【ラーメン】鮮魚らーめん 五ノ神水産

(東京都/千代田区)

 約10年前に東京・青梅で開業し、エビやタイを使った、素材の味全開のラーメンで一躍人気店となった「いつ樹」。その後、「五ノ神製作所」グループとして都心に進出し、さらに2013年12月、あらためて鮮魚系を前面に打ち出しオープンしたのがここ、「鮮魚らーめん 五ノ神水産」です。節類や煮干しなど乾物を用いた魚介系ラーメンとはまったく違い、スープの味は魚そのもの。記憶に残る味、好きな人がハマる味を目指しています。

クローズアップメニュー
らーめん銀だら搾り 780円(税込)
市場に出る前に捨てられてしまう魚のアラや中骨を「もったいない、どうにか使えないか」と考えていた「五ノ神制作所」のオーナーが考案した独創的なラーメン。海外から冷凍の状態で仕入れる銀ダラの中骨を大量に使ってダシを取る。血合いや身が付着したまま丸ごと使いあえて臭みを残すこと、中骨の一部を焼いて用いることでこうばしさを出すことなどがミソで、特製のかえし(塩ダレ)と合わせたトロミの強いスープを一口食べた瞬間、焼き魚のような味と香りが口と鼻に広がる。どんぶり1杯に入っている銀ダラの量は切り身換算で7〜8切れ分というから贅沢だ。麺は自家製の中細ストレート。トッピングは鶏ももチャーシュー、三角メンマ、笹切りにした白ネギ、アオサノリ。
技のポイント1
銀だら中骨90kg、少しの鶏胴ガラからうま味と水分を搾り出す
スープは週に3、4回のペースで仕込むが、1回の仕込みに銀ダラ中骨90kg、鶏の胴ガラ9kgを使う。特大の寸胴鍋にこれらを入れ、水を鍋の半分くらいの高さまで入れたらひたすら煮続ける。5〜6時間煮たところで必ず店長の舌で味を確認し、そのつど最もおいしい状態で火から下ろす。上澄み油を丁寧にすくってスープとは別の容器に保存。スープは漉して骨の髄まで搾り取る。注文が入ったらこれを小鍋にとって沸騰させ、どんぶりに入れた塩ダレと上澄み油の上に注ぎ入れる。
技のポイント2
麺はスープに合わせた自家製
揚麺は会社が持つ製麺所でそれぞれのスープに合わせてつくっており、「らーめん銀だら搾り」の麺は低加水の中細ストレート。固めで十分な歯ごたえがあり、スープに負けない存在感がある。

技のポイント3

分厚い鶏ももチャーシューと三角メンマで個性を強調
チャーシューは鶏もも肉のオーブン焼き。醤油やみりんでつくった照り焼き風の甘辛いタレに一晩浸けてからオーブンでじっくり焼き、しっとりふっくら仕上げているので、かなり厚切りだがとてもやわらかい。五ノ神制作所名物の三角メンマもまた分厚く食べごたえがある。こうしたトッピングもオリジナリティを感じさせる大事な要素だ。
オススメメニュー1
端麗貝塩らーめん 780円(税込)
魚の味と香りをダイレクトに感じる「らーめん銀だら搾り」に対し、比較的あっさりしていて食べやすいメニューとしてラインナップしている。ダシはアサリだけで取っており、少量の水に対し殻付きの大量のアサリを使うので、あっさりした中にアサリの味が際立っている。かえしは貝塩らーめん専用の塩ダレ。麺は多加水でつるつるしておりのどごしが良い。トッピングは、豚肩ロースに塩コショウなどで下味をつけて一晩置き低温のオーブンで焼いた豚チャーシュー、三角メンマ、輪切りにした白ネギ、板ノリ。ほかにアサリの身をニンニクで軽く味つけし片栗粉でまとめたアサリ餡が乗っており、少し食べ進んだところでこれを口に含むとさらにアサリ感が増す。
オススメメニュー2
四季限定 らーめん牡蠣ミルク 1,000円(税込)
旬の素材を使ってつくる限定メニューの1つ。11月初旬からの約1カ月間に、塩ベース、醤油ベースなどスープを変えて提供していた牡蠣ラーメンのシリーズの仕上げに提供したのがこの「らーめん牡蠣ミルク」で、スープの中に牡蠣を溶け込ませ、トッピングにも牡蠣のミルクペーストを使ったクリーミーな一品。スープの緑がかった色は牡蠣の胆に由来する。牡蠣ペーストのほかに鶏ももチャーシュー、豚チャーシュー、三角メンマ、白菜、赤タマネギ、ホウレンソウを乗せた。麺は洋風のスープに合う平打ちでスープをよく持ち上げる。
オススメメニュー3
カップ茶わん蒸し 100円(税込)
どんぶりに残ったスープをマグカップに移し、卵を入れてレンジでチン。これで即席茶わん蒸しの出来上がり。「素材を贅沢に使ったスープを捨てるのは忍びない」という発想から生まれたメニューで、これを希望するお客さんには予めらーめん提供時にスープをある程度残してもらうよう話しておく。だし巻き卵のような味わいで、特に女性からの人気が高い。夜限定で提供している。
  • お店紹介
    「ラーメンは自由で奥が深い。あらゆる素材を活用できる」と工夫を重ねる店長の竹内俊さん
     「いつ樹」の二枚看板の1つ、「鯛塩らーめん」に端を発する鮮魚らーめんをもっと追求するためにも、生の魚や貝に特化したラーメン店を出したい、という会社の思いがかたちになった「鮮魚らーめん 五ノ神水産」。開店時から店長を務める竹内俊さんは、「魚介系の素材でラーメンに使えないものはない」と言い、すでにホタテ、サンマ、サバ、クエ、フグ、マグロ、イワシ、カワハギ、イカ、ウナギ、アナゴ、カニなどのラーメンを開発済みだ。
     「1つの素材が50kgくらいまとまって手に入るたびに、それでできる数、たとえば80杯、100杯、200杯など数を限定して提供します。これまでに特に人気があったのはクエで、数十人の行列ができて1時間ほどで売り切れました」
     竹内さんは和食の料理人として約14年、さらに寿司屋などで約3年働いてからラーメン業界に転職した。その経験から、「和食はさまざまなルールがあり冒険しにくい。でもラーメンは何でもできます。どんぶり1杯をどう成立させるかは工夫しだい。奥が深く興味は尽きません」と語る。もちろん和食の腕も活かしており、つけ麺に食用菊を添えるなど一味違う盛りつけも魅力だ。
     毎年12月18日の開店記念日に合わせて「らーめん銀だら搾り」の別バージョンも提供している。1周年の水なし(水を加えず中骨の水分だけで取ったスープ)、2周年の老舗味噌店とのコラボレーションに続き、3周年は芳醇鮮魚白湯銀たら×オマールを提供。「これからもお客さまに喜んでいただけるように、他店にないラーメンをつくり続けたい」と言う竹内さん率いる「五ノ神水産」。この冬はノドグロを使った中華そばや、アマダイ、オマールエビのラーメンを予定している。
  • 基本情報
     
    店名 鮮魚らーめん 五ノ神水産
    住所 東京都千代田区神田多町2-9-6 
    田中ビル別館
    電話 03-6206-8814
    営業時間 11:00〜15:00 
    17:00〜21:00
    定休日

    日曜

    席数

    16席

    主な客層

    平日 近隣で働く人、学生 
    休日 家族連れ、カップル

    1日の客数 昼80人 夜40人
    予算の目安 900〜1000円
    開業 2013年12月18日
    ウェブサイト https://ja-jp.facebook.com/gonokamiseisakusyo/
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。