【ラーメン】本枯中華そば 魚雷

(東京都/文京区)

 サイフォンでラーメンスープを仕上げたらどんな味になるのか? 多くの人が思い浮かべたこともなかったであろうこの問いに答えてくれるのが、東京・小石川のラーメン店、「本枯中華そば 魚雷」です。そしてその答えは、「ダシの香りがひときわ際立ちうま味が増す」。魚介系スープと動物系スープを合わせたWスープと、店内で削った最高級本枯節をサイフォンに仕掛けて抽出する様子は目にも楽しく、斬新なラーメンとして大きな注目を集めています。

クローズアップメニュー
本枯中華そば 760円(税込)
スープ、麺ともに香り豊かな看板メニュー。ベースのスープは、カツオの厚削り、サバの厚削り、イリコ、アジの煮干し、カツオの特殊な部位(企業秘密)の薫製、大量のコンブを厳重な温度管理のもとで一晩水出しし、さらに90℃で2時間ゆっくり煮てつくる魚介系スープと、青森の地鶏である赤鶏の鶏ガラ、モミジ、豚足、香味野菜を弱火で8時間ほど煮出してつくる動物系スープ。双方とも逆浸透(RO)水を使うことでダシのうま味がクリアに引き出されている。これらを合わせたWスープを、サイフォンを用いて追い鰹し、濃い口醤油をメインに使ったかえしと合わせれば醤油味スープの出来上がり。麺は北海道産小麦、「春よ恋」を石臼で挽いた全粒粉を用いた特注の低加水麺。「魚と小麦の息吹を感じてほしい」との思いから具をスープに入れずに、素ラーメンと別皿に乗せた具の組み合わせで提供される。具は刻みネギのほか、秘伝の醤油ダレに甘味をつけたタレで真空調理した真空豚チャーシュー、同じく秘伝の醤油ダレに一晩つけた後オーブンで焼いた鶏チャーシュー、メンマ、姫たけ、きくらげ、うずらの玉子など9種から好きなものを3種選べるプリフィクス形式だ。
技のポイント1
最上級本枯節で追い鰹
追い鰹に用いるのは、鹿児島県枕崎産の最高峰、2年熟成の本枯節と、高級鰹節である本節を粉砕した節粉。本枯節は塊の状態で仕入れ、カウンターに置かれた鰹節削り機でこまめに削る。
技のポイント2
1杯ごとにサイフォンを用いて本枯節のエキスを抽出
魚介系スープと動物系スープを2:1の割合で合わせて保温しておいたWスープをサイフォンのフラスコに、上記本枯節と節粉をロートに入れ抽出。ラーメン1杯ごとにこの作業を繰り返す。フラスコに密閉状態なので、どんぶりに移すまで香りとうま味が閉じ込められる。

技のポイント3

かえしは3種の濃い口醤油と藻塩でコクを出す
かえしの材料は、たまり醤油を含めた3種の濃い口醤油と藻塩ほか。これらを合わせて火にかけるが、このとき最初は低めの温度、しばらくしたら高めの温度をキープし、沸騰させずに一定時間置く。温度と時間を厳密に管理することがおいしさのポイント。

技のポイント4

かえしと鶏油を入れたどんぶりのふちからスープを注ぐ
醤油スープは、かえしと鶏油を入れたどんぶりのふちから、サイフォンのフラスコに密閉しておいたスープを注いでつくる。このときフラスコをどんぶりのふち近くで傾けると、どんぶりの中でスープが回転しほどよく混ざる。鶏油は自家製で、赤鶏の皮やガラなど鶏油用に厳選した素材で別取りしている。

技のポイント5

煮干しとカツオのエスプーマでおいしさアップ
スープに麺を入れて整えたら、少量のホウレンソウとエスプーマを乗せ、柚子一味を一振りして完成。エスプーマは煮干しとカツオとコンブを用いて少しクセを効かせている。
オススメメニュー1
つけ麺(並) 860円(税込)
鶏ガラを強火で撹拌しながら14時間煮詰めた濃厚なスープを、甘味を加えたかえし、自家製鶏湯を入れたどんぶりに注ぎ、鶏チャーシュー、豚チャーシュー、うずらの玉子、ホウレンソウ、刻みネギ、なるとを加えたつけ汁と、やわらかめでもっちりした食感とつるっとしたのど越しが持ち味の特注麺の組み合わせ。見た目の割に味は比較的まろやか。麺は「並」で200g。ほかに「中(300g)」「大(400g)」もある。
オススメメニュー2
王様中華そば 850円(税込)
かつて長野市内にあった老舗ラーメン店の人気メニューを、敬意をこめて再現したという一品。1杯に1本使う長ネギと、黒コショウがインパクト大。長ネギはまな板を使わず空中でスライスし、茹で麺器の上で水蒸気の熱にさらして甘味を引き出す。どんぶりにかえしと自家製鶏油を入れ、本枯中華そばとは反対に魚介系1:動物系2の割合で合わせたWスープを注ぐ。麺は、干すことで独特のうま味を引き出す稲庭うどんの製法でつくられた中華そば、「稲庭中華そば」(乾麺)を使用。上記長ネギを乗せてコショウを振りかけ、真空低温調理のもも肉チャーシュー2枚となるとをトッピング。
  • お店紹介
    会社の運営にかかわりながら現場でも活躍する有限会社BOND OF HEARTS東京統括部長の丸山孝幸さん
     「本枯中華そば 魚雷」の経営母体は1993年創業の有限会社BOND OF HEARTS。本社は長野市にあり、鶏白湯スープをいち早く打ち出した旗艦店「頑固麺飯魂 気むずかし家」や、食堂タイプの「笑楽亭」、戦国武将の名前を冠したメニューがユニークな「麺将 武士 もののふ」など6店舗を長野県内で展開。東京進出は数年前で、ここは2軒目。いまでは都内にも6店舗、ほかに石川県金沢市にも1店舗構えるなど店舗数を増やしながら、提供するラーメンの種類や店舗形態も広がっている。
     「魚雷という店名には、いままでに食べたことのないような衝撃的な鰹ダシを味わっていただきたい、という店側の思いがこもっています」と話すのは、東京統括部長の丸山孝幸さんだ。丸山さんは15歳のときに創業間もない同社でアルバイトを始め、その後、社員となって会社の成長とともに歩んできた。すでにラーメン一筋23年。グループ13店舗すべてで仕事をした経験を持つ。東京工場研究開発部長でもあり、季節のラーメンなど新メニューの開発なども行っている。
     「会社としては鶏白湯系をさらに充実させるべく計画中」というが、「魚雷」に関してはいまのままの形態を維持していく方針。多種多様なラーメン店がひしめく東京にあって、ひときわ異彩を放つ同店。これからもますますその存在感は高まっていきそうだ。
  • 基本情報


    店名 本枯中華そば 魚雷
    住所 文京区小石川1-8-6-1F
    電話 03-5842-9833
    営業時間 11:00〜15:00 
    18:00〜23:00 
    定休日

    水曜

    席数

    13席

    開業 2010年1月29日
    ウェブサイト http://bond-of-hearts.jp/shop_gyorai.html
  • 掲載内容は取材時点での情報であり、記事内容、連絡先、営業時間などが変更になる場合があります。