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(東京都/新宿区)
多種多様な食材をさまざまな技法で調理し、大皿から取り分けるスタイルで提供されるのが一般的な中国料理ですが、「花彫酒家」では、1人で来店してもたくさんの料理が楽しめるよう小皿料理を基本としています。しかもすべてのメニューが手づくり。老酒の酒糟を使ったザオユゥ(糟油)をはじめ、厨房で仕込んだユニークな調味料なども駆使しながら他店にない味を追求しています。
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クローズアップメニュー
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ショーロンポー 1客(3個入り)630円(税別)
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数あるメニューの中でもとりわけ手間がかかっているのがこのショーロンポー。同じ点心でもシュウマイや春巻きと違ってつくり置きがきかないため毎日1日分ずつつくる。夕方になると小麦粉を練って生地をつくり、30分程度寝かせたらさらに練って伸ばし、皮をつくる。餡もまた凝っており、出来上がるまでは2日がかり。1日目にはスープの元となるピートン(皮凍;豚の皮を煮込んだスープをゼリー状に固めたもの)を仕込み、2日目に豚挽肉やエビで作る餡のベースにミンチにしたピートンを混ぜて餡を完成させる。この餡を皮で包みせいろで蒸すと、ピートンが溶け、独特の味わいのスープが皮の内側にたまる。熱々のうちに皮を少しかんで穴をあけ、まずスープを吸い、その後、皮と餡を一緒に食べるのがおすすめ。開店後2、3時間で売り切れてしまうこともあるほどの人気メニューだ。
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技のポイント1
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スープの味の決め手は豚の皮で作るピートン
表面の毛や裏側の脂などを丁寧に取り除いた豚の皮を、大鍋に沸かした湯で茹でる。皮が柔らかくなったらざるにあげてよく洗い、ミンチにする。これをさらに、2倍に薄めたベースのスープに入れ、叩いたネギ・ショウガと一緒に煮込む。スープが半分程度になるまで煮込んだら型に入れて冷まし、冷蔵庫でゼリー状に固める(写真右部分)。これがピートンで、ミンチにして餡に混ぜる(写真左部分)。茹でた皮を煮込む際に使うベースのスープは、厨房の寸胴鍋に常備しているもので、ひね鶏・鶏ガラ・もみじ・豚ガラ・野菜類などでだしをとっている。
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技のポイント2
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豚挽肉の餡とミンチにしたピートンを2:1で合わせる
餡のベースは、豚挽肉やエビなどの材料を合わせ、上海で買い出しする酸味の少ないシャァヅゥジャンユゥ(蝦子醤油)、ショウガ、塩、砂糖、ごま油などで味をつける。これに、ミンチにしたピートンを混ぜて餡を完成させる。挽肉とピートンの割合はおおよそ2:1。
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技のポイント3
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両端の細い綿棒2本で皮を立体的に伸ばす
強力粉にわずかに薄力粉を混ぜた粉をぬるま湯でしっかりと練り、一度寝かせてさらに練る。これをショーロンポー1個分ごとに切り分け、一つひとつ丁寧に伸ばしていく(左写真)。使用する綿棒は両端が細くなったタイプ2本。18年前に上海で購入し、1カ月ほどサラダ油に浸け、その後は水分を一切吸わせないように厳重に管理してきた大切な調理道具で、これなくして自慢のショーロンポーはできないという。生地の上で綿棒2本を転がすと不思議なことに生地が回転。綿棒の太い部分を皮の端まで転がすことで端の部分が薄く、真ん中に厚みのある皮ができる(中央写真)。
手に持った皮に餡を乗せ、ひだをつけながら手早くまとめていく(右写真)。皮の真ん中が厚く、周囲が薄いので、まとめあげたときに皮の厚さがほぼ均等になり、バランス良く蒸しあがる。
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おすすめメニュー1
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タンタンメン 小皿(1~2人)530円 中皿(3~4人)1,060円(税別)
手間ひまかけてつくったオリジナルのごまソースの味わいが光る、ランチタイムの一番人気メニュー。白ごまを入れた鍋を振り続けながら時間をかけて炒り、冷ました後ミンチにかけること2回。これを油と混ぜてミキサーにかけるとごまソースの出来上がり。丼に、このごまソースと粗めに刻んだザーサイ、細かく砕いた部分と形を残した部分のある干しエビ、刻みネギ、自家製ラーメン醤油、酢を入れ、最後に自家製ラー油を加えてベースのスープで割る。そこに、茹でた特注の細麺を入れ、醤油を加えて肉汁がなくなるまで炒めた豚挽肉、湯通ししたホウレンソウをトッピング。濃厚ながらさっぱりしており、スープも無理なく飲み干せる。
