【ロールキャベツ】アカシア新宿本店

  1. (東京都/新宿区)
ロールキャベツといえば、コンソメスープやトマトソース、ホワイトソースで煮込んだ、上品な洋食メニューを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、ここ「アカシア」のロールキャベツは、とろりとしたソースで煮込んだ、ロールキャベツ入りシチューといった趣き。白いご飯との相性も抜群で、まさに“お箸で食べる洋食”を代表する一皿。昭和38年創業、老舗洋食店の看板メニューのおいしさの秘密を、店長の鈴木祥祐さんにうかがった。
クローズアップメニュー
ロールキャベツシチュー定食(ロールキャベツ2貫、中盛りライス) 820円(税込)
ロールキャベツは、今でこそアカシアの看板メニューだが、実は昭和38年の創業時にはなかったそう。「洋食屋としてスタートしましたが、当時の庶民にとって、洋食はまだまだ高級料理。そこで、もう少し誰もが食べやすいメニューをということで、開店から数カ月して加えたそうです」と語るのは、創業者の孫で、現在は店長を務める鈴木祥祐さん。
ロールキャベツはお箸で切れるほど柔らかく、バターやミルクを一切使っていないにもかかわらず、こってりとしたコクがあるソースは、白いご飯にぴったり。メニュー名の通り、“シチュー”と呼ぶのがふさわしい。スプーンを添えて供されるが、箸で食べる人、最初にご飯にシチューをかける人など、食べ方は人それぞれ。家庭の食事のような、気取りのなさがうれしい一皿だ。
技のポイント1
 
 

茹でたキャベツは芯を潰して巻きやすく

キャベツは芯をくり抜き、丸ごとたっぷりのお湯で茹でる。ときどきひっくり返しながら、茹であがって剥がれてくる葉を、すくって水に取る。芯まで茹であがったら、肉ダネを巻きやすくするため、軸の太い部分を肉叩きなどで叩いて潰す。
技のポイント2

  

煮込んだとき肉が硬くならない、絶妙の混ぜ加減

肉ダネの材料は、合挽き肉とみじん切りの生の玉ネギ。ここでしっかり塩味を入れるのが味のポイント。約1%の塩と、コショウを加えてよく練る。ただしあまり粘りが出ると加熱したとき硬くなるので、練り過ぎないのもポイントだ。1個当たり60gの肉ダネを、大小の葉を重ねたキャベツで巻く。キャベツ1玉から10個くらいのロールキャベツが作れる。
技のポイント3

  
ガラスープで煮込む。アク取りはほとんど不要
ひもで縛ったロールキャベツを、たっぷりの鶏ガラスープで煮込む。時間にして3~4時間。長時間煮込むので肉の臭みはまったく気にならないが、煮崩れには注意。また、途中のアク取りはほとんど必要ない。アクと一緒に脂分も取ってしまうので、かえってうま味までなくなってしまう。
技のポイント4
 
シチューのルーは、キャベツを煮込んだ鶏ガラスープでのばす
シチューの素となるルーは、小麦粉をラードで炒め、なめらかになるまでよく練ったもの。味付けは塩、コショウ、風味づけにみじん切りのベーコン。これを、ロールキャベツを煮たあとの、キャベツや肉のうま味が溶け込んだ鶏ガラスープで延ばす。最後に味を調え、温めておいたロールキャベツにかけて提供する。
おすすめメニュー1

極辛カレーライス 1,000円(税込)
初代社長が初めて行ったインドでヒントを得て、独自に作り上げたというのがこのカレー。ニンニクと鶏肉をじっくり炒め、肉に焦げ色がついたら取り出し、たっぷりの玉ねぎとショウガ、15種類以上ものスパイスを加えて、さらに炒める。そこにホールトマトとフォン・ド・ヴォライユ(鶏の出し汁)を加えてじっくり煮込み、最後に肉を戻してできあがり。
クローブやクミン、カルダモンなど、多彩なスパイスの複雑な香りとともに、焦げたニンニクの香ばしさとショウガの辛味が感じられ、インドカレーとは異なる個性的な味わい。名前通りの極辛だが、たっぷりのショウガのおかげか、食べると体中がポカポカ。「辛い物は苦手でもこのカレーだけは別」という客が多いというのもうなずける。
おすすめメニュー2

