【担々麺】中国料理 馥香(フーシャン)

  1. (東京都/台東区)
台湾の名店「馥園(フーイェン)」で腕を磨き、日本の有名店で料理長を歴任したオーナーシェフ・高木秋廣氏が、2004年に開業した「馥香」。名物は、本場仕込みの中国山西省流手延べ麺で作る特製担々麺。小麦粉を水でこねた生地を、左手と右手を巧みに使い細くのばして繰り出される麺が、まるで生き物のように宙を舞って煮立った鍋に吸い込まれる。麺は途中で決して途切れることなく、一本の麺として仕上がる。馥香の数ある名品の中でも人気の逸品・特製担々麺をクローズアップ。
クローズアップメニュー
馥香特製 担々麺 1,510円(税込)
元来、日本でも担々麺は汁なしが一般的だった。ある日、まかないの醤油ラーメンに食べ飽きた高木氏は、ふと思いついて醤油ラーメンに棒々鶏のタレを入れてみた。「おいしい!」。このまかない料理から、“汁あり”の馥香特製 担々麺は始まった。麺を自家製の山西省流手延べ麺にしたのも独創的な発想。

山西省流手延べ麺の作り方

  • 1)麺の生地は、強力粉、中力粉、水のみで作る。粉の割合は、強力粉7:中力粉3。この粉をふるい、水を徐々に加えて手で混ぜる。ほどよい固さになったらよくこね、塊にまとめ、ぬれ布巾をかけて1時間半寝かせる。加水率は50%が基本だが季節により多少変動する。
  • 2)1時間半後、力を入れてよく練り、再度、塊にまとめ、ぬれ布巾をかけて、1時間寝かせる。
  • 3)1時間後、さらによく練った後、少し細長い”なまこ”のような状態にして、表面には油を塗り、ラップを巻いて1時間寝かせた後、さらに練ってから直径5〜6㎝の細長い棒状に切る。



    5)注文が入ったら、麺をゆでる。人差し指くらいの細さになっている生地を、左手と右手を駆使し、さらに細く延ばしながら、湯が沸いている鍋に直接投げ入れて麺が茹であがる。職人の技による手延べ麺が完成。
  • 4)直径5〜6㎝の棒状の生地を、両手を使ってさらに延ばし、徐々に細くする。3度目で、人差し指くらいの細さになった生地を渦巻き状に並べ、表面に油を塗り、ラップをかけて1時間寝かせる。
スープの作り方

  

担々麺のスープは、上湯(シャンタン)の二番だしと、清湯(チンタン)を合わせる。割合は、上湯1:清湯3。
上湯は、中抜きの丸鶏(廃鶏)を半分にカットし、よく洗う。水50ℓに対し、25kgの丸鶏を使用。人参の皮、玉ネギ、長ネギを入れ、約10時間かけてスープを取る。この一番だしの後の二番だしを担々麺のスープに使用する。清湯は、ガラミンチを使用する。(写真は上湯)

具材の作り方

 
具材は、9ミリの豚の粗挽き肉、みじん切りのザーサイ、干しえび、粗挽き肉を炒める。豆板醤、酒、醤油、砂糖、スープを少し入れて煮詰める。最後に山椒と万能ネギ、自家製のラー油を入れて出来上がり。
タレの作り方
 
タレは、油、ラード、白すり胡麻、醤油、酢、酒、粉山椒、ピーナツバター(無塩)、ラー油を使用。油、ラードを200℃くらいに熱し、白すり胡麻に入れて混ぜる。白すり胡麻が少しこげるくらいがいい。これに合わせておいた調味料を混ぜる。
仕上げ
担々麺のタレ90ccに、スープ280ccを合わせ、茹でた手延べ麺、挽肉の具材、茹でたもやし、水菜、白髪ネギ、白髪ネギに山椒を少しふり、自家製ラー油を回しかけて完成。それぞれに作った手延べ麺、スープ、タレ、具材等が最後に1つのどんぶりで合わさったときに最高の味に調和するように、混ぜる割合、味付けの加減、香りにいたるまで計算尽くされている。さらさらとしたスープは辛いが、酢の酸味ですっとのどを通り、後をひく。麺はツルツルで、もちもちの食感がたまらない。最後まで途切れることのない長い1本麺には驚かされる。
技のポイント1

麺の生地をこねる方向を変えないこと
生地をこねるとき、生地を縦に置いたり、横に置いたりして、こねる方向を変えない。最初から最後まで同じ方向にこねる。生地が広がって来たら、左右を内側に折って再度こねる。

技のポイント2
 
練りと寝かせを繰り返すことが細く伸びるもちもち麺を作る
何度も練り→寝かせを繰り返すことにより、粉のグルテンは伸びの力を増す。両手で左右にぎりぎりまで延ばした生地も、そのまま数分おいた後、もう一度延ばしてみると、すーっと前回よりも伸びる。
技のポイント3

