【和食】創作和料理 近藤

  1. (神奈川県/鎌倉市)

 鎌倉の名所、鶴岡八幡宮・三の鳥居のすぐ目の前。若宮大路から入り、風情ある黒塀の奥にある入口の暖簾をくぐると、和風でありながらモダンな店内。そして、カウンター席の奥にある厨房に目をやると不思議な光景が広がる。そこには和食店の厨房に付きものの焼き場がなく、スチームコンベクション(以下、スチコン)、真空包装機、急速冷却機などの最新調理機器が並ぶ。店主の近藤元人氏は京都出身。京料理修行時に培った技術で作る料理を、どうしたらさらにおいしくお客様に提供できるかを考え続けてきた答えがここに。今回は、新調理システムを使いこなして作り上げた味噌漬けローストビーフをクローズアップ!
クローズアップメニュー

味噌漬けのローストビーフ(コース料理の一品)
※店内販売・通信販売もしています。200g ¥3,000

肉を味噌漬けにして加熱すると、どうしても味噌が焦げてしまうが、肉を真空パックしてからスチコンで加熱することで、味噌も焦げず、ローストビーフがしっとりおいしくできる。さしの入った国産牛のもも肉を、およそ220gにカット。下味として、塩、胡椒、ガーリックパウダーを擦り込み、フライパンで表面に焼き目をつけたら、急速冷却機(ブラストチラー)で即急冷。冷めたらフィルム(真空)袋に調合した味噌とともに入れて真空し、冷蔵庫で一晩寝かる。翌日、スチコンで低温加熱(65℃で芯温58℃になるまで加熱)。その後、急冷してそのまま冷凍保管。お客さまに提供する際には、3℃のバブリングチラー(解凍機)で解凍後、真空の袋からローストビーフを取り出し、味噌を取り除いてスライス。特製の牛蒡のソースを添える。味噌漬けなので肉全体に塩味を感じるため、そのまま食べてもおいしいが、酸味と土のかおりのする牛蒡のソースが絶妙なアクセントになる。
技のポイント1
 
 

味噌漬けの味噌は、京都の白味噌と信州味噌を合わせる

京都の米と米麹のみで作られた白味噌と信州味噌を合わせる。白味噌は、甘味が強く塩分濃度が3%以下と低いため、信州味噌を加えて塩味を補う。昔から米と米麹のみで短時間発酵した白味噌は、保存用にはむいていないが米の風味が活きていて味噌漬けに適している。下味をつけて表面を焼き急冷した肉を真空袋に入れて調合した味噌をまぶす。
技のポイント2

 

真空後、一晩冷蔵庫で寝かせる

味噌をまぶして真空パックした肉を一晩寝かせる。真空による圧で全体に味がしみ渡ると同時に、味噌の効果で肉がやわらかくなる。
技のポイント3

 

スチコンによる低温加熱が一番のポイント

加熱はスチコンで低温加熱。65℃で肉の芯温が58℃になるまで加熱することで、味噌が焦げることなく、しっとりとしたローストビーフができる。真空調理は、食材の歩留まりがよい。また、真空するまで衛生的に調理することで、終始、肉が汚染されないローストビーフができる。そのため、店で提供するだけでなく販売にも展開できる。
技のポイント4

 

 

牛肉に合う牛蒡で作るソース

牛蒡のソースは、玉ねぎのみじん切りをアメ色になるまで炒めた後、牛蒡、にんにくのみじん切りと一緒によく炒める。赤ワイン、日本酒、濃口醤油、味醂を入れて煮込む。素材が柔らかくなり、半分くらいに煮詰まったら、冷ました後、牛蒡の食感が多少残る程度にミキサーにかける。バットに広げ、塩、胡椒、バルサミコ酢を入れ、スチコンで煮詰める。最後にバターを入れて、牛蒡のソースが完成。
おすすめメニュー1

蕪のふろふき くるみみそ添え(コース料理の一品)

冬場、蕪のおいしい時期には欠かせない一品。時期により京都や鎌倉の蕪を使い分ける。蕪の仕込みも真空調理。真空袋に蕪をだしとともに入れてスチコンで加熱する。昆布とマグロ節の品のよいだしがしみている蕪に、くるみの香りをまとったみそが合う。くるみみそもスチコンで調理している。
おすすめメニュー2

海老芋の蟹あんかけ(コース料理の一品)

11月から2月くらいまでがおいしい海老芋を使った一品。海老芋はアクがあるので下茹する。その後、真空袋にだしとともに入れて、スチコンで加熱し海老芋の仕込みが完成。この調理方法は、煮崩れしやすい海老芋に最適。仕込みは一緒でも、この海老芋を煮物、焼き物、揚げ物へと料理は変化させて使える。
今回は海老芋にあられの粉をつけて揚げ、シンプルなだしの蟹あんをかけた。体も心も温めてくれるやさしい味。
  • お店紹介

    店主の近藤元人氏

     京都出身の店主・近藤元人氏は、京都の京料理の店で修行した後、鎌倉の会員制ホテルの料理長を約10年間務めた後、和料理の名店「日文」の総料理長に就任。2001年に独立して「創作和料理 近藤」を開店した。
    独立以前から、スチコン、真空包装機、急速冷却機などの機器を使った調理に興味を持ち、独立時にこれらの設備を導入した。
    当時、スチコンなどは西洋料理の分野で使用されており、和食で使用されることはほとんどなかった。そのため、自らを「新しもん好き」と言う近藤氏が、和食に応用して1つひとつレシピを完成させていった。
    調理を簡単にできるからスチコンなどを使用しているのではない。今までアナログで作ってきた料理を、食材の水分や香りを逃さないとされる新調理システムの特長を活かすことで、さらにおいしくできるはず。調理の課程で食材がどう変化するかという理論を熟知する近藤氏は、新しい調理機器を使いこなし、新たなおいしさを追求してきた。魚の塩焼きは炭火が一番いい。焼き場のない近藤では、炭火焼きに代わる料理を新たに創り出して客を満足させる。
    新調理システムを使った和食界のパイオニアとして道を切り拓いてきた近藤氏。今後も調理機器の進化とともに、どのような和料理を創作していくのか目が離せない。
  • 基本情報

    店名 創作和料理 近藤
    住所 神奈川県鎌倉市雪ノ下1−8−36
    電話 0467-25-0301
    営業時間
    昼の部(二部制)
    11:30~13:00 
    13:30〜15:00(L.O.14;30)
    夜の部 
    17:30~21:00(L.O.20:30)
    定休日

    毎週水曜日・第2木曜日

    席数

    テーブル20席、カウンター6席

    主な客層

    9割が女性

    予算の目安
    昼の部 4,000円位〜
    夜の部 5,000円位〜
    1日の客数 多い時で、昼は2回転。
    夜は1回転。
    開業 2001年
    HP http://www.kamakura-kondo.com
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。