から煮込むが、ロシア料理で頻繁に使われるスビョークラ(ビーツ、サトウダイコンの一種)だけは、色が落ちないよう、最後に加えるのがポイント。熱くなった器を持ちやすいように取っ手に手づくりのナプキンを添えるなど心遣いもうれしい。
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おすすめメニュー2
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ツボ入りのクリームスープ 1,350円(税込)
わかりやすく言うと、「パイ生地でふたをして焼いたホタテときのこのクリームスープ」。クリームスープをあらかじめ用意しておき、オーダーを受けたらこのクリームスープを器に注ぎ、ソテーしたシメジとシイタケ、フレッシュホタテ、チーズを加え、パイ生地をかぶせてオーブンで焼き上げる。スープというよりソースとも言えるほどの濃厚さが魅力。
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おすすめメニュー3
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プリプリのジャボ海老のポテト巻き揚げ 2尾で2,100円(税込/写真は1尾)
大きなエビに塩・コショウで下味をつけ、溶き卵に通し、ポテト(メイクイン)の千切りで包んでラードで揚げた。マスタードとマヨネーズを合わせたソースのほか、レモン汁などで食べてもおいしい。付け合わせのアシタバの芽の素揚げの独特の風味がアクセント。
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お店紹介
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向かって左から2番目がホールマネージャーの溝口和美さん、右端が丸橋一弥料理長
号が昭和から平成に変わった1989年オープンした「BONA FESTA」。1つの料理の枠にとらわれることなくおいしいものを提供しようと「フランス風ロシア料理」と銘打ち、さまざまな手法や材料を駆使して独特の味を作り上げてきた。いまでは浅草を代表する料理店の1つに成長している。
勤続25年目を迎えた2015年、新料理長に就任した丸橋一弥さんは、「和食でも中華でも、良いと思った要素は何でも取り入れようと思っています。定番のメニューでも少し材料を変えるだけで一味も二味も違ってきます。そうやって常に新しい味を生み出していきたいと思っています」と語る。
「BONA FESTA」のホールマネージャー溝口和美さんは、「“やさしい味とやさしいサービス”、それが新料理長の個性ではないかと思います」と微笑む。朗らかな雰囲気づくりに務めるなど、熱い思いと工夫によって、選ばれる味をキープ。そのおいしさ、サービスの良さは口コミで伝わり、多くのファンを獲得している。
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基本情報
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店名 |
BONA FESTA |
住所 |
東京都台東区雷門2丁目6-9 ガーデンビル 1F |
電話 |
03-3847-5277 |
営業時間 |
昼
11:30~15:00(14:15L.O)
夜
18:00〜22:00(21:00L.O)
(日・祝日は17:00〜)
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定休日 |
水曜(祝日と重なった場合は翌日休業)
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席数 |
28席
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主な客層 |
常連客とその紹介、ランチは9割が女性 |
1日の客数 |
昼 30〜50人 夜 20人 |
予算の目安 |
昼 3,000円〜 夜 5,000円〜 |
開業 |
1989年3月 |
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※掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。