スープを取る火加減は、鍋の表面がボコボコするくらい

スープを取るときは、最初は、全開の強火でしばらくアクを出し、アクを捨てる。その後、鍋の表面がボコボコするくらいの火加減で加熱。清く澄んだ上湯と、短時間でだしがぎゅっと出る清湯と、別々にだしを取ったスープを合わせることでうま味は増す。(写真は上湯)
技のポイント4

挽肉を炒めたときの最初に出る油は捨て、味はあまり濃くしない。
豚挽肉を炒めた時に最初に出る油は、おいしくないので油切りを使って捨てる。味付けは、材料の干しえびのうま味が十分に出るため、あまり濃くしない。
技のポイント5

担々麺のタレの隠し味は、ピーナツバター
ピーナツバターは、タレの隠し味。白すり胡麻だけよりも、なめらかでまろやかになる。
オススメメニュー1

彩々冬野菜のあっさり旨味炒め 1,510円(税込)
季節ごとの野菜を使った定番メニュー。
まず、かぼちゃ、銀杏、紫いもを低温で油通した後、エリンギ、ズッキーニ、赤ピーマンをさっと油通しする。次にカリフラワー、ブロッコリー、グリーンアスパラ、ホワイトアスパラを湯通しし、油通しした野菜も一緒に入れて油抜きをする。発芽ニンニクと下ごしらえした野菜を、塩、ミネラル水、砂糖でさっと炒め、仕上げにねぎ油をかけて出来上がり。野菜のうま味を活かすために、スープは使わない。
オススメメニュー2

きなこ豚のスペアリブの黒酢ソース和え 酢豚風 1,730円(税込)
宮崎県都城市のきなこ豚のスペアリブを使用。スペアリブを一度茹でこぼした後、八角、ニッキ、山椒、塩を入れ、2時間やわらかくなるまで煮ておく。注文が入ったら、スペアリブを温め、片栗粉をまぶして、高温の油でさっと揚げる。スペアリブを、黒酢、酢、醤油、中国醤油、砂糖、はちみつ、片栗粉でとろみをつけたソースで絡めて出来上がり。とろっとした照りを帯びた黒酢ソースの甘酸っぱい香りが食欲をそそる。
オススメメニュー3

馥香特製 カキの春巻き(2本) 870円(税込)
毎年人気の冬限定メニュー。ボイルしたカキを、オイスターソース、酒、醤油、砂糖のタレに浸し、下味をつける。ポイントは濃いめのタレ。濃くしないとカキに味がのらないからである。その後、カキに片栗粉をまぶす。春巻きの皮で、カキ、ねぎ、生姜、シャンツァイを巻いて油で揚げる。ほんのりクミンが香る塩を添えて。からめた下味の香りが、カキの味を引き立てる。
  • お店紹介

    オーナーシェフの高木秋廣氏(写真中央)とスタッフの皆さん


    高木氏は千葉県出身。子供のころ、海の幸は豊富にあったが、「肉」はあこがれの存在だった。料理が好きだったこともあり、この「肉」へのあこがれが料理人への道へのきっかけに。
    調理師学校を卒業後、「東條會舘」に入社して中国料理の道を志した。いつかは本場中国へ行きたいという想いをいだき、27歳からテレビ講座で中国語を学び始める。38歳のときにその想いが実り、東條會舘に籍を残しつつ台湾へ。この時、すでに中国語は日常会話に不自由のない程度に上達していた。台湾の名店「馥園」で腕を磨き、帰国後に復職して東條會舘の料理長に就任。その後、ホテルのレストランの立ち上げに尽力し、そこでも料理長に就任。さらに、経営面を勉強するために外食産業企業を1年間経験してから、2004年に独立し馥香を開業。若い頃から、高木氏の将来を見据えた着実な考えと行動が現在に繋がっている。
    それは味についても同様である。馥香には、メニュー1つひとつ、大切に組み立てられた料理が並ぶ。安心、安全、おいしい料理を念頭に、食材を活かすため使う、食材を殺してしまうから使わないなど、料理に合わせて、調理方法、調味料等は考えぬかれている。そこに、長年の経験の積み重ねからなせる技が加わる。高木氏の調理、料理に対する信念・神髄が貫かれた中国料理の名店である。
  • 基本情報

    店名

    中国料理 馥香(フーシャン)

    住所 東京都台東区柳橋2-14-2 アリス・マナーガーデン浅草橋1F
    電話 03-5833-6555
    営業時間

    昼:11:30~14:30(LO 14:00)
    夜:17:30~23:00(LO 21:30)

    定休日

    日曜日(祝日は営業)

    席数

    46席

    主な客層

    昼は8割が女性で夜は7割が男性

    1日の客数

    昼:80名位 

    夜:20名位

    予算の目安

    昼:1,200円位 

    夜:7,000〜8,000円位

    開業 2004年12月
    URL http://www.fuxiang.jp/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。