【すき焼き】玉ひで

  1. (東京都/中央区)
玉ひで(旧屋号 玉鐵)の軍鶏(シャモ)鍋は、醤油と味醂の割下でいただく軍鶏のすき焼きである。創業は1760年(宝暦10年/江戸時代)。玉ひでは初代から徳川将軍家に仕えていたため大飢饉の年であっても途絶えることなく醤油と味醂が手に入った。そのため玉ひでは、砂糖を使わずに醤油と味醂の割下で作る軍鶏のすき焼きを江戸時代から綿々と作り続け、現代に伝えることができた。いわゆる関東風すき焼きは玉ひでの味とも言える由縁である。この軍鶏すき焼きをベースに誕生したのが有名な玉ひでの元祖親子丼。今回は親子丼のルーツ、軍鶏すき焼きをクローズアップ!
クローズアップメニュー
元祖 軍鶏すき焼き 上 六三四コース 8,800円(税別)
軍鶏すき焼き、親子丼、江戸の頃から伝わる名代料理を含む料理3品、デザートを味わえるコース。
肉は、生後130日前後の東京軍鶏。すき焼きに使用する部位はもも肉、胸肉、ももの部位の皮、手羽の中程の肉が薄くついた皮目。もも肉、胸肉は、本来の味を味わってもらうため鶏皮は外している。野菜は、千住ねぎ、しらたき、豆腐。割下は、3種の醤油と2種の味醂を合わせる。
すき焼きは、客の前で店のスタッフが作り取り分ける。おいしく食べてもらうには具材ごとに最も適した調理手順があるからだ。それによって江戸時代より受け継がれてきた伝統の味を堪能できる。

軍鶏すき焼きの提供方法(1人前)

  • 1)土鍋に割り下を入れる。この土鍋は独自に開発したもの。
  • 2)火をつけて、割下が沸いたら、皮を入れる。皮は味が染み込むまでに時間がかかるため、最初に入れるが食べるのは最後。東京軍鶏の皮は、いくら煮てもやわらかくならない。続いてもも肉、胸肉の順に入れ、煮えたらお皿に盛る。温泉玉子をつけて食べる。
  • 3)次に煮るのは、千住ねぎ、しらたき、豆腐、皮目。皮目は皮を下にして鍋に入れる。煮えたらお皿に盛る。
  • 4)最後に、ねぎを練り込んで作ったつくねを入れ、煮えてきたらもも肉、胸肉を加える。お皿に、最初から煮ていた皮、つくね、もも肉、胸肉を盛る。最後に七味や山椒を薦めている。
技のポイント1

  

身の引き締まった軍鶏だから、徹底的にスジを取る

闘鶏用だった軍鶏を創業時から使用している。かつて、身の引き締まった軍鶏をやわらかく食べるには、スジを取り、肉の繊維を切ることが必要だった。現在使用している東京軍鶏は、味がよく、コクのある江戸伝統の風味が活きた軍鶏をめざし、研究の末、1984年に開発されたもの。昔の軍鶏ほど肉質は固くないが、伝統を受け継ぎ、徹底的にスジを取り、繊維を切って、他では類の見ないほど薄くそぐように捌く。
 
技のポイント2

  
割下は、数種の醤油と味醂を使い、香りを立たせる 江戸時代より醤油が途絶えることなく手に入ったからこそ250年以上続いた伝統の味。醤油は、玉ひでの誉れである。現在の割下は、3種の醤油と2種の味醂で作る。
割下は、最初、味醂の匂いが立つ。加熱し具材を加えると角が取れ、軍鶏のだしが混ざってまろやかな香りになる。煮続けることで徐々に割下も濃くなるので、ねぎを入れてねぎの香りと味を出す。割下の香りの変化も大切にして、具材の調理手順は考えられている。
 
技のポイント3
 
お客様に最後まで堪能していただくコースの組み立て
軍鶏すき焼きがメインといえども、客は玉ひでの元祖親子丼も楽しみにしている。だからこそ、〆の親子丼を最後までおいしくいただいてもらうために、軍鶏すき焼きの量はあえて少なめに設定している。お客様へのもてなしの心がさらに料理をおいしくする。
おすすめメニュー

吸い物(コラーゲンスープ/六三四コースの一品)
軍鶏を捌いた後に残る鶏ガラをふんだんに使い、何時間もじっくり煮て作る。鶏ガラのコラーゲンがたっぷり出ている。スープは冷めてもおいしく、のどをすっと通って行く。

親子丼(六三四コースの一品:ランチでは1,500円/税込み)
明治24年の頃、軍鶏鍋の残りの割下で卵を煮て、ご飯と共に食べる客の姿をヒントに五代目女将が親子丼を考案。
軍鶏すき焼きと同じ割下にもも肉、ムネ肉を入れ、火を通し、軽く溶いた卵を流し入れ、さっと火を通す。コシヒカリ系のご飯にのせて出来上がり。具材は、もも肉とムネ肉のみ。鶏肉と鶏肉から出るだしを味わってもらいたいので、一切他の具材は入れない。同様に卵も、卵が主張しすぎないように、味が強すぎないものを使用。
  • お店紹介

    代目 山田 耕之亮 氏とスタッフの土井みつ子さん


    初代・山田鐵右衛門は、御鷹匠の際、将軍家の御前にて、血を見せることなく骨と身を取り分ける包丁さばきで、鶴を奉納する御鷹匠仕事を行う家に生まれた。この技術を活かして、御鷹匠仕事をする傍ら軍鶏鍋の「玉鐵(現在の玉ひで)」を創業。当時の客は、大名など身分の高い人のみと推測され、格式の高さが伺える。幕末に入り、御鷹匠廃止の動きとともに軍鶏鍋専門店としての営業に専念していった。
    創業は宝暦10年、250年以上もの歴史がある名店だが、当主が元気なうちに跡継ぎに店の味を任せるのが玉ひでの伝承システム。山田氏も、先代の元で任され、伝統を受け継ぎつつも独自の玉ひでを作ってきた。「今できることを考え抜いてやる。すき焼きの提供の方法、親子丼のスタイルなど、時代やニーズに合わせることを心がけています」と山田氏。ただ伝統を守るだけでなく、時代とともに進化させ、次の代へと引き継ぐ重責を担っている。
  • 基本情報

    店名 玉ひで
    住所 東京都中央区日本橋人形町1-17−10
    電話 03-3668−7651
    営業時間

    昼 
    元祖親子丼 11:30~13:00
    (13時までご来店のお客様で終了)
    ランチ膳・コース 11:45〜14:00
    (L.O12:45 コースの方は並ばずにご入店ください)

    夜 コース料理
    平日 17:00〜22:00(L.O 21:00)
    土曜休日 16:00〜21:00(L.O 20:00)

    定休日

    年中無休(夏期、年末年始除く)

    席数

    200席

    主な客層

    老若男女問わず幅広い年代。女性客も多い。

    1日の客数

    親子丼約200人、すき焼き約50人

    予算の目安 昼 2,000円位 夜 10,000円位〜
    開業 1760年
    URL http://www.tamahide.co.jp/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。