釜揚げソーセージソテー 580円(税込)
アカシアにはソーセージやハムのメニューも多いが、すべて二代目社長の弟が、本場ドイツで学んだ作り方による。なかでも人気の一皿がこちら。ケーシング(羊、豚の腸)に詰めたり、ハンバーグのようなスタイルだったこともあるが、工夫と改良を重ね、現在はバットに詰めてボイルするスタイルに。
材料は、豚の腕肉やモモのミンチと脂、香辛料。できあがったらスライスし、ベーコンとキャベツを煮た添え物と一緒に鉄皿に載せ、オーブンで炙って供する。噛むと口中に広がる肉のうま味。バットに詰める際、表面に塗った自家製マスタードが香ばしいアクセントになっている。しっかりとした塩味があり、ビールのお供はもちろん、ご飯にもぴったりだ。
 
おすすめメニュー3

煮込んだ帆立貝入りクリームコロッケ(3個) 780円(税込)
創業時からの人気メニューのひとつ。玉ねぎと小麦粉、牛乳で作ったベシャメルソースに、ロールキャベツシチューのルー、水煮して荒くほぐしておいた帆立を混ぜ、俵型に整形して油で揚げる。最後に自家製デミグラスソースをかける。
クリームコロッケに帆立は珍しいが、若いころ魚屋を経営していたこともある、初代社長の発想で生まれた。エビやカニほどの強い存在感はないが、帆立貝独特の甘さやうま味が感じられる、優しい味わい。また、帆立はざっくりとほぐすだけなので、たまにゴロンと丸ごと入っている“当たり”もあり、それもまた食べる楽しみになっている。
  • お店紹介

    /店長の鈴木祥祐さん 右/料理チーフの堀口建太さん


    東京オリンピックを目前にした昭和38年、新宿駅前の区画整理に伴い、現在の場所に移転して間もなく、それまでの定食屋から洋食店としてスタートしたアカシア。アルタ裏のにぎやかな一画にあって、歴史を感じさせる風格あるたたずまいもまた、新宿名物となっている。
    ハンバーグ、ハヤシライス、オムライスといった庶民的なメニューが並ぶ中、この店の代名詞ともいえるのが、今回ご紹介したロールキャベツ。初代の鈴木社長にとっては、幼い頃に母親が作ってくれた家庭の味である。それは、小学生の頃から作り方を仕込まれてきた料理でもある。
    その作り方をうかがいながら、つい何回も確認してしまったのが、「本当にそれだけ? 他に何か秘密のスパイスなど使ってない?」ということ。そのたびに首を横に振る鈴木さん。「キャベツは季節によって群馬や愛知など産地を変えていますが、旬のキャベツを使っているだけ。小麦粉も塩も、家庭にあるモノと変わりません。特別なものは何も使っていません」。ロールキャベツに限らず、カレーもコロッケも、ハムやソーセージも同様。デミグラスソースや粒マスタードまで、すべてが自家製だが、特に産地やブランドにこだわることなく、手に入る材料で、丁寧に作り続けている。
    今も、創業時からのスタッフがいる。社長自らお店に立つこともあれば、現在はドイツで店を構える二代目社長の弟が、ソーセージやハムの味のチェックに立ち寄ることもある。そんな家族的な雰囲気の中で、守り続けられている味なのだ。
  • 基本情報

    店名 アカシア新宿本店
    住所 東京都新宿区新宿3-22-10
    電話 03-3354-7511
    営業時間

    11時~23時(22時30分L.O.)

    定休日

    火曜

    席数

    60席

    主な客層

    中心は20代~30代。

    男女比はほぼ半々

    1日の客数

    平日は平均400人、多い日は700人

    予算の目安 昼800円~
    夜1,200円~
    開業 1963年
    ※冷製メニュー以外はテイクアウト可。

    ★アカシア羽田空港第2ターミナル店もあります。
    住所:東京都大田区羽田空港3-4-2
       国内線第2ターミナル4F
    電話:03-6428-9511
    営業時間:10時~22時(21時40分L.O.)
    定休日:無
    席数:21席
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