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おすすめメニュー2
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白身魚の老酒炒め 小皿(1~2人)680円 中皿(3~4人)1,360円(税別)
老酒の酒糟を使って手づくりしたザオユゥ(糟油)に、薄く切って下ごしらえした白身魚を、クワイ、キクラゲと一緒に油で揚げ、さらにネギ、ショウガ、砂糖、塩、うま味調味料などで調味しながら炒めた。ザオユゥの材料は、老酒の酒糟のほかにネギ、ショウガなどの薬味、ハッカク、サンショウ、ケイヒ、チンピといった香辛料、煮詰めた砂糖などで、これらを混ぜて常温で長期間保存し、香りが十分出たら布で漉し、瓶に移して保存する。ザオユゥを使った料理は、立ち上る豊かな香りが最大の特徴。酒糟は年に一度は訪れる上海で購入している。
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おすすめメニュー3
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鶏腿肉の上海ソース漬け 小皿(1~2人)580円(税別)
ほどよく茹でた鶏モモ肉を、ザオルーという老酒ベースの塩味の調味料に浸し、スライスした前菜。卓上に常備している自家製ラー油(本格、辛口の2種)をつけて食べるのがおすすめ。
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お店紹介
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二人三脚でお店を発展させてきたオーナーシェフの西村浩利さんと妻の友見さん
「私は中国料理のシェフにして大の酒好き。そこで中華居酒屋をつくり、少しずついろいろな料理をつまみたいという酒好きの気持ちを汲んで、小皿料理をメインにしました」と言うのは、「花彫酒家」のオーナーシェフ、西村浩利さんだ。
東京・銀座の三笠会館で経験を積んだあと、職場結婚した妻の友見さんの故郷、上海でⅠ年間、先生についてみっちり学んだ。今回紹介したザオユゥはそのとき身につけたもの。「ザオユゥは中国では日本の醤油と同じくらいポピュラーですが、市販品が豊富なためレシピを知る人は現地のシェフにも少ないのです。また、日本ではほとんど見かけないので、存在すらあまり知られていません。そんな調味料を使えば珍しい料理ができるだろうと、先生が教えてくれました」と西村さん。いまも先生のレシピに忠実に丁寧な仕込みを続けている。
こうしたオリジナルの調味料も去ることながら、「花彫酒家」のおいしさの陰には、ホール担当の友見さんの厳しいチェックがある。「シェフのつくった料理は必ず私が試食し、正直な意見を言います。また、ホールは厨房の眼ですから、お客さまの反応を見てシェフに伝え、改善を重ねています」と友見さんが言う。
アルコール類も豊富に揃えているが、特に人気があるのはかめ出し紹興酒。ボトル、カラフ、グラスなど、どんなかたちであれ注文を受けてから、かめから直接注いで提供する。24ℓのかめが1週間で空になるほどの人気で、客席でカンカンと音をたてながら新しいかめを開けると、多くの人が写真を撮ったり拍手をしたりと、とても喜んでくれるそうだ。
おいしい料理とこうした楽しい演出によって、常連客の集まる人気の居酒屋に成長してきた「花彫酒家」。飲食店ひしめく新宿に根ざし、2017年には20周年を迎える。
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基本情報
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店名 |
花彫酒家 |
住所 |
東京都新宿区新宿3-3-9 伍名館2F |
電話 |
03-3355-0210 |
営業時間 |
ランチ11:30~14:00
居酒屋17:00~24:00
(土曜日は〜23:00)
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定休日 |
日曜・祝日
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席数 |
35席
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主な客層 |
ビジネスパーソン 大半は常連
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1日
の客数 |
ランチ120人
ディナー80〜100人
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予算の目安 |
ランチ800円
ディナー3,000円 |
開業 |
1997年10月13日 |
HP |
http://hanahori97.g1.xrea.com/ |
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