【ベトナム料理】kitchen

  1. (東京都/港区)

諸外国の料理を現地のレシピそのままに提供するか、自分なりのアレンジを加えるか、シェフの考え方によっても客層によっても、そこは大きな分かれ目かもしれません。東京・西麻布の「kitchen」では、本場の手法を大事にしつつも日本人女性シェフ・鈴木珠美さんのフィルターを通し、南ベトナムと北ベトナムの“いいとこ取り”をした料理を提供。美しい盛りつけと相まって、女性客を中心に高い評価を受けています。
クローズアップメニュー

生春巻き 1本 500円(税込)

モチモチした食感とたっぷりの野菜、肉やエビの豊かな風味など、魅力がいっぱいの大きな生春巻き。モチモチ感の秘密は、具とともに巻くバイン・ベオという蒸し餅のようなもので、本来は具を乗せてタレで食べるものだが、食感を高めるためにこれを利用した。ライスペーパーの中には、紅茶で煮て酢醤油に漬けこんだ豚肩ロース、茹でエビ、大葉、キュウリのスティック、万能ネギ、サニーレタスがぎっしりと詰まっている。自家製ヌクチャムなど卓上に常備した4種のタレから好きなものをつけて食べる。
技のポイント1
 
 

米粉を水で溶いて蒸したバイン・ベオでモチモチ感を強調

バイン・ベオは、インディカ米の米粉を水で溶いて小皿に入れて蒸したもの。蒸気が吹き上がるようになったら蒸し上がりの目安。やわらかいお餅のような食感が魅力。
技のポイント2

  

ライスペーパーの上に最初にバイン・ベオを乗せる

蒸し上がったバイン・ベオを手で半分に割り、水で戻したライスペーパーに並べ(左写真)、その上に左右対称になるように具を順々に乗せていく(中央写真)。表面にエビの鮮やかな赤が透けて見えるようにきっちりと巻きあげたら(右写真)、半分に切って皿に盛る。
技のポイント3
 
 

自家製ヌクチャムなど4種のタレで好みにアレンジ

テーブルには4種のタレを常備(上写真)。春巻きをはじめさまざまな料理に自由につけられる。白ごまの浮いているのが柚子胡椒入りポン酢、時計回りに自家製ヌクチャム、市販のタイのチリソース、豆板醤入りマヨネーズ。自家製ヌクチャムは、グラニュー糖、水、ヌクマム(ベトナムの魚醤)、レモン汁を3:2:2:3の割合で混ぜ、ニンニク、トウガラシを適宜加えてつくる(下左写真、下右写真)。
 

 

おすすめメニュー1

サイゴンの揚げ春巻き 1,200円(税込)

一口サイズの揚げ春巻き。ベトナム北部で使われているパラフィンのような極薄のライスペーパーで巻いているのが大きな特徴で、中身は豚挽肉、カニ、みじん切りにしたニンニク、タマネギ、ニンジン、キクラゲを混ぜて塩こしょうで調味したもの。これを、バジル、ミント、パクチーと合わせてサニーレタスで巻き、好みのタレにつけて食べる。春巻きそのものは北部スタイル、たっぷりの野菜を添える提供の仕方は南部スタイルで、南北折衷のオリジナルメニューに仕上がっている。ライスペーパーで包むところまで仕込んだら冷凍。注文を受けるごとに冷凍のまま揚げる。生け花のような盛りつけも素敵だ。

おすすめメニュー2

ゆで豚肉のベトナムスタイル 2,300円(税込)

豚バラのかたまり肉をジャスミン茶と塩を入れたお湯で茹で、スライスして葉菜とハーブ計7種類を添えた一品。ジャスミン茶は臭み取り、塩は肉を締める目的で使用。肉は温かい状態で提供する。サニーレタスを手に取り、肉と一緒に大葉、キュウリ、万能ネギ、パクチー、ミント、バジルを好みで重ねてひとまとめにし、香味ソースで食べる。香味ソースのベースは先に紹介した自家製ヌクチャムで、そこにごま油、チリソース、炒った白ごまを加え、さらに長ネギのみじん切り、万能ネギの小口切り、ショウガのみじん切り、パクチーの茎のみじん切りを入れ、フライドオニオンをトッピング。ベトナムの古都フエの伝統料理のアレンジで、香りの強い野菜ばかりを香味たっぷりのタレにつけたとは思えないさっぱり感が口に広がる。
おすすめメニュー3

まぜまぜごはん 2,000円(税込)

フエに伝わるコムアンフー(ちらし寿司のような料理)をイメージした鈴木シェフのオリジナル料理にして同店の名物。丼にご飯を盛り、シーズニングソースをかける。その上に刻んだ万能ネギ、水菜(パクチーでもよい)、ミツバをたっぷり乗せ、さらにスパイシーに味つけたひき肉を重ねた。砕いたピーナツで食感をプラス。ひき肉はガーリックオイルで炒め、火が通ったら魚醤、シーズニングソース、グリーンカレーのペースト、砂糖、こしょうで調味したもの。肉の風味が全体に行き渡るようにざっくりと混ぜ合わせてから食べる。
おすすめメニュー4

パクチーアイス〜ヨーグルトソース〜 650円(税込)

バニラアイスにペースト状にしたパクチー、ピーナツバター、コンデンスミルク、水切りヨーグルトを混ぜて固めた。注文が入ったらこれを器にとり、コンデンスミルクと水切りヨーグルトをクリーム状に混ぜたヨーグルトソースをかける。最後に香菜ウエハースを添えて出来上がり。香菜ウエハースはシェフがベトナムに行くたびに現地で購入し、割れないように大切に持ち帰っているもの。生の香菜の緑が透けて鮮やか。中には濃厚なピーナツバターが挟まれている。

  • お店紹介

    確かな腕とセンスでオリジナルメニューを生み出すオーナーシェフの鈴木珠美さん


     ベトナム料理店「kitchen」がオープンしたのは2002年3月のこと。オーナーシェフの鈴木珠美さんは、日本の料理学校を卒業後、母校で講師を務め、さらに食品会社でメニュー開発に携わり、フードコーディネーターとしても活躍していた。こうした経験のなかでベトナム料理に魅了され、2年間留学。ベトナム南部と北部、それぞれで修業をし、双方の良いところをミックスした自分なりのベトナム料理をつくりあげた。
     「タレ類はどちらかというと南部色が強いかも。でも、北部の調味料や料理からヒントを得ていたりもします」と鈴木さん。
     同店のメニューには、フエの料理をベースにしたものも比較的多いが、このフエはトナム中部の都市。つまりベトナム中からおいしいものを集めたともいえる。現地で触れた料理や食材、また、日本で食べ歩いたベトナム料理、さらにベトナム以外の国の食べものも、すべてが鈴木さんにインスピレーションを与えている。そんな柔軟な感性が、たとえば「まぜまぜごはん」のような、ここにしかない名物料理を誕生させるのだろう。
     店名の「kitchen」には、「私の家のキッチンに来て、気軽においしいベトナム料理を食べてください」というメッセージがこめられている。創意工夫を重ねたオリジナル料理で訪れる人をもてなす鈴木さんのキッチンは、今日も多くの人で賑わっている。

  • 基本情報

    店名 kitchen
    住所 東京都港区西麻布4-4-12
    ニュー西麻布ビル 2F
    電話 03-3409-5039
    営業
    時間

    18:30〜22:00(LO21:00)

    定休日

    土・日・月・祝

    席数

    17席

    主な
    客層

    9割が女性

    予算の目安 4,000円
    開業 2002年3月
    HP http://www.fc-arr.com/site/kitchen.html
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。