【手打うどん】四国屋

  1. (東京都/中野区)
 現在のようにうどん店チェーンが台頭するずっと以前から、手打うどん専門店として確かな存在感を放ち続けてきた「四国屋」。工夫を繰り返した末にたどりついたつゆの味つけはきわめてシンプル。この唯一無二のつゆと、店主が「これ」と決めた素材、食感を大事にした手打ち麺が合わさることで完成するうどんメニューは18種。そのすべてに熱烈なファンがおり、同店の“独走”を支えている。
クローズアップメニュー
肉きざみうどん 950円(税込)
たっぷりの豚肩ロース、油抜きはしないで細切りにした油揚げ1.5枚分、斜め切りにした長ネギをつゆで煮て、湯でたての手打うどんにかけた。「はかせうどん」「かき揚げうどん」と並び、同店の人気ベスト3の一角だ。「四国屋」のうどんは素材の質が問われるシンプルな味つけだけに、肩ロースも油揚げも厳選している。それぞれ長年のつき合いになる個人店から毎日仕入れるから新鮮で安心。それを1日で使い切ることで豊かな風味が維持できる。
技のポイント1
 
 

つゆの味つけはいりこ、醤油、塩、ザラメのみ

初代の時代に各種節類やだし類、調味料を使ってみたものの、最終的にはシンプルが一番おいしいと気づいたという店主がつゆの味つけに用いるのは瀬戸内海産いりこ(小さいもの)、ヒガシマル醤油の薄口、瀬戸内の塩、ザラメのみ。鍋に入れた水にいりこを浸して十分にだしをとり、そこに醤油、塩、ザラメを入れて短時間沸かす。ただし沸騰はさせない。火を入れる時間を最小限にとどめるのが風味を活かすポイントだ。
技のポイント2

 

つゆはこまめにつくり、一度仕上げたら注文が入るまで火にかけない

つゆは寸胴鍋に保管しているが、これを火にかけることはない。注文が入ってから1杯分を片手鍋にとり、沸かして具を煮て、茹で上がったうどんにかけるのが基本。30杯分を1日3回つくることで新鮮さをキープしている。
技のポイント3

 

かまなくても食べられるほどやわらかめの手打うどんがつゆに合う

うどんは店主の手打ち。最高級クラスの小麦粉を塩水だけでこね、寝かせて延ばし、庖丁で切った状態で冷蔵庫に保管する。毎日朝夕2回打つことでいつでも打ち立ての味を提供できる。かまなくても飲めるくらいやわらかい、水分の多い麺で、うどん1杯に220〜230g入っている。
おすすめメニュー1

はかせうどん 950円(税込)

タレントの水道橋博士さんが来店のたびに注文することから命名された「四国屋」の名物。片手鍋にとったつゆで豚肩ロースを煮て、湯でたてのうどんにかけ、甘辛く煮た油揚げ、揚げ玉、刻みネギをトッピング。揚げ玉にはサクサク系や澱粉の強いものなど3種類の天ぷら粉を合わせて用い、注文ごとに揚げており、シャリシャリした食感が魅力だ。
おすすめメニュー2

カレーうどん 950円(税込)
豚肩ロースと斜め切りのネギをつゆで煮て、カレー粉をプラスし、水とき片栗粉でとろみをつけたものを茹で上げたうどんにかければ出来上がり。カレーうどんはじめとろみをつけるタイプのメニューの場合は、うどんを通常よりさらにやわらかく茹でる。これによりつゆの味が麺に染み込んでますますおいしく食べられる。
おすすめメニュー3

五目いなりずし 250円(税込)

香川県の郷土料理でもある三角形の五目いなりをアレンジ。濃いめの酢飯に甘辛く煮たゴボウ、レンコン、シイタケ、だしで炊いたニンジン、いりごまを合わせ、きつねうどんなどに乗せるものより甘味を強く仕上げた皮で包んだ。お店で食べてもテイクアウトしてもOK。しっかりした味つけのうえ、ボリュームたっぷりで食べごたえ満点。おかずなしで一食済ませられると、近所の単身高齢者などに大人気。1日40〜50個が売れている。
  • お店紹介

    「うどんならここ、と言ってくれる常連さんたちと支え合っています」と語る店主の山橋美恵さん


     「四国屋」は香川県坂出市出身の初代が大阪の会社員だった1962年に、新業態の飲食店として東京に進出しオープンしたうどん専門チェーンのはしり。チェーンの中で最も長く続いたお店をのれん分けのかたちで引き継ぎ、現在のお店に発展させたのが初代の娘で現店主の山橋美恵さんだ。同じ新中野には兄の篤美さんが営む本家もあるが、いまはそれぞれが自分のやり方でお店づくりをしているという。
     美恵さんがこの道に入ったのは20歳の頃。アルバイト生活をしていたときに、「昼間の売上は全部あげるからやってみろ」と初代に勧められたのがきっかけだ。当時の「四国屋」は深夜営業で昼間は閉めていたため、その時間を娘に託したのである。この誘いに乗った美恵さん、当初は麺打ちなど主要な作業は父に任せていたが、しだいに見よう見まねでうどん作りにチャレンジするようになった。
     「四国では一般の主婦がうどんを打つ。お前にもできる! と励まされてその気になり、かれこれ30年になります」と笑う。
     同店に足を運ぶのは、父の時代からのなじみ客も含めて常連ばかり。ランチタイムに1km以上歩いてやってくる人、遠方から電車に乗って来店する人などさまざまで、それぞれが来店のたびにお気に入りのメニューを注文する。麺の固さなどの好みも、「常連さんですから、全部わかっています」と言う。
     長くお店を維持するコツは、「お客様や業者さんとの信頼関係を大事に大事にすること」。讃岐うどんの店とか、おふくろの味とかいうくくりにははまらない、美恵さん自身のお店「四国屋」。ほかと比べたり、時代に流されたりせず、ただひたすらに独自の道を歩む、個性豊かなうどん店だ。
  • 基本情報

    店名 四国屋
    住所 東京都中野区中央4-1-23
    電話 03-3382-4598
    営業時間

    11:30~21:00 

    定休日

    日曜・祝日

    席数

    11席

    主な客層

    ほぼすべて常連

    1日の客数

    最大100人 

    予算の目安 950円
    開業 2012年5月
    (移転開業)
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